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九官鳥

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2020年6月の記事一覧

九官鳥(7)

八十日目(体内時計の風景)

あたしがあんまり良く思っていない東側の窓から、朝日がスーッと音もなく忍びこんでくる。
少し時間がたつと壁に取り付けられたアラームがけたたましい音を立てて唸りだす。
[リンドウ]はアラームに素敵な笑顔を添えて、勢いよく飛び込んでくる。
「[先生]おはようございます!!」
「今日も元気だね」と、伝える。
ここ数日の朝は、こんな感じで始まっていく。
[リンドウ]は、朝の挨拶

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九官鳥(6)

七十日目(癖のある風景)

「いいかいよく聞いておくれよ。まずね、話の出だしに謝るのをやめにしてもらえないかしら?あまり良いことではないよ。そういう癖はね。ここにきてあなた達人間を色々観察させてもらったのだけれど、自信のないときにはきまって直ぐにあやまる。本当に謝らなくてはいけない時だってきっとあるだろう。そんなときどうするんだい?いつでもなんでもペコラペコラと頭を下げている者の謝罪って安っぽく感

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九官鳥(5)

六十四日目(輝ける風景)

「あなたには、あたしのことで迷惑をかけたようですね」あたしの話に少し紅い髪の人間は、首を横に振っているだけ。
「どうかしたの?」そう聞いてもその様のままだった。
「すみません。どうもしません。大丈夫です…」
「どうもしないということは無いでしょう。あなたの様子は、明らかにおかしいよ」
少し紅い髪の人間は
「あの。すみません。うれしいのです。あなたとお話ができることが。だ

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九官鳥(4)

六十三日目(鐘が鳴る風景)

「[お金]?それについて、あなた方は聞いているの?[お金]?[紙幣]?[通貨]?あたしたちには概念自体のないものね。あなた方の言う[お金]って言うのはどんな仕組みなの?」白い服の人間たちは私の大好きな窓の前でしかめっつらをもっと醜い顔へと変えていく。
彼らは扉の外へ出ていくとやいのやいの言っている。
しばらくすると再びあたしの前に現れ、そこでその続きを始める。
やいの

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