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会社の新卒採用HPに掲載された話

 少し前の話になるが、僕は会社の新卒採用HPの社員紹介のページに掲載された。
 就活生の時に多くの会社のこのページを見たが、いざ自分が載ると思うと、何か嫌だった。
 そもそも恥ずかしいし、ここに載ってしまうと転職しづらくなるんじゃないか?という懸念もあった。

 三度断ったのだが、最後は自分が入社の際に大変お世話になった人事部の方に頭を下げられてしまったので承諾した。
 所属部長からは「顔で選ばれたんだよ」と言われたが、いや顔で選ぶなよ、と思った。「出世レース有利になるよ」と言われたが、いや出世欲ないわ、と思った。

 とはいえ、選ばれたからにはしっかりやらねば。写真撮影の前には美容院に行き身なりを整え、長文のアンケートとインタビューに答えた。
 メイン写真は、こんなに笑いながら仕事するヤツいないだろ、とツッコミどころ満載な笑顔でパソコンに向かう僕が採用された。
 他にも会社の前で腕を組んで立つ僕、満面の笑顔で電話をする僕、手帳とPCを持って歩く僕がページに掲載されることになった。どれも、日常での再現度は低い。

 いざ、ページがオープンされるとなると、少しソワソワした。特に自分から掲載されることを周囲に言っていたわけでもなかったので、お前仕事中にそんなに笑わないだろ!と多方面からツッコミを受けるのが面倒くさいなぁと思っていた。

 新卒採用HPに掲載されると、こんなことが起こる。

特に何も起こらない

 まさにこれである。人事部以外の社員は、基本的に自社の採用HPに関心がない。だから、見ない。だから、誰も気づかない。だから、何も起こらなかった。
 友人も皆、社会人である。つまり、他社の採用HPは見ない。だから、何も起こらない。
 唯一、僕の妻が両家にHPのURLを送ったことで、すごいねぇと褒めてもらえた。

ヘッドハンティングされる

 これは意外だったのだが、全く他業界の会社からヘッドハンティングされる機会が複数回あった。
 それも、部署の代表電話に電話をかけてくるのだ。内線だよ、と回してもらった電話を取ると、御社の採用HPを拝見しました。是非弊社でのキャリアアップを目指しませんか?と言われた。
 目指すにしても、周りにたくさん社員がいるのに、話を聞くわけにもいかない。仕事中なのでと全て断ったが、7社くらいから電話があった。
 僕の偽りの笑顔に、何らかの価値を見出してくださったのだろうか。

翌年の新入社員の認知度100%

 ヘッドハンティング以外は、約1年間何も起こらなかったので、もはや僕自身も忘れかけていた。
 翌年の4月、新入社員約50名と各部署の若手社員が懇談をする機会があった。またもやそこに駆り出される。
 自分の部署の新入社員は5名だけだったが、他部署の新入社員も僕のことを認知していた。HPみました!HPのあの言葉が印象的でした!と次々に声をかけてくれた。
 ちょっとだけ有名人になったようで、悪い気はしなかった。HPに書いたことはほとんど覚えていなかったので、適当な返事しかできず申し訳なかった。

さいごに

 載って良かったと思うのは、あのページを作成するのにそれなりの予算を使い、多くの人間が粉骨砕身していることを知れたこと。
 売り手市場の現代で、新卒採用って本当に大変だ。もうHPには載らないが、手伝えることは積極的に手伝おうと思った。

 営業の社員は会社で結構な大きい顔をする。自分があげた利益が会社を支えていると思うから。その側面は確かにあるが、僕はそんな風潮が嫌いだ。
 総務、人事、そして経理、飛び道具である我々営業社員を支えてくれる方々がいるからこそ、会社は成立していると思う。



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