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月に一度のご褒美日記

 昨日は待ちに待った、とっておきのご褒美デーだった。お天気も、そんな日にぴったりな青々とした秋晴れ。肌寒くなってきた最近にしては、少々あったかすぎるくらい。嬉しい。こんなに嬉しいことはない。

 と、ちょっぴり大袈裟な出だしになってしまったが、なんてったってご褒美だもの。昨日の私はルンルンだった。いったい世の中のどのくらいの人が、どれくらいの程度や頻度で自分へのご褒美というものを設定しているかはわからないが(ぜひ知りたいところだ)、私の場合は月に一回、一日まるごと自分をいたわるためだけに使う休日というのを設けている。💐 約一年前から始めた制度だ。

 そしてこの日の過ごし方は、大方決まっている。まず、午前中に指圧治療院に行く。ここで注意したいのが時間帯だ。私はいつも11時半~の予約を取る。
 理由は二つあって、一つ目は、治療院で体を整えてもらうことがご褒美であっても、そのために早起きをしなければならないというのはご褒美デーらしくないからだ。というのも、治療院が家から近くはなくて、一時間ほど電車に揺られる。でも、学校や会社に行く時よりはもうちょっとゆったり起きたり、準備も自分を急かさずにしたいというわけだ。ちなみに一時間ほど電車に揺られる距離というのは、面倒ではなくむしろ嬉しい。本が読めるからだ。本を読みながら街から街へと運ばれてゆくのは妙に楽しい。だからこの移動も私にとってはご褒美である。

 二つ目の理由は、治療院を後にしたその足でお昼を食べに行けるからだ。そしてこのお昼もご褒美デーのお決まりの予定。実はここがミソで、そのままお昼を食べたいのならもう少し後の時間でも良いように思うが(実際治療院は13時までやっている)、そうすると入りたいお店に入れなくなるかもしれないのである。ランチの混み時は12時台よりも案外13時台であることの方が多い(ちょもらんま調べ)。お腹を空かせて待つのは生き物にとって良くないことのひとつである。だから入りたいお店に12時半頃に着いて、確実にすっと入れるように、治療院の予約は11時半がベストなのである。この計画で予定がくるったことは今のところ一度もない。


 というわけで、そんな快適なご褒美デーを過ごしに昨日も出かけてきた。8時過ぎにゆるりと起きて、よく噛んであたたかい朝ごはんを食べ、ゆとりをもって準備してご機嫌な笑顔で家を出た。月イチなんてすぐといえばすぐだが、やはり楽しみというのは勝手に待ち遠しく感じるものだ。その日が来ればやっぱり嬉しい。昨日はそれでもまだ余裕があって、だいぶ早めに着いてしまった。しまった、っていや、良いことだ。それにしても不思議なもので、学校とか仕事とか、時間に余裕がほしい時こそ余裕ってなくて、こういうのんびりしようと決めた休日になぜか必要以上の余裕があったりする……。そんなことを考えながら、待合中も読書をして過ごした。こういう予期せず浮いた時間って、ポンと湧いて出たようでなんかお得に感じる。

 治療は今回も滞りなく終わった。指圧って全然痛くないのに、痛みも疲れもおもしろいくらいに吹き飛ぶ。ちょっとしか触っていないのに、見えない体の内側のことまで全部わかる。夜更かしとか寝不足だけでなく、時に食べているものまでバレるので、「どうしてそんなことまでわかるんですか…!」と、私はびっくりしながら笑うしかない。先生の東洋医学の話も興味深くて、この前聴いて面白かったのは、各感情は各臓器と関係し合っているということ。私はもともとこわがりみたいだが最近はそれがより増してきている、と言われ(当たっている)、こわがりや臆病な気持ちは腎臓に関係するので塩気のあるものを摂って下さいとアドバイスをもらった。甘党な私の完敗である。

 そして実は、私がこの治療院に通っている理由がもう一つ。先生がとても話しやすくて良い人だからだ。うーん、こう書くと、割とどこにでもいる普通の人って印象になっちゃうかな……。話しやすいというかなんというか、ちょっと違って、それを超えた、爽やかな人というべきか。うん、本当に、爽やかという字をそのままカタチにしたような先生。話術が格段にすごいとか、いつも飛び抜けて明るいとか、そういう親しみやすさではなくて。声とか笑顔とか、落ち着いた話し方のなかにも新緑のようなまぶしさがあって、てきぱきした動作も見ているだけで気持ちがよい。私もこんなふうになれたらなぁと思う、会うだけで背筋がしゃんとなるような、世界が少し大丈夫に思えるような。そんな爽やかな空気に触れられるだけでも、ここに来る甲斐があると思っている。体調を整えてもらうだけじゃなくって、心密かに、そうした先生の持ち味に精神的に救われている部分もあるのだ。

