地域活性化論#3 社会課題解決も結果にコミットする時代だ。社会にいいことをして稼ぐ仕組みとはー実践編ー

「事業を通して社会課題を解決する」
「活動を安定して続けるために、お金が回る仕組みをつくる」

経済的利益を目指してきた企業は社会的利益も大事にするように、社会的利益を目指してきた行政や地域団体、NPOなどはより収益性や効果も大事にするようにシフトしてきたように感じる。
また、より社会的価値の高い事業に投資したい人や事業者も増えてきている。

前回の記事ではそのような事業を組み立てるフレーム、ロジックモデルを紹介した。

それをどうやって実現するかが、多くの人が知りたいところだと思う。
この記事では、行政と民間がそれぞれ得意領域で分担しあって社会課題解決にコミットしていく仕組み「ソーシャルインパクトボンド」を紹介する。

そもそも、官民連携とは

民間のリソース(ノウハウ、資金、人材など)を使うことで、公共サービスの質や効率性を上げようとする流れが1990年代以降、主流になりつつある。
官民連携の背景や概論はこちら

ソーシャルインパクトボンドって?

ソーシャルインパクトボンド(SIB)は、2010年にイギリスではじまった、民間資金を活用した官民連携による社会課題解決の仕組みだ。ロジックモデルを使って、民間委託で事業を広げていこうという取り組みの中で生まれた。現在、ソーシャルインパクトボンドは「成果連動型民間委託契約」のひとつとして実装されている。(出典:https://www.sib.k-three.org/8)

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ソーシャルインパクトボンドは投資に近い。売り上げを直接目指すことはなく社会的利益(社会課題解決)を最終的な目的とするものではあるが、リターンや効率はしっかり求めてよい。社会へのインパクトに対して報酬が支払われるものだ。社会的投資の一つと考えられる。

これの何がユニークか、通常の民間委託と比べてみる。

通常の民間委託との違い

通常の民間委託の場合、担当してくれた事業者に対し成果に関わらず経費を払うものと、目標を達成したときに成果に応じて経費を払うものとがある。前者の場合、目標を追うことに妥協してしまったり、後者の場合、事業の成果を測って経費が支払われるまでに数年かかることがあり、事業者の負担が大きかったりする。

ここで、ソーシャルインパクトボンドの場合、資金調達をしてくれる民間事業者が登場する。

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事業を行うサービス提供者は民間から資金を調達し、行政と合意した成果目標を達成できたら、行政が資金提供者/サービス提供者に成果に応じて報酬を支払う

ソーシャルインパクトボンドが活躍する場面

「成果目標をどれくらい達成できたか」で事業の評価をするわけだから、仕様書の内容から事業内容が変わってもいいわけだ。だから課題が複雑な場合や、地域や事業者によって成果のばらつきがある場合、また事例やナレッジが蓄積されていない分野に関しては、サービス提供者が制約なく事業を改善しながら進められる。そうやって成果を出すためのナレッジが貯まっていくと、行政が業務内容をある程度固めることができる。そうしたら今度は地域や事業者によるばらつきを少なく、民間委託によるサービスを提供できるようになる。(出典:https://www.sib.k-three.org/blog/fcf83b41be9)

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つまり、まだまだ未開拓な分野に関しては民間に大胆にお任せして、成熟してくるにつれて行政が関わったり決めたりする比重を増やしていくというような分担をしているというわけだ。分野が未成熟なうちは、有効な手法を探したり改善したりするのが優先なので、民間の得意領域。分野が成熟していくと成果を可視化したり、事例を制度として広く実装したりするのが優先になるので、行政の得意領域。

東近江市の事例

では、実際にどんな風に実現されているのか、東近江市の事例を見てみる。

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東近江市は地域活性化のために、地域に根差したビジネスの立ち上げをサポートしている。いわゆるスタートアップ型の補助金事業。2016年度から成果目標が達成されたときにのみ補助金を支払う成果連動型補助金に切り替えた。事業を立ち上げたい個人や企業と行政の間に「株式会社プラスソーシャルインベストメント」が入って資金サポートをしている。それだけでなく、成果が出るように事業の内容もサポートしている。市民やほかの事業者の側は、サービスを応援する側として、出資者として関わることもできるようになる。すると地域にある課題が広く知られるようになったり、自分ごととして関わる人も増えたりするのだ。すばらしい。

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プラスソーシャルは社会的投資をどんどんと進められているので、ぜひサイトを見てほしい。代表のお二人が社会的投資について語ってくださっています。


もっと広げていきたいソーシャルインパクトボンド。実施する上でのポイントとして、事業に関わるいろんな主体が払う/受け取るお金が評価によって左右されるので、ちゃんとした評価を担保するのが大事になってくる。独立した評価機構に評価を任せるのもひとつ。また、事業者が成果を達成できるような管理・サポート体制も充実させていけたらいいと思う。

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