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「東京タワー 〜オカンとボクと、時々、オトン〜」鑑賞記録@Amazon Prime Video(2021/10/26)

監督:松岡錠司
原作:リリー・フランキー
脚本:松尾スズキ
撮影:笠松則通
録音:柿澤潔
出演:オダギリジョー、樹木希林、内田也哉子、松たか子、小林薫
配給:松竹(2007年/日本)

ベストセラーとなったリリー・フランキーの自伝小説を、オキダリジョーと樹木希林の共演で映画化。幼いボクを連れてオトンの家を出たオカンは、女手ひとつでボクを育て上げた。やがて美大に通うため上京したボクは、オカンへの罪悪感を感じながらも自堕落な日々を送ってしまう。数年後ようやくイラストやコラムの仕事が軌道に乗り始めた頃、オカンのガンが発覚し……。監督を「さよなら、クロ」の松岡錠司、脚本を松尾スズキが手掛ける。

公開当時、私は小学生だったが、世間はこの作品に大いに盛り上がっていたことをかすかに覚えている。というのに、ついこの作品を見るまでどんなストーリーか全く把握していなかった。蓋を開けてみると、ここ半年で鑑賞した作品の中でベストといえる感動作で、久々に目頭を熱くした。

「ボク」ことオダギリジョーについて…

何より、この作品における、オダギリジョーのすでに「完成された」佇まいには目を奪われた。現在の彼と比較しても、イエス・キリスト風の長髪とヒゲはトレードマークとして衰えていないことがうかがわれる。そんな彼が演じる大学時代の自堕落な「ボク」はなぜか憎めない。大学を卒業できなかったら退学して働いても良い、と、既に「オカン」思いな一面を覗かせるところが、世間のお母様方のハートをギュッと鷲掴みにしたことだろう。

「オカン」こと樹木希林について…

公開当時は「年賀状のCMに出ているおばちゃん」以上の印象を持っていなかった。今はもちろん違う。「万引き家族や「海街diary など是枝裕和監督ではお馴染みである。前出の作品では「おばあちゃん」色が強かったのに対し、今作では「オカン」色がくっきりと出ているから、さすがである。それに、福岡方言が達者で「実家の近所にいそう」と納得した。晩年の闘病生活は、抗がん剤治療に喘ぎ苦しみ、その姿は真に迫るものがあって、胸が苦しくなった。息子思いの「オカン」は「オトン」と別居し、「ボク」の学費のために一人せっせと働く。息子を育てることが人生の目的になっていたといっても過言ではない「ボク」の卒業証書のために自分の貯金がなくなっていったと冗談混じりに話す「オカン」は誇らしげであったし「ボク」に彼女ができたときには嬉しくてたまらなさそうであった

↓例のCMについて


ミズエこと松たか子について…

ミズエは「ボク」が東京に出てから付き合っていた彼女である。あれ? この2人はどこかで見覚えがある…と思ったら「大豆田とわ子と三人の元夫」である。主人公・大豆田とわ子を松たか子が演じ、とわ子の恋人(?)役の小鳥遊(たかなし)をオダギリジョーが演じた。妙に2人が役にはまって見えたのは、偶然ではなかったのである。当時の松たか子は、すでに「完成された」オダギリジョーに比べると、どこか瑞々しさが顔を覗かせている。「大豆田とわ子〜」との共通点は、2人が結ばれなかったことである

↓最新の松たか子評


「オトン」こと小林薫について…

1人だけ歳を取っていない。「ボク」が子どもの頃から20年以上経っているのに。「オカン」は内田也哉子と樹木希林の2人体制だったのに。「オカン」の晩年、上京した折には「リアップ」で髪が生えたと喜んでいる。それにしても、1人だけ若い。「オカン」と同じ世代にはどうしても見えない。けれども、小林薫だからこそ、そこそこの違和感ですんだのだろうと思う。豪傑な九州男児がお似合いである。これは九州男児ではないが、NHK連続テレビ小説「カーネーションで演じた泉州方言バリバリの親父もなかなかの適役であったことが思い出される。

「オカン」よ永遠なれ


ここ2年弱、外出自粛を余儀なくされる日々が続いてきた。それゆえに実家の両親と会えない日々を送っている人は少なくないだろう。この作品と出会ったあなたはもれなく里心がつく。今年の年末年始は故郷で過ごすのも良いのではないだろうか。そして、親孝行は親が生きていてもいなくてもした方がよい。「3人」で東京タワーに上ったオカンはきっと喜んだことだろう。今度、東京に行ったら、初めて東京タワーに上ってみたくなった。

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