お前も同じ闇の一族だ
俺たちの影は皆同じ方向を向いている。
一族の闇だ。
道兼(玉置玲央)のゼリフにぞっとするような韻が含まれていましたね。
同時に道長(柄本佑)は父がすべてもみ消していたことも聞き、リアルな一族の「闇の深さ」を知ります。
道兼は一族の泥かぶり役を意志を持って、自ら担っていることを宣言しながらも、
「お前だって同じ一族の人間なんだからな。」
と、念を押しているようでもありました。
ドン兼家(段田安則)も悪ブレることなくアッサリ認めてしまい、道長も心中では、なんとなく予想していたものの「ハイ、確定!!」という感じでしょうか?
道長は目が覚めたのでしょうか?
兄の道隆(井浦新)に、藤原義懐(高橋光臣)一派である藤原公任(町田啓太)、藤原斉信(金田哲)らに兼家ファミリー(右大臣家)を中央から排除しようとする動きがある事を報告します。
そして、
お上はどなたがなっても同じだが、周りでお助けする人間によって変わる。
あの二人なら、父上の方がマシだ。
(セリフは違うかもしれないが、こんな意味の事を言った)
はい!道長くんもダークサイド確定です。
道長の覚悟を見た「漢詩の会」
道隆(井浦新)は、父・兼家とは違うやり方でゆくと言い、妻の貴子(板谷由夏)の提案により「漢詩の会」を開催することになります。
道長と、父・藤原為時(岸谷五郎)のおともで参加したまひろとのまさかの出会いが描かれ、始終、視線が絡む二人は印象的でしたね。
確か、道長は参加しないと兄には告げていたのに、なぜ参加したのでしょう?
それは自分が「闇の一族」の一員だと覚悟したのではないでしょうか。
それまでの彼なら、まひろの母を殺害したのが実兄の兼家で、その司令塔が父の兼家であったとしても知らん顔していたのかもしれません。
しかし、熟考した結果、すべてを受け入れたという答えが「漢詩の会」への参加だったと思われます。
✨藤原道長の書体は自由でのびやかだった
そして道長の漢詩の意味は、
まひろはこれに感動したのか、目が潤んでいたのを私は見逃しません。
NHKの「をしへて! 根本知さん ~漢詩シーンを彩る男性貴族の書」によるとちらりと映った書体は演者・柄本佑さんの直筆だったそうです。
実際に道長が遺した「御堂関白記」の書体も達筆とは言えず、自由闊達な書で綴られており、間違えた箇所には二重線どころか真っ黒に塗りつぶした所も見受けられ、見栄えなどまったく気にしていないようなのです。
しかも内容は簡潔で、誤字、脱字、当て字などが散見し、文法的にも誤りが多いのをみると、「ま。いっか。」というような道長の形式にとらわれない大らかさが全面に溢れているそうです。
ダークなイメージの濃い道長ですが、意外と少年期の純朴さは生涯持っていたのかもしれません。
✨道長の猛烈アタック!?
そして夜半に届いた道長の手紙の歌に驚きを隠せないまひろでした。
ちはやぶる 神の斎垣も 越えぬべし
恋しき人の 見まくほしさに
~私は、越えてはならない神社の垣根も踏み越えてしまいそうです。恋しいあなたにお会いしたくて~
「伊勢物語」中の歌を一部変えたもの
(大宮人の⇒恋しき人の)
「ちやはふる」と言えば、末次由紀さんのコミックや広瀬すずさん主演の映画しか思いつかない私ですが、実は直訳すると「猛々しい」や「荒々しい」という意味で、この場合は次の「神」に付く枕詞であり修飾語なのです。
要するに、この歌は誰もが知る有名な歌の替え歌であり、
「あなたを激しく思っている」という超ストレートな歌なのです。
右大臣・源雅信(益岡徹)の一の姫・倫子との縁談話も浮上する中、一族の「闇」も知ってしまった道長くん、どうする?
