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夜と霧 新版

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ヴィクトール・E・フランクルの名著。
新板で読んだ。

以前読んだときの衝撃はなかった。
ただし、そこに伝えられるメッセージは変わらず胸を打った。

フロイト派の精神医学社である著者はユダヤ人であるがゆえにアウシュヴィッツに送られる。システム的に、もしくはきまぐれに、収容者たちはガス室に送られたり、単に衰弱して死んでいく。この世の地獄で、著者はどうして生き延びられたのか。
ただ生きたのだ。
健康というほど健康でもなく、強靭な肉体をもっていたわけでもない。チフスにもかかった。それでも強制労働を続け、そのうちに医師として患者たちを見る役割となり、やがて唐突に終戦が訪れる。
フランクルが生き延びたのは、運がよかった。ちょっとしたことでガス室に送られる収容者たちの中で、彼はガス室に送られなかった。そして、皆殺しにされるトラックに乗らなかった。自分の意思で乗らなかったのではない。リストに名前がないから乗れなかったのだ。次のトラックを待っていたけれど、来なかったのだ。

生き残ったのは運がよかったからだ。
しかし、地獄での生活に耐えられたのは彼自身が未来への希望を捨てなかったからだ。いや、希望はもうなかった。しかし、いつの日か妻に再会することを信じていた。生ける屍になっても、そのことは忘れなかった。

著者のメッセージはシンプルだ。

人はどんなに苦しくても生きていかれる。
生きるのを諦めなければ生きていかれる。
もちろん大きな代償を支払うことになるかもしれない。
それでも生きるのだ。

この後の人生でも辛いことはたくさんあるだろう。
そのたびにこの本をめくれば、さいごまで生きていかれる。

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