インドア派のキャンプ
私も、夫も、インドア派である。
うちにはテントも、ない。
車すら、ない。車を使うときは、カーリースを利用する。
そんな私たちが、キャンプ?
私は独身時代、バックパッカーになって、海外に出ることがあった。
インドや、南米に。
それは非日常で、いつもは家にいて、本を読んでいる方が落ち着いた。
でも、子どもができると、ムクムクと自然にまみれたくなる。
子どもをもっと自然に触れさせたい、という気持ちとともに、私自身も土や森の香りに囲まれたくなった。
息子が4歳の時に、富士山のそばの自然学校のような場所に行った。
アウトドアグッズは特に持たなくていい、と聞いて、安心して参加。
初めての体験に、家族3人で、キョロキョロしていた。
ところが、到着後すぐに、野菜の収穫、運搬、洗う、切る。
近くには畑も田んぼもあって。
今度は粉を練って、ピザを焼く。
目まぐるしく、動くこととなった。
「働かされるでしょう」
「びっくりしたでしょう?」
以前から来ていたらしい方から、笑顔で言われた。
でも。なぜか。
あまり驚かなかった。
こういうものだ、と何となく受け入れていた。
もちろん、「のんびりしていてください」「温泉に行きましょう」という場所にものちに出会い、それはそれで大好きだった。
どちらかというと、いや、明らかに、のんびりしたい派。
ただこの時はなんだか、なじんだのだ。
「初めての参加なのに、すごく働いてくれて驚きました」
と何回目かの参加でいわれたので、珍しかったらしい。
別に働き者ではない。
適応力が、この時は、多少、高かったようだ。
いやな感じもなくて、体を動かすのが自然、だった。
子どもの手前、「いいところを見せよう」とも思ったのかも。
もぎたての野菜をモリモリ乗せたピザを、石に載せた鉄板で焼く。
かぶりつくと、おいしい!
人見知りの息子も、いつの間にかなじんでみんなで種をこねている。
夜は収穫した野菜で具沢山のおつゆや、おかずを何品も手分けして作る。
でもへなちょこな私たちのために、テントは立ててくれた。
コテージもあったけれど、「テントに泊まりたい」という息子と一緒に。
「小さいね」「狭いね」
嬉しそうに何度もいう。
虫の声が間近で聞こえる。
草の香りがする。
息子は寝つけないようで、ゴソゴソしていたが、パタッと静かになった。
守られているような、安心感でいっぱいになって眠った。
朝、寝坊の息子が早起きして、家畜の散歩についていった。
そこには、何度も通うことになった。
1回目は一人であいさつできなかったが、「ありりんにあいさつするところをみせたい」 と練習して、2回目はあいさつができるように。
ありりん、は笑顔のすてきなスタッフのお姉さんだ。
畑で野菜を植えて収穫し、田んぼでお米を育て。
火おこしをし、秘密基地を作り、鶏の世話をした。
何組もの親子となじみになり、やさしい(でもよく働かせる)スタッフと仲良くなった。
いつまでもアウトドア技術は上達しなかったけれど、満喫は、した。
小学校に入ってから、行かなくなってしまった。
忙しくなったことと・・・
知っているスタッフはみな、そこから独立してしまったのだ。
実家に帰って畑仕事を始めた人。
独立してネイチャースクールを開いた人。
奥さんの故郷である海外に渡った人。
ありりんは独立をした。
みな、とびきりの笑顔で、たくさん技と知恵を伝えてくれた。
たくましくて、自由で、おおらかで、かっこいい。
息子に自然を教えたくて行ったけれど、私は彼らから生き方を教わった。
息子はその姿をおぼえていてくれるだろうか。
ただ慕って、ついていっていた。
それで充分だ。
私も夫も、そして息子も、今もインドア派だ。
それも、よし。
無理は、しない。
でも心は、時どきアウトドアに、飛ぶ。
※写真は神楽坂らせんさんからお借りしました。ありがとうございます。
サポートいただけたら、よりおもしろい記事を書いていきますね💖 私からサポートしたいところにも届けていきます☘️ものすごくエネルギーになります✨よろしくお願いします。