彼が見るアレな夢。小説最新話のあらすじと小話(第四十話・四十一話)
こんばんは。Webライター兼作家の苫都千珠(とまとちず)です。
ブログやカクヨム・エブリスタなどで連載中小説、「夏休みの夕闇~刑務所編~」の最新話をアップしました。
「第四十一話 その日の夜、彼は夢を見る」
※話数のナンバーは、各投稿場所によって違うことがあります。
この2話で「第四章 夢」が終わり、とうとう後半の章に入っていきます。
比較的和気あいあいとしていた今までとは雰囲気が変わってきたよ。
知らない人のために…「夏休みの夕闇」ってこんな話
一文でお伝えすると、死刑を待つ青年「灰谷ヤミ」と、魔法使いの女「火置(ひおき)ユウ」の恋物語。
もうちょっと詳しく言うと、以下のとおり。
灰谷ヤミは静かな青年ですが、殺人を犯していたり「自分で考えた神様や、天国で神様に愛されるためのルール」を信じていたりと、なかなかな思想を持っています。
一方火置ユウは「世界を救う時空の魔女」。しかし彼女は個人主義者で集団行動ができないし、プライドが高く気が強い。納得できないことには従えない頑固な性格。
そんな、人間性に難がある(?)二人は刑務所で出会うわけですが、会話を通して徐々に距離を縮めていきます。
二人は無事に生き延びれるのか?というか、灰谷ヤミは死刑になる……はずだけど火置ユウはどうするのか?そんな二人の話。
偏った考え・心理状態ならではのキモさとエモさ。このバランスを大事にして執筆しています。
最新話のみどころ3つ
完全に彼女を異性として意識し始めた彼
「僕はうとうとしながら…………火置さんの体の柔らかさを思い出していた」初めて彼に湧き上がる『もう少し生きたいかも』
「今日彼女と冒険してるときふと『こんな日がずっと続けばいいのにな』って考えてしまった」アレな夢
「僕は自分が何をすべきか、一瞬で理解する。僕は、彼女と一つにならなくてはいけない」
作者のひとりごと
ヤミくんは穏やかで思慮深い青年ですが、生い立ちと彼本来の気質のせいで心の闇は深いです。
彼は考えることが好きなのでとても理性的。しかしながら人間は本来、理性と感情どちらのバランスも大事にすべきもの。あまりにも理性偏重だと、心の奥底にしまった感情が暴れ出して制御できなくなることがある。
……ヤミくんの欠点ですね。その欠点が話をおもしろくするわけですが。
ただ「理性的」な彼は、「暴れた感情を秘めた自分」すらも客観的に見ているところがあります。
「僕は彼女を怒らせて楽しんでいるな。彼女から強い感情を向けられると、怒られても嬉しいんだなあ」……みたいに。
でも、この客観視には抜けてる部分がある。
「ホントに、純粋に、怒られて喜んでるの?」ってことです。別の何かを喜びに変換しちゃってません?ってことです。
本来は、「自分を客観視する」直前の段階で心に何らかの感覚が湧き上がっているはずなんですよね。彼は『最初に心に生じたもの』を無視しがち。
さっきの「怒られて嬉しい」の例でいうと……
彼女から怒られる
↓
<不快>(傷ついた・悲しい)←最初に心に湧き上がる感情
↓
なぜ不快?←ここから頭で考える
↓
図星でグサッと来るから
↓
なぜグサッと来る?
↓
彼女が僕にハッキリものを言うから
↓
ハッキリものを言ってくれる人なんて今までいなかったから、言ってくれるのが嬉しい
彼の心と頭の動きが上記のようなものだとすると、一次感情は「彼女から怒られた」直後の「不快・傷ついて悲しい」です。
でも彼はその瞬間に頭でバーーっと色々なことを考えますから、最終的には「怒られて嬉しい」になる。なんなら、「傷ついたことなんてたいしたことないと思い込む」
理屈としては正しいし、本心のひとつではあるけれど、最初に湧き上がった感情は殺されてしまっている。
こういうのが無数に積み重なっていくと、人は解消できないフラストレーションに狂っていくのではないでしょうか。だから彼は静かに静かに狂っているのです。
…………で、そんなこんなで腹のうちにもやもやを溜めた結果、とうとう見ちゃったそういう夢。フロイトでいう無意識に押し込めた性的な欲求不満ですね。
まあでも、好みの女の子と同じ部屋で過ごしてて、ムラムラしないほうがちょっと変だよね。しかも彼はもう少しで死刑になるのに……。
さてさて、夢の最後の彼は何を言おうとしていたのでしょうか?結構シンプルなことだと思いますが、彼はなかなか気づきません。
彼が自分の本心に気づくのはもう少し先の話になりそうです。
最新話へのリンクはこちら↓↓
(これ以下ははじめての方向け)
ここまでのあらすじを箇条書きで
死刑を待つ殺人犯の男「灰谷ヤミ」の独房へ、世界を修復する魔法使い「火置ユウ」が時空の穴を越えてやってきます。
二人は「ヤミが信じている神様の話」「お互いの過去」「好きな本について」などを話したりしながら、仲良くなっていきます。
悲惨な人生のヤミはユウと仲良くなりたいと思っていますが、ユウは死刑を控えるヤミとこれ以上関係を深めるのを躊躇します。
時空の異常を感じたユウは、ヤミと一緒に危険な『旧刑務所』を探検。命からがら逃げ帰ります。
無事に帰ってきた二人の絆はより強くなりました。でも絆が強くなった分、死刑が近づくことがつらくなってきました。
そして最新話に続く↓
「夏休みの夕闇~刑務所編~」のより詳細なあらすじを確認したい場合は、こちらへどうぞ!
第一話から読みたい方はこちらへどうぞ