悲しみを翡翠色に抱きしめて【冷蔵庫企画エッセイ賞】Norikoさん
12歳。
少し背伸びして遊びたい時。
クラスメイトとかわいい文具を買いに行ったり、マンガを貸し借りしながら他愛ないおしゃべり。ゲームもしたいし、おやつも買いたい。
でも、時間がない。自由気ままは許されない。
根を詰めた家事と祖母の世話の後。
うまく片付けられたら、おばあさんの調子が良かったら、時間ができたら、運のいい日にできるかもしれない。
でも遠くへはいけない。長い時間はできない。
息を詰めながら、「なぜ」を自分に問う日々。
冷蔵庫企画、受賞者のNorikoさんの記事から感じたエッセイを書かせていただきます。受賞作はこちらです🏆
冷蔵庫企画の川野森千都子賞・エッセイ部門受賞の発表はこちらです。
Norikoさんは父子家庭。
その上、おばあさまが脳梗塞で倒れ、お世話もしています。
12歳の時、Norikoさんはおばあさまから、かぼちゃの面取りが粗いといわれて家を飛び出します。
私が12歳の時って何をしていたでしょう。
母も働いていたので、買い物やお米研ぎくらいはしていました。
でもそれはあくまで軽い「お手伝い」。
しなかったら軽く怒られる程度のものです。
私はうっかりして、よく忘れていました。
そして友人と遊んだり、本を読んだりしていました。
私の時代には携帯もゲームもなく、あるのはテレビや雑誌やマンガくらい。
近くの本屋さんで30分の立ち読み。好きなのは別冊マーガレット。
お菓子作りに興味を持って、始めていました。
そんな、のんきな12歳でした。
Norikoさんの12歳。
洗濯や掃除、買い物や料理。
お父さんのお弁当作りまで。
おばあさんが片麻痺の残る体でお風呂に入ると、脱衣所へ急ぐ。
「えらい」なんて言われたくない。
「しっかりしていますね」なんて言われたくない。
ただ普通の12歳でいたいだけなのに。
口惜しさと悲しみを抱えきれずに「家出」。
でも行き先もなく、公園にいるしかなくて。
お父さんが迎えに来ると、帰るしかなくて。
誰も悪くないかもしれない。
でも、つらい。
もう、いやだ。
言葉もなく、体中にやるせなさをぎゅうぎゅうに詰めて。
それでも。
おばあさんが入浴すると事故のないようにと、脱衣所に座って待ちます。
『お腹空いたら冷蔵庫に作っとるけん
食べんね』
おばあさんがかけてくれた言葉を思い出して、冷蔵庫を開けたのはもっとあと。
入浴して、風呂掃除をして、洗濯の準備をしているとき。
冷蔵庫にあったのはNorikoさんの大好きなグリーンピースの翡翠煮。
それは私が1番好きなもの。
祖母が作るそれは
お出汁の味がしっかりしていて
豆のぽくぽくとした食感もあって
一粒一粒が空気が入ったばかりの風船の様に
ツヤツヤとはち切れそう。(受賞作「もう、これきりの味」より)
おばあさんの絶品の翡翠煮。舌にも、心の中にも染み渡った、味。
ヤング・ケアラ―という言葉が知られるようになったのは、ごく最近です。
5%の子がそうだという統計があるそうです。
20年以上前はそんな言葉もなく、学校にカウンセラーがいたかどうか。
いても相談できる体制にあったのか、どうか。
「自分がちゃんとやらなければ」と誰にもいわずにがんばってしまう子どもたち。
今年、そんなヤング・ケアラ―を描いた本が出ました。
「ウィズ・ユー」(濱野京子・くもん出版、課題図書だが現在ネットでは品切れ)帯の言葉は内容と合っていません。手を伸ばしてもらうためでしょうか。
父親の単身赴任中に母親の介護、妹の世話を一人で抱え込む少女の話です。
誰かが、気づけたら。
でもこの本に、だれが手を伸ばすのだろうとも思うのです。本人にはそんな余裕はなく。知らない子どもたちは素通りしてしまうのではないか。
でも、知ってほしい。
この本に、限らず。
あなたの隣に、その子がいること。
Norikoさんのおばあさんの、グリーンピースの翡翠煮。
私も味わってみたかった。
その深さにも悲しみにも、追いつかないけれど。
その優しさには気がつくかも、しれません。
おばあさん自身が苦しかったこと、孫を𠮟って後悔したこと、不自由な体で一生懸命に好物の翡翠煮を作ったこと。
飲み込んだ涙は、翡翠色だったかもしれません。
Norikoさん、すてきなエッセイ作品をありがとうございました。
思いが私の心に届きました。
Norikoさんはこんな方です。マガジンを紹介します。
父子家庭育ちのシングルマザー。コーチングやレジリエンスを学び、母業しています。仕事と子育ての難しさや楽しさを書いていきますっ(о´∀`о)✨ 海外生活で得た事、リストカットから得た事、全てがギュギュッと子育てに生きてるー✨
このあとも信じられないほど多くの悲しみと苦しみを乗り越えて、とてもすてきな女性で、すてきなお母さんになっています。
写真を無断転載したこと、お許しください(翡翠煮の写真)。
また、Norikoさんのおばあさまのことを「おばあさん」と書いたことも。
冷蔵庫企画、エッセイ部門です。
明日、お料理部門を発表できるよう、鋭意がんばっております。
Norikoさん、みなさん、ありがとうございます。
読んでくれてありがとうございます😊スキ💗、フォロー、コメントをいただけたら嬉しいです💖
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