見出し画像

魂を浄化する体験~茅原実里オーケストラコンサート『Graceful bouquet』感想

そのコンサートは魂を抜き取られ、心が浄化されるかのごとき体験でした。
人は時折、心身にこびりついた穢れをこうしてすべて洗い流した方がいい。


「Graceful bouquet」について

このコンサートの正式名称は以下の通り。

『TACHIKAWA STAGE GARDENグランドオープニング記念 Minori Chihara ORCHESTRA CONCERT 2020「Graceful bouquet」』

長いので読むときは「グレイスフル ブーケ」で良いと思います。私のnoteでも何度か紹介させていただいております、声優・歌手として活躍中の茅原実里(ちはらみのり)さんが東京21世紀管弦楽団による演奏にのせてご自身の楽曲を披露されたオーケストラコンサートです。

タイトルにあるように、TACHIKAWA STAGE GARDEN(東京都立川市)のグランドオープン記念ということで茅原実里さんがこけら落としを行なわれる公演…ということだったのですが、コロナ禍の関係で2020年5月30日(土)
→2020年11月18日(水)→2021年9月12日(日)と開催が伸び、二度の延期を経て行なわれることとなりました(タイトルが2020なのはそのため)。

画像1

▲アニメイト立川店では「Graceful bouquet」開催に合わせて関連グッズを店頭販売していました。オーケストラコンサートなのでシャツやネクタイといういつもとは異なった品揃えが目を引きます。また同店では茅原実里さんの音楽活動休止前ラストミニアルバム「Re:Contact」を予約するとオリジナルのコースターが特典としてもらえるというセールも展開しています。


「感謝の気持ちを"音の花束"で」

茅原実里さんご本人のブログに「今日は大好きなみんなに、感謝の気持ちを"音の花束"でプレゼントしたいなと思っていたんです。」とあるように、このオーケストラコンサートには本年をもって歌手活動を休止すると宣言された茅原実里さんの万感が込められていたものであったと思います。

聴いたことのある方は分かると思います。「クリスタルボイス」と称されるその歌声は繊細にして清涼感があり、それ自体がひとつの楽器であるように響き渡って聴く人の心に直接染み渡る。ご本人の歌声だけでもそうなのに、それが東京21世紀管弦楽団によるオーケストラ演奏と、音楽監督の大嵜慶子さんによるフルアレンジで、いつも聴いている茅原実里楽曲が壮大な輝きをもった音のオーロラに変わっていく…。

冒頭に書いた「魂を抜き取られた」という表現は誇張でもなんでもなく、あれは本当に私の心の中にあった思考が一時的にすべて消し飛んでしまっていたのです。気付けば演奏と歌声に没頭しきっていた自分がそこにいました。「我を忘れる」とはまさにこのこと。我を忘れたついでに時間が過ぎるのも忘れてしまいました。

画像2

(写真はPHOTO ACより)

ライブ体験も良かったけれど、このようなオーケストラによる没入感もまた良し。茅原実里さんと出会えてこのような音楽体験を生きている間にできた私は、もうそれだけで幸せな人生だったのだと思います。茅原実里さんから手渡された「音の花束」を胸に、これから人生どんなことがあろうとも前に進んでいける、そんな気持ちにさせていただきました。

ファン目線による補正と言われるかもしれません。それは否定できません。しかしこれだけは言いたい。音楽体験にはそれだけの力があり価値があるのです。どれだけ言ってもこればっかりは、その場に行って聴いてもらわないことには伝わらないのですが…。

<参考>
茅原実里さんが2015年に行なったオーケストラコンサート「Reincarnation」のライブBlu-rayダイジェスト動画を貼っておきます。せめて雰囲気だけでも伝わればと思います。


楽曲について(いくつかトピックス的に)

当日のセットリストは次の通り。

01:Love Blossom
02:雪、無音、窓辺にて。
03:優しい忘却
04:月の様に浮かんでる
05:Hopeful“SOUL”
06:エイミー
07:会いたかった空
(休憩)
08:雨上がりの花よ咲け
09:PRECIOUS ONE
10:暁月夜
11:境界の彼方
12:みちしるべ
13:純白サンクチュアリィ
<アンコール>
14:ひとひらの願い
15:花束