陰のまひろ VS 陽のききょう
「胸が高鳴りますわ。大いに楽しみましょうね、まひろ様。」
馴れ馴れしいほどの明るさを見せるききょう(ファーストサマーウイカ)に一瞬たじろぐまひろでした。
これが後世、紫式部、清少納言と呼ばれた二人の出会いという設定です。
さらに「漢詩の会」では、まひろが述べた感想に、「私はそうは思いません!」と真っ向から反論して持論を唱えたあと「そうじゃございません?」
と同意を強要してきました。
このキャラの違いはどうなの??
✨「もののあはれ」と「をかし」
実際に二人の性格はどうだったのかは、それぞれの作品にも見られるようです。
「源氏物語」には「もののあはれ」
すなわち、しみじみとした哀愁めいた趣向。
「枕草子」には「をかし」
感覚で物事を興味深く捉え、明朗に表現。
彼女たちそれぞれの作風からも二人の正反対の性格がにじみ出ています。
実際、彰子の教育係となる紫式部(まひろ)は、人目に付かないところでこっそり講義をし、一方、定子の教育係の清少納言はおおっぴらに目立つところで講義していたそうです。
結果的に、彰子サロンは静かで上品、定子サロンは明るく華やかで、それぞれのサロンの雰囲気も正反対でした。
二人がここで初対面したのは創作で、会ったことがない確率の方が高い。
しかし、間接的なライバルとして意識していたのは確かであり、残された史料から見ると圧倒的に紫式部の方が清少納言を意識していたことが伺われます。
その場で言いたいことをあっけらかんと言うききょう、
言われてもいったん飲み込んでしまうまひろ。
この二人の「陰」と「陽」の正反対の人間性は、ドラマ通りだと言えそうです。
今後の伏線回収が楽しみ
✨花山天皇の退位
花山天皇(本郷奏多)の女御、藤原忯子(井上咲楽)が17歳という若さで崩御しました。
彼女は藤原為光(阪田マサノブ)の次女で、花山天皇から切望されて入内し、寵愛が過ぎたことが、妊娠中の身体に障った事が死因ではないかとも言われています。
さて次週はまた兼家(段田安則)一家の「裏家業」が発動しそうです。
感情的になる花山の気持ちに付け込んで、次男の道兼(玉置玲央)が暗躍するはずです。
史実は変わらないでしょうが、大石さんの脚本はどのように展開させるのか見ものです。
✨直秀(毎熊克哉)の正体は?
表向きは「散楽」のメンバーですが、かなりの事情通で、いつも道長とまひろへ適格な助言や手助けをしてくれていましたが、今回は「盗賊」の一員として、警護中の道長に弓を射られて負傷しました。
彼の正体は誰?
それとも物語を円滑に進めるための架空の人物なのでしょうか?
確かに大河ではしばしば架空の人物を登場させて、曖昧な部分を辻褄が合うように脚色しています。
例えば2020年の「麒麟がくる」の駒ちゃん(門脇麦)や伊呂波大夫(尾野真千子)です。
そもそも主人公の明智光秀(長谷川博己)が謎だらけなので、史実確認が難しいため、ストーリーを展開するには必須の存在でした。
今回の直秀も道長とまひろの関係のみならず、貴族と庶民の格差を描くには必要な人物なのかもしれません。
密かに直秀の身分が判る日が楽しみでもあります。
演者の毎熊克哉さんは昨年の「どうする家康」の「弥四郎」役に続き連続出演です。
しかもかなりの熱演を見せ、私も感情移入してしまったのも記憶に新しいところです。
私は「少年虎次郎」で初めて知ったのですが、毎回なかなかの演技力に心打たれます。
今回も感動的な演技を見せてくれるのではないかと、期待を寄せています。
↓↓↓こちらで毎熊さんに触れました
【参考サイト】
・平安時代の女流作家 清少納言と紫式部
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