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恥ずかしいだけのガチポエム

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素敵な写真とセンチなポエム。現実の厳しさに疲れた心を癒やされたいあなたに贈る、こつこつと積み上げていく世界。 心のどこかがほんのりとあたたかくなれば幸いです。 がんばって、だいた… もっと読む
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2020年12月の記事一覧

ピーピングトム

ピーピングトム

工事現場を通りかかると、どれだけ深く掘ったのか覗きたくなる。
「相手が人間じゃないからいいけれど」と彼女は苦笑いする。
「人の家を覗くようになったら止めてくれ」
ぼくが頼むと彼女は首を横に振る。
「そんなことになったら私は出て行くから」
「だったら、覗くわけにはいかないじゃないか」

棕櫚

棕櫚

シュロの木を見ると昭和を思い出す。
私たちが昭和生まれだからかな、と彼女。
たぶん、とぼく。
シュロの木がある家に住んだことがないのに。彼女は言って、ハッと気づいた。
そういう家に住みたいの?
ぼくは少し照れ臭かった。

見たいものだけ見てた

見たいものだけ見てた

ビルの谷間から光がこぼれていた。
ぼくらは思わず足をとめた。
きっと、そんなものは珍しくもないのだ。だけど、ぼくらはそういうものをスルーするようになってだいぶたつ。
見たいものしか見なくなっていたと、ぼくらは気づいて、お互いに苦笑いした。

それはそうだ

それはそうだ

書店といえば本を売っているところだが、最近はアートを飾ったりしている。文化の発信拠点のような位置付けに変わるのかもしれないね。
ぼくが意見を述べると、彼女は少し考えた。
「お金があればできるんだろうけど、やっぱり本だけ売ってる店の方が多いよ」
それはそうだ。
だけど、本だけ売っていていいんだろうか。本が売れないと言われ続けているんだから。
「売れなければ、どうやったら売れるか工夫しなくちゃ。売れな

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冷たくてもいい

冷たくてもいい

都会は冷たい、と言われることがある。冷たいというよりは、他人との接触をおそれる傾向にあると思う。
そんな中で、恋人に出会い、心の中をさらけだせるのは幸福だった。
わざわざ,口にすることはないけれど、彼女と一緒にいるときは、そのことを思い出す。彼女も同じことを考えていてくれたらいいけれど、それは贅沢かな。

誰かのあおぞら

誰かのあおぞら

だれかの心が晴れているときに青空になるのだと子どもの頃はしんじていた。と話したら彼女に笑われた。だけど、本当はまだ信じている。つまり、きみの機嫌がいいと、青空になるんだ。

高速ぼっち

高速ぼっち

寂しい日にひとりで高速道路を見に行った。
彼女とけんかをして、しばらく連絡が取れていない。高速道路も寂しげだ。そんなふうに感じるのは、ぼくが寂しいだけだろう。

どんよりしたい

どんよりしたい

はげしいくもを見上げている。
不気味でありながら、安心感も覚える。どんよりとした空気に包まれるのが好きなんだ。
彼女はぼくの趣味にさほど共感しないというけれど、どんよりした雲を見て目を細めている。

たまにはファンタジーもいいものだ

たまにはファンタジーもいいものだ

デパートでみかけた不思議な雲はクリスマスのイルミネーションなんだろうけれど、ぼくらを魅了した。
「あの雲に乗ってみたい」
彼女が言った。
さすがにとめたけれど、彼女の気持ちはよくわかった。たまにはファンタジーに浸りたくなる時もある。

まんだらけだらけ

まんだらけだらけ

せっかくの休日だからまんだらけにいこう。
彼女と一緒に出かけたら、店はまだあいていなかった。
でも、建物の中にはまんだらけの空気が漂っていて、ぼくらはなんとなく満足した。埃っぽい熱気。ぼくらはまんだらけが大好きだ。

森になった高速道路

森になった高速道路

肌寒い日に彼女と高速道路を見に行った。
交通量の少ない高速道路は静かだった。
どしりと目の前に存在しているコンクリートの塊を眺めて、ぼくらは満足だった。
「高速道路に木が植えてあったらいいね」
彼女が言った。
「森の中をドライブしているみたいになるから」
それはそうだ、とぼくは思った。

クリスマスのなやみ

クリスマスのなやみ

クリスマスが近くなると、街がそわそわしてくる。ぼくもそれにつられてそわそわしてくる。
彼女へのプレゼントはどうしようか。懐具合も冬が訪れている。それでもふたりの関係は暖かくしたい。
そんなことばかり考えているから、街を歩いていてもクリスマスのものばかり目についてしまう。
悩んで迷ってさまよって。
なんだかんだいって、楽しくやってるじゃないか。

野菜畑でつかまえて

野菜畑でつかまえて

野菜工場なんてものをじかにみる機会があるとは思わなかった。
ちょっとした偶然,もしくは幸運で、ぼくらは野菜工場を発見したのだ。
ぼくらはSFの世界に紛れ込んだようで、いっきに盛り上がった。
「いつかは人間の子どももこうやって育ったりしてね」
ぼくが言うと、
「私たちの子どもは違うよ」
と、彼女は照れ臭そうに言った。

冬に咲く花

冬に咲く花

冬は花は咲かないと思っていた。
ぼくのおもいこみをきみが笑う。
冬だから咲く花もあるのだと。
ぼくはきみと対等でいたいと思うけれど、つくづく自分の無知を知らされるのだ。