さよならドトール、感謝を込めて
社会人になってから、ドトールの超ヘビーユーザーになった。
カフェ巡りでは、できるだけ1店舗のみを愛するのではなく、幅広く楽しむことを心掛けている。そんな私が、ドトールへは何百回行っただろう。
正式に配属されてから、直属の指導員にあたる先輩がそのグループに誘ってくれた。社員食堂では集まって座り、その後近くにあるドトールに移動して、15分程度だけれど、珈琲を飲みつつ雑談をする。
その構成メンバーはわりと謎で、色々な部署の人がいたし、部長や役員までいた。私にとって彼らは「職場の偉い人」ではなく、「仲良しのおじちゃん、おばちゃん、お兄さんお姉さん」だった。
正直、最初の頃は煩わしく思うこともあった。
毎日お昼ご飯とは別にかかる、たった15分程度のためのコーヒー代。
月に3,000~4,000円くらい。意外と大きな出費だ。
休憩時間のはずなのに、自由に過ごせない。
先輩以外はよく知らない人で、2人になると何を話せばいいのか分からないし。他部署の社員の話など、ついていけない話題も多い。
それでも、その居場所は私にとって凄く、ありがたいものだった。
学生の頃、「1人」になるのが怖かった。
イジメられていたわけではない。
でも、何も言わなくたって当然のように毎日お昼を共に過ごすほどの親しい友人がいるわけでもない。そんな時期が、わりとあった。
そういう微妙なポジションだからこそ、1人でいて、「あいつ、友達いねーの?」とか思われることに怯えた。
むしろ居ないと不自然というほど当たり前に居られる場所。
そういう場所を社会人になってから得られたことは、本当に嬉しかった。
業務が忙しかったり、今は外出を控えるということでドトールに時々しか顔を出さないメンバーも多いのだけれど。
私にとっては習慣になり過ぎて、たとえ誰もいなくても行くようになった。
4年という月日。
雨の降っていない平日は、毎日ドトールに通った。
そんなドトールに別れを告げる日がやってきた。
職場が、変わるからだ。
転職とか、部署が変わる、というわけではないのだけれど。
訳あって、働く職場の駅が変わるのだ。
ドトールは店舗数が多いから、会社帰りや休日に食べに行くことはできるけれど、職場の仲良しメンバーと、あの店舗に通うことはもう、きっと二度とない。
ドトールのココアは、クリームが溶け込んでる系。
シーズンのクリームもりもり系は、しっかりめのクリームが惜しみなく盛られている。
ビジュアル的にも可愛いんだよね。
梅グリーンティーとか、なかなかにユニークなメニューも。
シリーズ化しているヨーグルン。
フルーツとヨーグルトの爽やかさが合致して、すっきりゴクゴク飲めてしまう。美味し過ぎて、「もう1杯注文しちゃいたい~!」と惜しくなる余韻。
大好きだ。
ナッツのバーもヘルシーっぽくて大好き。
メープルの甘さがしっかりとナッツに絡む。
大豆ミートのバーガーが発売された時は、喜び勇んで食べに行った。
キティちゃんのコラボ。
このシリーズは思いがけず、ワッフルが一番美味しかったんだよね。
表面はサクッとしつつフンワリ生地で。
そこから飛び出す甘いクリームは絶品だった。
ショコラムースは、なんと4種類ものベルギー産チョコレートを使用している。
ただでさえ全体にチョコがたっぷりなのに、更に追い打ちをかけるようにチョコチップ。
最高が過ぎる。
季節のミルクレープたちも。
抹茶。
生地の香ばしい甘さが、仄かな苦味の抹茶クリームと調和して、全体的にホッとする甘さに落ち着く。
かのこ豆も、綺麗だ。美味しい。
白桃。
「もちづき」「あかづき」と、2種類の桃を使った贅沢さだ。
フォークを入れる時、舌に乗せた時。
桃の食感は全く邪魔にならず、瑞々しくスッと溶け込む。
さて。
最後、とうとう最後の日。
さよならの気持ちにたっぷりの感謝を込めて昇華させるために、スイーツを食べよう。
しかし、コロナの影響もあって、残念ながら半分以上のメニューが休止中。
ある中で...というと...。
そうだ!
ミルクレープ
いつも季節のばっかり注文しちゃうけれど、折角の機会だ。
王道を、定番を食べよう。
......お、おおぉ!?!?
う、うまっ!!!
「定番」って凄い。
自信があるからこその定番なのだ。
「季節の」だって勿論、美味しかったよ。
でも何か...この「定番」というやつは、別格のオーラを放つ。
ミルクレープというと、フォークを下すとプツプツっと層が切れる感触なイメージがあった。
けれど、それは「これショートケーキじゃね?」という程の滑らかクリーム感。
ミルクの味わいに凄く透明感があって、生地の焼き目の美味しさなどもよく伝わってくる。
この生クリーム...きっと改良を続けて、現時点で最高の美味しさを実現しているのだろう。自信が、強く伝わってくる。
ずっと続くと思っていた時間に終わりがやってきた。
ありがとう、ありがとう。
寂しいけれど、楽しかった。
楽しかったから、寂しい。
新しい場所でも、大切な時間を過ごせるドトールみたいなお店を見つけられたらいいな。
大切な時間を、ありがとう。
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