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パニーニ専門店でプリンを食す〜CAFE&KITCHEN PANITA〜

専門店に行ったら、その「専門」を食べたい。
できるだけ、お店の推しを食べたい。

でも困ったことに、案外全然関係ないメニューがあったりして、それも人気だったりして、自分の好きと合致していたりして。

CAFE&KITCHEN PANITA

お店の名前通り、パニーニのお店だ。
私はこのお店を知らなかった。だから行こうと思って行ったわけではない。

三鷹にある歯医者様に通っているので、大抵は終わった後に電車で吉祥寺に行くのだけれど、ふと歩いて行こうかなと思った。

三鷹から吉祥寺。
私は恵比寿だったり六本木だったりから渋谷までとか、数駅分くらいなら歩くことが多い。別に電車代をケチっているわけではなく。

まず、歩くことは大事だから。
運動が苦手。美味しいものは食べたい。太りたくはない。
なんて我儘だ。
でも、だから歩く。
苦手だから走ることは難易度が高いけれど、歩くことくらいならできる。

それに、歩くのは好きだ。
ちょっと変わった外観の家が立ち並んでいたり、独特で面白いお店を発見したり、この影良いなと立ち止まってみたり。
ビルに映る嘘みたいな空とか、変な形の雲とか、その雲の流れがなんだか早いなとか、誰かの家の庭で育てられているミカンの木とか。
そういう色々を見て、感じて。
そんな、きっと頭の良い人たちからすれば無駄と切り捨てられるようなことが好きだ。

だから、いつもだってその道を歩いているのが私の当たり前だったのかもしれない。けれど、なんとなくちょっと、抵抗があった。

三鷹から吉祥寺。
この道は、選び方によってはもうビックリするくらい、ず~~~っと自然が続く。今は多分、そんな道を何か考え事でもしながらぼんやり歩く時間も素敵だなと思える。でも大学生の頃。田舎から上京してきて、ジブリ美術館もある三鷹は都会だと思っていた私にとって、地元よりも何も無いその退屈な道はあまりに衝撃的で。
あの「無」はもう要らないと、なんとなく避けてきた。

そんな道すがら、このお店を見つけた。
他にも色々なお店を通って気になりはしたけれど、何故か、この店だけは一度通り過ぎてから、ふと足を止めて入ることにしたんだ。


なんだか小綺麗な、カジュアルなレストランともパティスリーとも見えるような、シンプルな内装が素敵。
「お水は普通のとフレーバーウォーターを選べますが、いかがいたしましょう?」

うっわ、嬉しい。
そりゃあ選べるなら、フレーバーウォーターでしょ。

あぁ良くない。この「そりゃあ」に捕らわれては。
他のお客さんの様子を窺っていると案外「普通の」を選ぶ人も多い。
自分の当たり前と思う考えを、誰かの当たり前に当てはめてはいけない。
人と会話する時には気を付けないとな。


さてさて、パニーニ専門店ならパニーニを食べるのが普通だろう、と。
いや、でも時間…。夕方かあ。
お昼は食べた。
夕飯には流石に早い、夜遅くにお腹が空いてしまう。

さて、何度かnoteでも書いているのだけれど、こういう時に私が好むのは、プリンだ。凄く丁度良い。そしてこのお店の、押しっぽいデザートメニューはプリンである。

主力商品であるパニーニは気になるけれど……。
でも、その時の私はプリンが食べたかった。

自家製プリン

この「自家製」というワードが好き。

「かため」か「やわらかめ」で言うと、「かため」の方。
それでいながらしっかり滑らかで、昔ながらの王道な美味しさ。

こういう四角いプリンを見て思い出すのは、私の経験してきたプリンの中ではDEPOTというお店。

あぁいや、でもDEPOTのプリンの方が強烈に究極にレトロを強調している。
こちらも本気で挑まなければ、雰囲気に飲まれてしまう。

昔ながらの自然さで言えば、喫茶トンボロとか?

う~ん、このツルンと具合ともやっぱり違う。

ALPHA BETA COFFEE CLUBのプリンは、カラメルのバランスや舌触りは少し近いけれど、プルンプルンとしてミルクの香りが独特だったし。

みのる食堂のプリンは、もっとギュッとかためで卵の濃さが印象的。


ああ、やっぱり全然違うや。
尽きない「かため」「やわらかめ」論争があるからこそ、この2軸のみに大別されそうなイメージにもなりがちだけれど、それぞれ全く違う。

プリン巡りの虜になってしまう人がいるのも分かる。

メニューの説明に「クラシック」という言葉が書かれていた。
このワードが凄くしっくりくる。

強烈なインパクトある個性が吐出して…というのではないが、それが良い。
プリンってシンプルだからこそ意外と個性を詰め込もうとして、美味しいけど少し気疲れする感じのものが多いかもと思う。

だから、この安心感ある味わいが、凄く良かった。


ところでこのプリンを食べる時、右からと左から、どちらから食べ始める人が多いのだろうか。クリームの位置が偏っているから、ちょっと迷うところだ。私は右から食べ進めたから、最後にクリームとオレンジを楽しんだ。

この!!!
カラメルがたっぷりに絡んだドライオレンジの美味しさが甘くて、とても甘くて、心がハッとした。際立ったインパクトある個性をここに詰め込んでいる。ちょっと美味し過ぎてびっくりした。


お隣に座っていた老夫婦が凄く、本当に凄く仲良しで、なんだか全く関係ないのに微笑ましくて嬉しくなった。2人で「美味しい美味しい」と何度も頷き合いながら食べている。水をどうするかとか、3種類あるパン生地のうちどれがいつものかとか、お店の人が当然のように把握しているほどの常連さん。
「本当にいつ来ても美味しいね、週に1度は食べたくなるんだ」
美味しいから、と自分の分を少し切って相手のお皿に置いて交換しあいっこ。

そんな微笑ましい関係も、そんな素敵な人たちに愛されているお店も、素敵だなと思った。


専門店なら専門のそれを食べなきゃ!!という意識が強すぎると、今は食べるタイミングじゃないから、なんていう理由でやめることもあるだろう。
だからもっと気楽に、行きたいなと思ったら行く。食べたいなと思ったものを食べる。自由ばかりが正義ではないけれど、そういう自由を大切にした方がいい時もあるよな、と思う。

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