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夏休みの宿題(作文と読書感想画)の思い出と、地理的思考の話

 今回は、中学生の頃に夏休みの宿題になっていた作文と読書感想画について書いてみます。私は、文章を書くことが苦手でした。本を読むのも得意ではなく、夏休みの宿題の中でも作文は私にとってなかなかの天敵でした。そして、中学生の頃の宿題だった読書感想画も、まず本を読んでから描かなければならないので、かなり後回しにしていました。今回はその頃を振り返りつつ、経験が思考に結びつくことについて考えます。そして、それが地理的思考についてもいえるということを書いてみます。

 今思い返すと、作文や読書感想文が苦手だったのには理由があると思います。まず、そもそも本を読む習慣がなかったことです。実家は本を読むような家族ではなく、家に本棚らしい本棚もありませんでした。そして、学校でも図書室に通うような生活はしていなかったので、あまり本を読むことに慣れていませんでした。

 そんな私がある程度の長さの本を読んだのは、夏目漱石の『吾輩は猫である』でした。確か中学校3年生の頃で、書店で文庫版を買って読んだと思います。考えてみればおそらく初めて買った小説でした。

 そして、一日に30ページずつというような目標を決めて、コツコツ読みました。内容はそこまで理解できたか分かりませんが、不思議に思うことや、面白いと思うことなどがいくつかあり、読むのが楽しいと感じる経験だったと思います。大学時代に塾の生徒に貸して、そのままあげてしまったので今は手元にありませんが、厚い本を読み終えた経験は大きな達成感でした。

 中学生の頃の宿題は「読書感想文」ではなく「読書感想画」だったため、読み終えてから絵を描きました。あまり詳しく覚えていませんが、猫の飼い主だった苦沙弥先生の知り合いでたまに家に来る学者の先生が、熱心にガラス玉を磨いているという話があって、とても不思議に思ったので、ガラス玉の絵を描き入れました。他の印象に残ったこともいくつか入れて、絵に描いたと思います。

 その経験のあとは、夏目漱石のことがなんとなく好きになって、『坊っちゃん』なども読みました。登場人物が偏屈な感じで、その偏屈さが好きだったと思います。

 作文にしても読書にしても、経験がその後の道筋を作ると思います。好き嫌いだけが原因ではなく、そもそも経験が少ないことで、どのようにすればよいかが分からないということです。今となっては毎日1000字程度の文章を書くのは何の苦でもありませんが、あのころは作文で原稿用紙5枚(2000字)というのが果てしない道のりに感じられて、本当に大変でした。

 日常的な経験でも、考えや感想を言葉にすることがあまり得意ではなかったと感じます。小学生の頃に日誌のようなものを書いても、「良かったです」「楽しかったです」「おもしろかったです」で終わる語尾以外にどのようなことを書けばよいのか分かりませんでした。きっとそのときは、「なんて・・・なんだろう!」と感動することもたくさんあったのですが、それを言葉にする方法がなかったのです。

 これは、地理的思考についても同じだと感じました。「地図が苦手」、「地理は暗記だから嫌いだった」といった言葉を聞いても、その人と対話するなかで、地域を楽しんだ経験、土地と土地の違いに驚いて感動した経験などは、たくさん持っていることを知ることがあります。ただ、そうした地域への関心、地域的差異への注目、様々な地域の生活にふれることによる感動が、地理とは結びついていないことが多いようです。

 地理(地理学)には、地域を理解する言葉や視点が、しっかりと蓄積されています。地域的差異への注目や、様々な空間スケール、空間と場所などの視点です。地理の視点から語る、説明する方法が身に着くと、世界を語ること、説明することがとても楽しくなります。また、災害や社会問題をニュースで目にしたときも、その背景となる地域との関係を考えることができるようになります。

 私は、地理的思考が色々な人の生活や創作などを豊かにする可能性があると期待しています。地理的視点で考えることで、こんな見方があったのか、こんな表現ができるのか、といった感動を経験することができます。特に、noteで文章を書いていることを考えると、何かのかたちで創作や芸術関連の人たちにも、地理の魅力が伝わればいいなと思います。

 今回は思い出話が大半になってしまいましたが、地理の視点とはそもそもどんなものか、分かりやすく伝えるための文章を、これからも書いていきたいと思います。暑い日が続きますが、皆さん体に気をつけて過ごしてください。

(余談)私はヘッダーも自分で描いたものか自分で撮影した写真にしたくて、毎回記事を書いたあとにバタバタと画像を準備していましたが、ヘッダー用の画像を作ると楽ですね。

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