インサイト探しに役立つジョブ理論と、習慣化したい5つの問いかけ
本日は、インサイト発見に役立つ「5つの問い」をご紹介します。
自社商品を手に取ってもらうために、日頃からこの「5つの問い」を習慣化したほうが良い。それくらいオススメの問いです。
※まあ、書籍「ジョブ理論」に書かれている内容を引用するだけですが。
ジョブ理論とはなにか?簡単に説明すると、
顧客が「商品Aを選択して購入する」ということは、
「片づけるべき仕事(ジョブ)のために、
Aを雇用(ハイア)する」ことである。
これがジョブ理論です。
たとえば、
・肌を美白に近づけるジョブのために、美白美容液を雇う。
・寝不足を解消するジョブのために、快眠を誘う入浴剤を雇う。
・気分よくブログを書くジョブのために、Macbookを雇う。
・在宅勤務で目が悪くしないジョブのために、デスクライトを雇う。
・サロンの運営方法が分からないので、有料noteを雇う。
すべての商品は、顧客が持つジョブに雇われる構造になっていて、商品がお客様に手に取っていただく”真の因果関係”を解き明かす、これがジョブ理論です。
「ジョブ」というコトバに親しみが持てない人は、「(潜在的&顕在的な)お悩み」と言い換えてもいいでしょう。
「お客さんのお悩みを解決するために商品が存在する!」ということです。
P&Gが顧客のジョブをうまく発見した例
本書で出てくるジョブ発見プロセスで、ひときわ面白かった事例が中国市場に乗り込んだP&Gのパンパースです。
P&Gははじめ、パンパースを「安くて機能性が良いオムツ(通称:10セントおむつ)」を中国マーケットに打ち出しました。狙いはシンプルで、安くて悪くない商品なら、巨大な中国マーケットでパイを取れると踏んだわけです。
しかし、あまり売れなかったそうです。
そこから、実際のパンパースユーザーに行ったヒアリングが、P&G中国戦略の転機になります。ありとあらゆる角度から質問をし、顧客の実態を把握します。
そこで出た女性ユーザーの声がこちら。
「パンパースを使った一週間でいちばんよかったのは、夫との仲睦まじい行為が戻ったことです。しかも、週に3回も。これまで使ったなかで、最高の10セントでした。」
これぞ、インサイト発見の瞬間だなぁと思ったのは私だけでしょうか。
ロジックは以下の通り。
夜赤ちゃんが夜泣きをしなくなる
→赤ちゃんが一晩中眠るようになった
→夫婦でゆっくり眠れるようになる
→セッ〇スの回数が増えた
結論(ジョブと商品の関係)
:セッ〇スレスのお悩みが解消されたから、パンパース最高!
もちろん、中国のパンパースユーザー全員が、このようなジョブのためにパンパースを雇っていたわけではありません。
しかし、このヒアリングがきっかけとなり、最終的に「10セントおむつ」という機能的な訴求から、「夜よく眠る子は頭がよくなります」と社会的な便益を訴えかける広告に転換することとなりました。
(ちなみに、いまパンパースは中国で30%のシェアを誇っています)
ただ、こういった真の顧客インサイト(ジョブ)を見つけ出すのは、簡単じゃないですよね。インサイトの発見は、決まった方程式があるわけでもなく、その人自身の顧客を見る目-レンズに依存しています。
真のジョブ(インサイト)を発見するいくつかの問い
マーケティング施策を考えるとき、よく「顧客を見ろ」と言われますが、どのような視点で顧客を見ればいいのか分からないときも多いのではないでしょうか?
そこで本書で紹介されている、ジョブを深く理解する5つの問いがこちら。
①その人が成し遂げようとしている進歩は何か?
求めている進歩の機能的、社会的、感情的側面はどのようなものか。
たとえば、「仕事やプライべ―トで飛び切りの第一印象を与える笑顔が欲しい」というジョブは多くの人の人生で発生する。あるいは、悩みを抱えるマネージャーは、「私の管理する営業チームが仕事で成果を上げられるように装備を充実させ、スタッフ間の混乱を減らしたい」というかもしれない。
②苦心している状況はなにか?
誰がいつどこでなにをしているときか。
たとえば、「毎週のように部下の誰かが退職したいと言ってくるので、勤務時間の半分を採用活動と新人教育に費やしている」
③進歩を成し遂げるのを阻む障害物はなにか。
たとえば、「営業スタッフのやる気を引き出すため、ボーナス制度、社外懇親会、トレーニングツールなど、思いつく手はすべて打った。なのに何が問題なのか、まだ彼らは打ち明けてくれない。」
④不完全な解決策で我慢し、埋め合わせの行動をとっていないか?
ジョブを完全には片づけない商品やサービスに頼っていないか。複数の商品を継ぎはぎして一時しのぎの解決策をつくっていないか。
たとえば、「自分で営業電話を掛けなきゃならない、そんな時間はないのに!」とか
⑤その人にとって、よりよい解決策をもたらす品質の定義はなにか。
またその解決策のために引き換え(トレードオフ)にしてもいいと思うものはなにか。
たとえば、「自分の仕事に役立つのなら、出来合いのツールでもいいから購入したい」
5つの問いを通じて、顧客が抱えるジョブ(お悩み)理解の解像度を飛躍的に高めることができます。①の切り口がインサイト発見に役立つこともあれば、②と③を統合してあるボトルネックが見つかることもあるかもしれません。
とにかく、ここでお伝えしたいことは、
1.問いかけの数だけ顧客理解の解像度は上がる
2.定型化された問いでも、十分インサイト発見に繋がる
この2点です。
やみくもに顧客を観察し続けることも否定はしません。
しかしまずは、明確な問い(切り口)を持って、相手を理解する。これだけで、現状の課題を解消するボトルネック(ジョブ)が見つかる可能性が出てきます。
最後に:商品とは落としどころである、解決策である。
近ごろ、「顧客の悩みがなくなり、解決策を提供する商品は売れにくくなった。これからは問いが大切だ」といった話を聞きます。しかしこれ、もう20年以上言われ続けてることなんですよね。
そして、商品はどこまで行っても、1つの落としどころであり、解決策として使われるモノだと思っています。
なので、「顧客には”表面的な”悩みがなくなり、これまで同様の解決策を提供するだけでは商品は売れない。まだ本人も気づいていない悩み(ジョブ)を発見しないと、モノが売れない」が個人的には正しい考え方なのかなと思っています。
商品という売り物が落としどころにある以上、商品が選ばれるべきジョブの発見から逃げてはいけないのです。
ということで、今日は「5つの問い」を切り口に、顧客とジョブの解像度を上げて、購買に繋がるインサイトを発見できるようになろう!という話でした。
「5つの問い」をあらためてまとめておきます。
①その人が成し遂げようとしている進歩は何か?
②苦心している状況はなにか?
③進歩を成し遂げるのを阻む障害物はなにか。
④不完全な解決策で我慢し、埋め合わせの行動をとっていないか?
⑤その人にとって、よりよい解決策をもたらす品質の定義はなにか。
またその解決策のために引き換え(トレードオフ)にしてもいいと思うものはなにか。
「自問自答し、顧客理解の解像度を高める⇔現場に出て良質なインプットを得る」を往復していると、それだけでインサイト発掘力は高まります。
ぜひ、マーケターでない方も、この5つの問いを有効活用してみてください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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