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どうして「バイアス」が生まれるのか。

確証バイアス、正常性バイアス、後知恵バイアス、ハロー効果、アンカリング... 
様々なバイアスが一般的に知られるようになってきました。

バイアスを取り扱う心理学や行動経済学といった学問が、マーケティングや事業開発におけるヒントとして注目を浴びているとも聞きます。

しかし、バイアスが語られる文脈において「どうしてバイアスが生じるのか」という前提がしっかり押さえられていない気がしましたので、改めて整理したいと思います。

そもそもバイアスとは何か?

バイアスの意味としては、おおよそ以下の通りです。

バイアス:人が物事を判断する場合において、種々の要因により「合理的でない」認知をしてしまうこと、また、その傾向。

例えば「バンドワゴン効果」という有名なバイアスがあります。
多くの人に支持されているものが、さらに支持を得てしまう傾向のことで、食べログなどの☆制度はこれによる効果を受けていると思います。
(本当は「☆の数」と「自分が美味しいと感じるか」は別問題ですよね。)

このように人間は「非合理な判断」を行ってしまうのです。

つまり「どうしてバイアスが生じるのか」とは「どうして人間は非合理な判断を行ってしまうのか」という問いです。(当たり前...)

人間は完璧ではない。

古典的な経済学では「完全無欠な人間が、完全な情報を得て、正しい判断をする(ホモエコノミクス)」と想定されています。

しかし、実際にはそんな完璧な人間はいませんよね。

「認知できる範囲」「情報の処理能力」「判断をするためのコスト」など、我々には限界があって、その制約の中で意思決定・価値判断をしています。

とはいえ、自分にとって「出来るだけ良い選択をしたい」。

そんな「限られた条件」の中で「出来るだけ良い選択」をするために、我々が無意識に用いているルールに「ヒューリスティックス」と呼ばれているものがあります。

ヒューリスティックス

wikipediaで調べてみると、下記の通り説明されています。

ヒューリスティックス:必ず正しい答えを導けるわけではないが、ある程度のレベルで正解に近い解を得ることができる方法

簡単にいえば「判断のショートカット」です。

もちろんこれは全くのデタラメという訳ではありません。おそらく人類が進化の中で、何かしら脅威や変化に出くわした時に瞬時に判断するために養われてきた能力だと言われています。

限られた時間の中で、理性的というよりは直感的に、そこそこ良い選択を素早くする。それがヒューリスティックスと呼ばれるものです。

ここでより理解を深めるために、3つの有名なヒューリスティックスを紹介したいと思います。

3つのヒューリスティックス

【①代表性ヒューリスティックス】

倫理や確率に従わず、どのぐらい典型的かという基準に従うこと。

例えば、ある「商社マン」について考えてみましょう。彼は32歳で、独身で、色黒で、スポーツカーに乗り、常にグループの真ん中にいるような人間だとします。そんな彼の説明として、次の3つを「もっともらしい」順番に並び替えてみましょう。

A:彼は「合コン好き」である
B:彼は「趣味が盆栽」である
C:彼は「合コンが好き」で、「趣味が盆栽」である



あなたの答えとして、「A>C>B」になっていませんか。

この図でもわかるように「CよりもBである確率のが高い」はず。にも関わらず、彼が合コン好きであると思い込んでしまいました。(詳しく知りたい人は「リンダ問題」でググってみてください。)

人はベタが好きなのですね。

【②想起しやすさヒューリスティックス】

自分の頭の中に思い浮かびやすい事象に過度に引きづられてしまうこと。

自分の家族にヘビースモーカーのおじいちゃんがいたとします。

そのおじいちゃんが100歳まで元気なので、タバコを吸っても長生きできる!と考えてしまうようなことです。

N =1なのに拡大解釈してしまってること多い気がしますね。

【③係留ヒューリスティックス】

特定の情報や数値に過度に影響されてしまうこと。

例えば、吉野家の特盛牛丼が食べたくても「高いなぁ」と感じているサラリーマンがいて、その人が彼女の誕生日祝いにウルフギャングのステーキをご馳走したとします。

するとどうでしょう。特盛牛丼が安く感じるわけですねぇ。(辛い。笑)

松竹梅の値段設定とかもこれに当てはまります。
ハズレ値のような選択肢が設定されているとか、選択肢が多いときは要注意かもしれません。

さて、ここまで3つのヒューリスティックを簡単な事例を交えて説明してきましたが、これは特にヒドい誤りとなっています。笑

「人は1日に9,000回以上の選択をする」と言われていますから、実際にヒューリスティックを使った結果は、多くの場合で何の問題も起きていないと考えられます。結構「使える能力」なわけです。

バイアスが生まれる理由

もうほぼ答えは出ていますが、改めて整理しましょう。

「ヒューリスティックスを使って出した現実的な解(そこそこ良い選択)」と「理想的な解」との乖離には法則性があることがわかっています。その乖離は「理想的な解」から見れば、当然ながら「非合理的」になっています。

そうです、それこそがバイアスです。

「ヒューリスティックスという判断のショートカット」を使って生まれた「理想的な解とのギャップ」を「バイアス」と呼ぶ。

つまり、
「どうしてバイアスが生まれるか」という問いの答えは、「人間が不完全であるが故に、判断のショートカットを使ってしまうから」です。

では、我々はどうしたら良いの?

現実世界には「理想的な解を出すにはコストのかかりすぎる事象」が多くあるため、ヒューリスティックスに頼らざるを得ず、その結果としてバイアスが生じています。

しかし、ヒューリスティックスは「何もかも考え抜く」ことから解放してくれるという無くてはならない側面があるのも間違いないと思います。

だからこそ、ヒューリスティックスに従った現実解で満足するのか、コストをかけてでも理想解を追い求めるか、というのは「その選択の重要性」によって判断するしかないと思います。

我々に必要なのは、
1. ヒューリスティックスとバイアスには体系的にわかっている法則性があるので、それを知ることで出来る限り自覚できるようにしておく。
2. 人間は必然的に誤りを起こすものとして、エラーを許容できない領域に関しては、人の意識ではなくシステムで防ぐ。

という態度ではないでしょうか。
(2についてはまた別途noteで書いてみようと思います。)

誰一人としてヒューリスティックスに頼らざるを得ず、バイアスから逃れることも出来ません。我々に出来るのはその事実を認めた上で生きていくしかないのです。

まだまだ語りたいことはありますが、この辺りにしておきます。
最後まで読んでいただいた方、ありがとうございました!
(理解が間違っていたり、ご意見などあればお待ちしてます!)

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