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木陰はなぜ涼しいの?植物の冷却効果についての知識のタネ。

 建物や構造物の日陰より、木陰のほうが涼しいと感じたことはありませんか?実はその理由には、植物たちが暑い夏を乗り切るためのしくみが関係していました。

~蒸散と対流~

 木陰が涼しい理由として、「蒸散」「対流」という2つの要因があります。

 まず「蒸散」とは、植物が根から吸収した水を、茎を通って葉から蒸発させることを言います。植物は主に「光合成」と「蒸散」に水を使いますが、健全な樹木の場合、蒸散される水の量は光合成の約100倍にもなると言われています。

 このように多くの水を葉から「蒸散」させているわけですが、この「蒸散」には、水が液体から気体に変化するために必要な熱エネルギーで、葉の周辺の空気の熱を奪う(蒸発熱、気化熱)効果があります。気温が40℃あるときでも、葉の表面温度を25~30℃と低く保つことで、正常に光合成をおこなったり、葉焼けを防いだりと植物は暑い夏を乗り切っているのです。

 植物が生きるためのこの効果を受け、人間も周りより木陰が涼しいと感じるのです。

 これが「蒸散」による葉の周辺の空気の冷却効果です。



 もう1つは「対流」です。これは「蒸散」と関連しています。
 「蒸散」により葉の周辺温度が低くなるということは、木の内部の空気の温度は高くなります。すると暖かい空気は上昇し、冷たい空気がそこに流れ込むという温度差による空気の「対流」が生まれます。この「対流」が木陰に吹くそよ風の正体です。

 「対流」によるそよ風を受けると体感温度が下がり、より木陰が涼しく感じるというわけです。


 以上、「蒸散」と「対流」の2つが木陰が涼しく感じる理由でした。この効果は、そこにある木の数や木の種類、木の健康状態などにより変わりますが、日向に比べて4~6℃も下がると言われています。

 

 このような効果は、快適な人間の生活のためや、ヒートアイランド現象を緩和させるために有効な手段として注目されています。人間だけでなく、都市レベルの冷却効果も期待できるという、植物のすごい能力がわかります。われわれ人間は、知らないうちに植物から恩恵を受けているのですね。


いかがでしたでしょうか。明日から木陰を探して歩いてみてくださいね!


追記:夏の直射日光が当たっているものには熱くて触れられませんが、盛んに蒸散している葉はひんやりとしています。そう思うと、植物の蒸散による冷却効果がとても高いことがわかりますね。機会があれば、葉に触ってひんやりするのを感じてみてくださいね!


参考文献
「最新版 最高の植栽をデザインする方法」29-30pp ㈱エクスナレッジ
堀 大才 「樹木学事典」63.77pp 講談社


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