【公演レビュー】2022年11月17日/「オーケストラ・プロジェクト2022」
【化石音楽を燃やすイヴェントは要るのか】
大井剛史(指揮)
中川俊郎(ピアノ)
會田瑞樹(ヴィブラフォン)
谷口かんな(シャドウヴィブラフォン)
東京フィルハーモニー交響楽団
~曲目(全て初演)~
森垣桂一:Symphonie des Mysteres
阿部亮太郎:なぞり ひびわれ ふりかえり
-休憩-
土屋 雄:美しき生~ピアノと管弦楽のための
山内雅弘:SPENDA Ⅱ~ヴィブラフォンとオーケストラのための
もう20年近く前、当時知り合った芸大作曲科の学生がこんなことを言った。
「今のオーケストラ作品って大体《キーン》って始まって《バタバタン》とやり、それを何回か繰り返して、最後また《キーン》で終わるのばっかですよ」
確かに彼から誘われて聴いた学内外の演奏会で披露される「新作」はそういうパターンが多かった。
今回、約20年ぶりに訪れた「オーケストラ・プロジェクト2022」における4曲も殆ど「キーン」「バタバタン」「キーン」だった。
後半の2曲はソリストの入る分やや変化があったが、土屋作品は八村義夫の「錯乱の論理」の出来を悪くしたような音楽、ラストの山内作品はヴィブラフォン奏者の名技には感心したが、オーケストラパートに存在理由が見えない。ソロ楽器と響き合う、平行線、決裂・・・関係性の立て方はひと各々でいいが、単に横でパラパラ鳴るだけの今回みたいなのはダサすぎ。
ソリスト2人の奮戦が滑稽にすら映る。
このプロジェクトはもう40年位やっているが、過去のリストを見ても初演された作品でオーケストラの演奏曲目として定着したものは全くないと言っても過言ではない。作品を寄せる人間の顔ぶれも定型化し寂しくなるばかり。
とにかく自分らの書いたオーケストラの作品の初演の場があればいいのかもしれないが、SDGsが叫ばれ、化石燃料は忌避されつつある世の中で演奏された瞬間に灰となる「化石音楽」を毎年繰り返す「プロジェクト」はもう再考の時期だろう。
皮肉にも本年のテーマは「再生への響き~今、そしてその先へ」だった。
※文中敬称略