「休憩」という時間があるのも今回の特徴。また今回は茅原実里さんのMCが少なく、もっぱら歌うことに集中されていた模様でした。少しでも多くの曲を届けたいという想いにてそのように構成されたのだと思います。

セットリストをあらためてみると、アニメ関連の曲が結構ありますね。

『涼宮ハルヒの憂鬱』関連:「雪、無音、窓辺にて。」「優しい忘却」
『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』関連:「エイミー」「みちしるべ」
『境界の彼方』関連:「会いたかった空」と「境界の彼方」

茅原実里ファンみならずアニメが純粋に好きな方にも刺さるコンサートだったと言えるのではないでしょうか。

個人的な思い入れをいくつか…。

「雪、無音、窓辺にて。」。作中の長門有希のキャラクターソングであり、そのキャラ性格からデジタルチックな楽曲なのですが、「これオーケストラにするの全然ありじゃん!」という気持ちになりました。長門有希の背後に銀河が見えるよ…。

「優しい忘却」。前半部まさかのアカペラ。ファンはみんな知っていることですが、茅原実里さんアカペラで歌ってもすごいのですよ。いつも私が使う表現ですが、心に直接届いて染み渡るのです。まさに癒しの歌姫です。

「Hopeful“SOUL”」。サマチャン2021で「希望の歌」と茅原実里さんご自身が仰られておりました。歌詞を見ると分かるのですが、かなりハードな生き様というか、魂の叫びというかが込められた楽曲です。その激しさはオーケストラになってさらに迫力を、そして熱量をあげて蘇ってまいりました。まさに熱い希望の“SOUL”です。

「エイミー」。やはり泣きましたね…。私の中で「永遠と自動手記人形」に出てくるあの姉妹はやはり永遠です。荘厳な調べの中に響き渡るみのりんの優しい歌声が心に刺さります。この涙がきっと私の中にあるいろんなものを流し落としてくれたんだろうな。

「暁月夜」(あかつきづくよ、と読みます)。とても印象に残っている楽曲ですが、生で聴くのは初めて。歌詞の読み取り方によって解釈は多々ありましょうが、叶わぬ愛に対する女の情念がこれでもかというくらい込められた内容で、茅原実里さんをアニソンでしか知らない方はこんな歌も歌っているんだと知って驚かれるかもしれません。これもオーケストラになって想いの激しさが際立ったと思います。見せ場であるストリングスの部分がピアノになったことについて演奏後に様々な意見が飛び交っていたのを伺いました。私的にそれについて思うところはあるのですが、これはもう誰が何と言おうとそれが今回音楽監督である大嵜慶子さんが決めた世界ですので、私が何か言うのは差し控えたいと思います。

「純白サンクチュアリィ」。私的にこの曲が一番「アレンジされて原曲から別物に変わった」という印象を受けました。こういうのが味わえるのもオーケストラコンサートの醍醐味ですね。原曲の疾走感あるサウンドもいいけどこれもまた良しです。アレンジャーによってひとつの楽曲が様々な顔を見せてくれる好例。音楽は深いなとこういうのを聴くと感じます。

「ひとひらの願い」。私の中で今回のオーケストラコンサート全部の中で最も感動した一曲。私自身がほとんど毎日一度くらいどこかで聴いているほど大好きな曲で、私の背中を押し、励ましてくれる人生の応援歌です。私的な思い入れに根差す部分が大きいので、万人に私の感動をそのまま押し付けることはいたしません。でも、誰しもそんな音楽がひとつくらい、自身の心の中にあるのではありませんか?

そしてラスト曲が「花束」ですよ…。「花束を歌おう」。もうまさに今回のオーケストラコンサートのコンセプトそのものではありませんか。「音の花束」をしっかり受け取りました。みのりんありがとう~!!!♪♪♪

画像3

(写真はPHOTO ACより)

コロナ禍における感染対策について

コロナ禍でのコンサートです。参加者各自が対策することは必需ですし、会場側からもマスク着用に消毒といった基本的なものから「場内での歓声は控えるように」とのアナウンスがあったはずです(と思ってネットで検索したのだけれども出てこない…でも会場では間違いなくそのようなアナウンスをしていました)。

これも多くの方が言われていることですが、茅原実里さんのファンは総じてマナーレベルが高い!

