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ストーリーオブマイライフ

3ヶ月ぶりに映画館に行きました。
幸せで、冒頭の映画泥棒見ただけで泣きそうになりました。

さて原作の若草物語ですが、私にとっては小学生の時のバイブルでした。あの頃、若草物語、赤毛のアン、大草原の小さな家、とシリーズ全て読んで、強い女性に憧れました。ジョーみたいに小説を書くんだ、仕事バリバリするんだ、と言ったら、「職業婦人になるのかい」と祖父母に言われました。職業婦人だなんて、と思うけれど、1940年代に生まれた祖父母からしたらそれはイコール結婚しないということで、少し悲しかったのでしょう。

冒頭、作品を出版社に持ち込むジョー。オフィスには見事に男性しかおらず、ジョーの美しい髪だけが明るく目立つショット。
若草物語はクリスマスから次のクリスマスまでの一年を描いた作品ですが、続編で4人姉妹のその後が描かれています。NYの下宿で暮らす冒頭シーンで、続編まで含んだ作品か!と一気に楽しみになりました。

若草物語と、その続編のシーンが交互に織りなされることで、若草物語の部分が強烈な輝きを持って見るものを懐かしい気持ちにさせます。特に、若草物語のシーンは晴れ渡る空や白く輝く雪、植物が黄金色に輝く秋といったように色鮮やかに描かれており、続編シーンは暗く立ち込めた雲や雨、ごみごみした街といったように暗めのコントラストで描かれています。

エイミーみたいに憎たらしいけど、そこまで意地悪じゃなくて、たまにベスのような輝きを見せる自分の妹を2人に重ねたり、メグみたいなお姉ちゃんがいたらよかったのにと思っていた小学生の頃が、自分自身懐かしく思えたり。

そして、原作から私が幼くて読み取れていなかったのか、それともグレタ監督が今を意識して描いたのか、黒人差別や女性の生き辛さに言及するシーンが数多くあります。
ジョーが「女性は美しいだけではない。知性も魂もある」と語るシーンの力強さにシアーシャローナンが光ります。
お母さんが持たざる人に色々なものを恵むシーンも、キリスト教的で偽善っぽく理解できないと小学生の頃は思っていたけど、南北戦争で北部に住んでいて奴隷制を持つ国を恥じている牧師家族だと考えると納得できます。そしてそんなお母さんが、親から自立した今見ると、尚一層天使のように輝いて見えるのです。

エマワトソンの美しさが群を抜いて、1人だけ都会の輝きでした。ちょっと浮いてる気がしたし、エマワトソンが「服を仕立てるお金がないの」と泣いても説得力がないというか…笑
でも、結婚するときにジョーに「愛しているから、喜んで苦労するわ」と語るシーンは強く心に残ってさすがだな、となります。あとピンクのドレスが云々のくだりは、着こなせちゃってるからまじで説得力がない。美しすぎる。
ベスはまぁ想像通り、強いて言えばもうちょっと儚い、色白で今にも消えてしまいそうな透明感が欲しかったところではあります。
エイミーは確か、一番可愛くて、鼻が低いことを本人は気にしてるけど、そんなこと気にならないくらい可愛いみたいな感じだったと思うのだけど、フローレンスピューのドレスはちきれ感に持ってかれて、なんか違うかもとなってしまった。たしかに気が強くて、ジョーと争うあたりの憎たらしさは最高に良い演技でした。でも、ドレスがパッツンパッツン…

あと何と言ってもティモシーシャラメ。美しいとはこのこと。無邪気なローリー、やさぐれたローリー、紳士なローリー、見事に演じ切っています。エイミーのエプロンのボタンを外す手が、エロくてたまらない…
結末は知っているのに、何度も「お願いだからジョーと一緒になって」と思ってしまうあたりがまだシンデレラに毒された脳です。

意地悪なマーチおばさまもメリル・ストリープが見事に演じてます。メリル・ストリープが出るとキリっと画面が締まるのはどの映画も共通で、本当に恐ろしい女優さんです。

アカデミー賞で衣装賞とっているように、衣装のみならず家や風景がとても美しいです。彼女たちの普段着も、一張羅のドレスも、ローリーのお屋敷も、みんな原作を読んだ時の想像通りに豊かな色彩で描かれています。特に、わぁ、となったのが、クリスマスのご馳走をフンメル家に施して帰ると、ローリーの家からご馳走が届いていたテーブル。まさに想像通りで、質素な家に場違いな、でも温かな色彩でテーブルからあふれんばかりに並べられるご馳走。

原作が大好きな私は、どうもこの作品を映画のみとして語ることができないようです。

150年経って、結婚しても働くことはおかしくない時代にはなったけど、やっぱり結婚するとなったときは絶望的な気持ちになった。もう自由は永遠に奪われ、たくさんのことを我慢して生きていかなければいけないんだと泣いてばかりで、でもこのチャンスをジョーのように逃して後悔したくないと思って結婚したこと。幸い理解のある夫でかなり自由にさせてもらっているけれど、やっぱり「させてもらってる」と書かなければいけない現代。
これから先、また何度も「女だから」という理由で壁にぶち当たるだろうけど、心の中のジョーがきっと助けてくれる、と思える作品でした。レディバードから始まったグレタ監督とシアーシャローナンコンビには、是非またタッグを組んで作品を撮ってほしいです。

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