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めんどくさい女のままでいい☆小説『やわらかい砂のうえ』で考えた

小説『やわらかい砂のうえ』(寺地はるな)の万智子は媚びない。男性に受けなくていい。それよりも自分らしくいたいし、自分らしい自分を、もっと好きになりたいのだ。

「めんどくさい女」って男の人から、すごく嫌がられている気がする。

昔のほうがもっとそうだったんだろうけれど、「物わかりのいい」「素直な」「かわいい」「すぐにうんうんってうなずいてくれる」「女の子」がいい、と。

元からそういう女性もいると思うけれど、それに合わせている女性もたくさんいる。

相手に合わせない女

私はかなりめんどくさい女だったし、今もめんどくさいままだ。

例えば恋愛で。

「ああいうフリルのついた服、かわいいよね。ああいうの、着たら?」と言われても、好みではないと着なかった。フリルが嫌いなわけではなくて、そのフリルが私の好みではなかったのだ。

いや、ちがった。若いときは買ってみたこともあるけれど、やっぱり好きじゃない服は着ても気持ちよくないとわかってのやめたのだ。
彼の好みの服を着た女の子は、私ではなかった。彼に合わせる自分を、自分じゃないと、許せなかったりもした。

今思うと、私はどんどんめんどくさい女になっていったのだ。

ケンカするときも、うまくいいたいことをいえなくて押し黙ってしまった。がんばっていっても、うまく伝わらなくて、また黙ってしまったり。

今の夫はそれを受け入れてくれたから一緒にいられる。
でも今も「面倒くさい」と思っているだろう。それでも一緒にいて、痛いと思い合っている。

引っかかる女

『やわらかな砂のうえで』の主人公・万智子は私に比べれば、とっても素直だ。でもつきあい始めた彼に「めんどくさ・・・」といわれてしまう。

でも彼女の引っかかるところは、いちいちよくわかる。

「ひかえめなところがいい」といわれて、ひかえめではないし、ひかえめがいいということに対して、「ちがう」と感じるところ。

誰とも交際したことがない、というと「純粋」といわれるけど、純粋と交際したことがないということは関係がないと思うところ、など。

交際相手の早田は好青年で、まっすぐで、でも実は万智子の前で無理をしている。

その二人の気持ちがすれ違うところや、一つ一つの反応ややり取りが一つ一つ書かれていて、共感してしまう。

胸に落ちる言葉

じれったいような、まどろっこしいような、危うい二人。そんな二人を見ている友人がいる。

万智子は職場で知り合った縁から、3人の年上の「女友だち」ができる。

この女友だちの言葉がいい。胸にしまいたい言葉がちりばめられている。

「誰でもみんな、その人にしかない美しさを持っているから。(略)自分が美しいことを知らない女の人が多すぎるから」

「めんどくさくない子って要するに扱いやすい子ってことやからね」

「その人の好きな部分だけじゃなく、嫌いな部分もすべて受け入れて許さないと、友達にはなられへんのやろか」

その女友だちのたくさんの言葉に、考えて、自分の思いが出て、万智子は変わっていく。自分のことがよりわかってもくる。
自分の気持ちがわかったときの表現にも、胸に落ちる言葉が多い。

甘いだけの恋愛は、ない

ただの甘い恋愛小説ではない。
でも、恋愛ってそういうものではないだろうか。

甘いだけの恋愛は現実には、ほとんどないのだ。

はじめはスイートなんだけど、だんだんしょっぱくなったり、苦みが出てきたりチクリとしたり。そのひとつひとつは大したことがないようで、とても大切で、流してはいけないもの。ないがしろにすると、そのあとの二人の関係がゆがんでしまう。

恋愛小説ではあるのだけど、恋愛だけではない。

女友だち、家族、仕事、おしゃれ・・・毎日の生活全部。大事にしようって思う。

一つ一つを自分で確かめながら、進んでいきたい。
少しでもゆがめて合わせると、あとから歪みが大きくなってしまう。
そうなると、もう直せない。

その前に一つ一つ合うか合わないか、自分の目で見定めてみる。
合わない時は、合わないという。
同士て合わないのかを言葉にする。
ちゃんと、伝える。

少しずつ自分に合うようにできるか、考えてみる。
相手を変えるのではなく、自分の形も少しだけ変えてみる。

そんなことから二人の関係が築かれていくはずだ。

めんどくさいからこそ、ていねいに作っていく未来。

だから、めんどくさい女のままでいい。


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