今回の「Graceful bouquet」にしても、皆がその開催に心から感謝し、故に自分たちがそれに応えなければならぬと気を引き締めた結果なのでしょう。会場内は文字通り水すら打ってないかの如き静けさに包まれておりました。演奏者も、そして歌い手である茅原実里さんも「さすが宇宙一のファン!」と安心してパフォーマンスに専念されたのではと思います。

どっかのノーマスクで騒ぎ散らした音楽イベントの参加者はこういうのを見て己が身を恥じてほしいですホントにっ!!(長野アニエラがあんなことになったの、半分くらいお前らのせいだと思ってるからね?)


オーケストラ体験への誘い

いやはや、ライブも良いけどオーケストラも負けず劣らず良いですよ。両者は勝負してるわけじゃないので、そういう表現が適切かはちょっと分かりませんが。

ところで多くの皆様は「オーケストラ」って言うと、学校の課外授業で行かされたあれ?的なものを想像するかもしれません。それはきっとクラシックコンサートです。先日私のnoteで紹介した「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」オーケストラコンサートのように、いまはアニメやゲームなど我々に身近な音楽を題材としたオーケストラコンサートがたーくさん開催されているのですよ!(だいたい略して「オケコン」と呼ばれています)

ライブも良いです。あの「音に包まれ感」や「会場みんなと作る一体感」は何物にも代えがたい貴重な音楽体験です。が、オケコンはまた違った意味で良い!!それは「壮大な世界に飲み込まれる感覚」と言えばいいのかな…。上手く表現できないのですが、そこに居ると魂が浄化されるような気がするのですよ。よく言われる「心が洗われたようだ」ってやつです。いや大袈裟でなく、本当にそのくらいの圧倒感があるのですよオケコンには。

画像4

(写真はPHOTO ACより)

その荘厳な演出は管楽器、弦楽器をはじめとする各楽器の物理的数量が可能たらしめている部分もあるのでしょう。また指揮者が存在し(今回はピアニストが指揮者を兼ねてましたが)、全体の統制を取ることにより整った演奏を創り上げるという効果もあるのでしょう。ここらへんは音楽素人があまり軽々しく発言すべくところではないのかもしれません。

でも伝えたいんです。オーケストラは素晴らしいんだよってことを。

学校の音楽授業や音楽鑑賞教室によって「オーケストラはちょっと…」ってなっちゃってる人は多いとよく聞きます(そういう方の多くはクラシックとオーケストラの区別すらついてなかったりします)。

原体験が学校の勉強で、それが強制力を伴ったものであるがゆえにこうした素晴らしい音楽体験から背を向けることになってしまった貴方に言いたい。「世の中には貴方の好きなオーケストラだってきっとあるんだよ」っていうことを、声をオーケストラくらい大にして伝えたいのです。


貴方が最後に「オーケストラ」なる呼称の付くコンサートを聴きにいったのはいつですか?
それが学生の頃なのであれば、貴方は人生を終える前に、せめてもう一度、ご自身の好きな題材のオーケストラコンサートを聴きに行ったほうがいいと思います。

身体を毎日洗っているように、心を音のシャワーで洗い流すことも人生には必要なのですよ。きっと。


*** 宣伝! ***

年内で音楽活動を休止すると宣言している茅原実里さんの休止前最後の音楽作品『Re:Contact』が2021年11月18日に発売されます。豪華版には茅原実里さんの音楽活動の軌跡を収録した映像集「Message05」が付属します。予約特典などもありますので、購入ご検討されている方はお早めに!!

*** 宣伝! ***

2021年に茅原実里さんが行なったライブ「SUMMER CHAMPION 2021」と「Graceful bouquet-」がセットになったBlu-ray Discの発売が決定しました!しかも2つで12,100円(税込)というなかなかのお値打ち価格です(普通はライブBD1本で8,000円~とかですからね)。店舗ごとに予約特典もありますので、欲しい方は下記ページをチェックして要予約!!


この記事が参加している募集

イベントレポ

思い出の曲

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?