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「ラーゲリより愛を込めて」鑑賞記録@TOHOシネマズ梅田(2023/1/17)

監督:瀬々敬久
原作:辺見じゅん
脚本:林民夫
撮影:鍋島淳啓
録音:高田伸也
出演:二宮和也、北川景子
配給:東宝(2022年/日本)

人間の歴史を振り返れば、人間は戦争を止めることができないのではないか、と思います。今や、日本は戦争のない社会となったが、それも、ここ70年ほどのことです。

今、ロシアがウクライナを侵攻しています。ロシアの主張を受け入れることはできません。その一方で、一度始まった戦争を終えるためには、降伏するか、相手国を制圧するかの選択が迫られます。戦争を仕掛けた側も仕掛けられた側も、引っ込みがつかなくなります。これは、悪循環そのものです。

今作が描くのは、まもなく終戦を迎える1945年8月からの出来事です。8月6日に広島に原爆が投下され、いよいよ日本の敗戦が現実味を帯びる中、ソ連が日ソ中立条約を一方的に破棄し、対日参戦してきます。そして、日本兵をシベリアに抑留し、過酷な環境下で強制的に労働させられることとなります。

シベリア抑留という出来事自体は、学校でも習いましたので、単語は耳馴染みがあります。ただ、これまで実態はよく理解していませんでした(想像がついていませんでした)。今作では、当時の状況が描かれることにより、いかに過酷であったかが伝わってきます。

同時に、戦争が終わりを迎えたとしても、その「負債」を弱い立場の国民が抱えなければならないという厳しい現実が待ち受けていることを私たち現代人に教えてくれます。たとえ為政者が勝手に始めた戦争であったとしても、戦争相手国にとってみれば、誰しも憎き敵国民なのです。

過酷すぎる状況下に置かれても、希望を捨てず、ダモイ(帰国)への道を諦めなかったのが、主人公・山本幡男(二宮和也)です。自身はロシア文学を学び、抑留下では、ソ連軍とのコミュニケーションをもこなしました。すぐに終わるであろう抑留生活を必死に乗り越え、妻・モジミ(北川景子)ら家族との再会を果たそうとします。ただ、過去の歴史が示すように、シベリア抑留は、戦後しばらく続きました。

希望を捨てず、幸福な人生を希求する気持ちは、平和があってこそ担保されるものではないかと思います。山本幡男の前向きさは、非凡なものでした。今後起こるかもしれない有事の際に、どれほどの人間が、平静を保ち、前向きに生きていくことができるでしょうか。

たとえ、戦争が始まったとしても、私たちは生きていかなければなりません。いつ終わるかわからない戦争に時間と労力を捧げることはどれほど虚しいでしょうか。先に述べたように、為政者が始めた戦争であっても、犠牲を強いられるのは、もれなく国民です。過去の悲惨な事実に基づき、未来を生きる私たちへの教訓を伝えている今作をぜひご覧ください。

※二宮和也の主演作としては「浅田家!」もおすすめです。

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