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『取材・執筆・推敲』から読み盗った3つのこと

みなさん、こんにちは。

今回は『取材・執筆・推敲 書く人の教科書』から読み盗りました。(「能動的な読書」を目指しておりますので、「読み盗(と)る」という少し刺激的な言葉を使わせてもらっています。)

本書の概要

冒頭の文を引用し、概要といたします。

本書は「ライターの教科書」というコンセプトの下、執筆された。より正確に言うなら「もしもぼくが『ライターの学校』をつくるとしたら、こんな教科書がほしい」を出発点とする本である。「取材」「執筆」「推敲」の全三部、ガイダンスまで含めると合計10章からなる本書が、現役のライターや編集者はもちろん、これからその道をめざす人、そして「書くこと」で自分と世界を変えようとするすべての人たちに届くことを願っている。

のっけからまったくムダのない、スーパーモデルな文に圧倒されました。冒頭だけでなく「書く人の教科書」には洗練された文章しかありませんでした。

「書く人」だけでなく「読む人」にもオススメの一冊です。


では、「取材」「執筆」「推敲」それぞれから読み盗ったことを書いていきます。

まず、「取材」から読み盗ったことは

① 3つの「きく」

です。

3つの「きく」について、本文から引用します。

日本語の「きく」は、おおきく3つに分類される。ひとつは、一般的な「聞く」。英語だと hear のニュアンスに近い。続いて、相手の声にじっと耳を傾ける「聴く」。英語でいえば listen である。最後のひとつが、相手に問いかける「訊く」。こちらは英語で ask となる。(89ページより)

受動的な「聞く(hear)」ではなく、能動的な「聴く(listen)」と「訊く(ask)」が重要だそうです。

取材の7割は「聴く力」、残り3割が「訊く力」で決まるとのことです。

私見ですが、「聴く」にも「訊く」にも共通する3つのポイントをまとめてみました。

1.相手や対象を「好き」になる
2.「いいところ」を見つけて全力で膨らます
3.「ということは、○○ですか?」と、訊くことを考えながら聴く

以上を踏まえて、もし著者の古賀さんに「取材」できるのなら、

「『どんぶらこ』が禁止されたら、桃をどう流しますか?」

と訊いてみたいです。


続いて、「執筆」から読み盗ったことは

② 文章力の筋トレ3種

です。

文章力を高めるために、書く筋肉のトレーニングが紹介されています。


文章力を、「おもしろい文章を書く力」と仮定して、その「力」の部分に注目したい。筋力トレーニングのように、書く筋肉を鍛えていく方法を考えていきたいからだ。(361ページより)

筋トレは全部で3種類。それぞれ書いていきます。

・慣用表現を禁止する
⇒ 慣用表現とは「ありふれた表現」や「使い古された言い回し」のこと。ことばの賞味期限が不明で、自分が理解できているかもわからない表現。「なおみ節」「腹落ちする」「解像度が高い」などの雰囲気ことばが該当する。

・オノマトペを禁止する
⇒ 日本語の豊かさが、逆に表現の幅を狭めている。「じろじろ」を禁止して、「サバンナの捕食動物」にたとえてみたりする。

・主題のことばを禁止する
⇒ 読み方や解釈を読者にゆだねる。読み手の可能性が広がるし、書き手(自分)の表現力も鍛えられる。「希望」という言葉を使わずに「希望」を語るのが文学。


最後に、「推敲」から読み盗ったことは

③ 音読、異読、ペン読の3ステップ

です。

推敲が「料理」にたとえられています。

料理にたとえるなら推敲は、素材の状態を確認する段階(音読)、大胆に庖丁を入れていく段階(異読)、ていねいに小骨を取り除く段階(ペン読)の3ステップがある。(407ページより)

音読、異読、ペン読、それぞれ掘り下げます。

・音読
⇒ 違和感に気づくために、口と喉を動かして、目と耳で読む。目で読むだけでは気づかなかった部分が見えてくる。

・異読
⇒ 横書きを縦書きにしたり、フォントや大きさを変えたりすることで、同じ内容でも見え方が全く違ってくる。PCからスマホへのディスプレイ変更も異読のひとつ。

・ペン読
⇒ 掲載時に近い見た目でプリントアウトし、赤ペンで訂正する。文章単位ではなく、ひと文字単位で読めることが最大の利点。


まとめ

『取材・執筆・推敲 書く人の教科書』から読み盗った3つのこと

① 取材では、相手を好きになって、「訊く(ask)」ことを考えながら「聴く(listen)」こと
② 執筆では、文章力の筋トレ3種(「慣用表現・オノマトペ・主題のことば」の禁止)で負荷をかけること
③ 推敲では、耳でも読むために音読 ⇒ 文書スタイルを変えて異読 ⇒ プリントアウトして文字単位でペン読 を繰り返すこと


最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。「取材・執筆・推敲 書く人の教科書」は、日本語に興味のある方ならどなたでも楽しめる本だと思います。ぜひご高覧ください。

では、またです。


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