 ◯

 さてさて、それではお待ちかねのお昼である。もうすっかり同じお店に行くことが定番化している。コメダ珈琲だ。実は治療院に通い始めるまで全然行ったことがなかったから、初めて来店した日にすぐに虜になってしまった。木目のホッとする雰囲気、ふかふかのシンボリックな赤いソファー、可愛らしいランプに、オレンジ色の光……。すべての要素が居心地の良さに繋がっている。うふふあはは、そんなコメダでこれまたお決まりのメニュー:カツパン を食べながら読書に耽るというのが、私にとってのちょっとの贅沢、最高な自分へのご褒美なのだ。最近は身体のために小麦を減らしているけど、ご褒美デーなので特別。うふふあはは、今日はどのカツパンにしようかな~と考える時など、鼻歌が出てしまいそうだ(いや、気づかずに出ちゃってたりして)。

 カツパンシリーズには普通のカツパン、みそカツパン、エビカツパン、カツカリーパンとあって、想像するだけでどれも美味しそう(というかもう美味しい)なのでいつも迷う。夏の期間は味の濃いものを好みがちでみそカツパン、が多かったので、昨日は違うものにしようと思いカツカリーパンに。運ばれてきた時その香りにあれ…?となって、食べた気になってたけど待ってこれ初かも……!と謎に勘違いしていたことに気づいた。でもそれってラッキー!勝手に食べたと錯覚するほど絶対美味しいと思い込んでいた味を、思いがけず "初めて" 味わえるのだ。初めてに感動はつきもの。えぇいっ……もぐもぐもぐ……。

 " ……!"
 はちゃめちゃに美味しかった。ほんとにちょこっとピリ辛でベリグー。このカツパンシリーズはサイズが大きく、三つに切り分けられているので、いつも一切れ食べたところで本を読みつつ、というゆっくりとした食べ方をしているのだが、今回は一切れ目を食べ終わってすぐ思わず二切れ目に手が伸びていた。さすがに心の中で笑ってしまった。いやしかし、これほどやみつきになれるものこそ、ゆっくり楽しみにしながら本を読む時間もより引き立ててくれるというわけだ。そう思って手を引っ込めて、いつものペースで味わって食べた。いやはや、カレーってほんっと、スパイシーな味がたまらないよなぁ。そして今日もカツがサックサクだった……。


 そんな思いで昨日も満足してお店を後にした。2時間ほど居て、店内がちょうど満席になりかけていたので席を立った。本の続きは電車の中で、だ。帰りの車内は午後の光で満たされて、特に昨日は良いお天気だったのでとてもあたたかかった。とはいえ夏のようなしつこさはなくて、ああ秋なんだなぁとしみじみ思った。気がつくといつの間にかまぶたがとろんと下りていたみたいで、終点の乗換駅に着くところだった。ご褒美の日の、のんびりとリラックスした後特有の眠気……。なんだかほやんとしたあたたかい空気に包まれながら、そこから家までほわほわとした足どりで帰った。

 家に着くとちょうどおやつの時間をまわった頃。でも、あのカツパンを食べた後はいつもお腹がいっぱいなので、紅茶だけ淹れて椅子に座った。ここ最近はコーヒーよりも紅茶のほうが増えた。多分今読んでいる大好きな児童文学の主人公が、よく紅茶を飲んでいるからだ。私は影響を受けやすい。そのことに自分でもクスッと笑う。でもきっとみんなそうだよね?誰しも好きなものからは自然と影響を受けているはず🤭。

 人生は、自分にとって良き影響を与えてくれる人やものとの出会いを、楽しんでゆく旅なのだと思う。これからも、こうしてご褒美日を設けたりしてほどよく肩の力を抜きながら、長い長い道のりを楽しんで歩いていけたらな。正直、どうしたって自分のなかでは、がんばったなと思う月も、がんばれなかったなと思う月もある。でも、最近すごく思う。がんばれない時、がんばれてないなぁって自覚してる時って、がんばれてる時よりよっぽどつらい。遥かに苦しい。それに耐えてるっていうのも、がんばってないように見えて実は「がんばってるじゃん」って。だからそういう月にも、むしろそういう時にこそ、自分へのご褒美を忘れずにね。そうやって自分に声をかける。

 ◯

 来週あたりから、いよいよ本格的に秋になりそうだ。そして今知ったのだが、コメダでは今日から期間限定のヤンニョムチキンカツパンが出たらしい。二月にも販売していたやつ!く、くやしい、まだ食べていないから食べたい……。

 最後まで読んで下さり、ありがとうございました(^.^)🌷

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