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博報堂を退社して、中国/上海でMBA留学。世界5位*のCEIBSに懸ける期待(と実態)

今回、30代半ばにして大手広告会社を退社して、中国のMBAに留学することにしました。そこに至るまでの経緯をまとめましたので、ご興味ある方はご一読ください。メッセージが届くと良いなと思っている対象は以下のような方です。

A)中国ビジネスに携わっている/興味のある方
B)キャリアに迷ってる方で、海外(特にアジア)に興味がある方
C)大手広告会社の若手(ニッチですがw)

サマリ
1. 博報堂を退社して、中国のMBAに留学します
 1-1. 退社に至る経緯
 1-2. アジア首位、世界8位のMBAコース@上海へ
2. 留学動機について
 2-1. 矛になる
 2-2. 勝てる場所で勝つ
 2-3. 学びの価値が増している
3. 補足、雑感
 3-1. 現代版・遣唐使
 3-2. アメリカ移民だった曽祖父
 3-3. EstablishmentとStartupを結びつけるプロマネ機能こそ代理店の価値


**1. 博報堂を退社して、中国のMBAに留学します **

1-1. 退社に至る経緯
* 8/31を以って博報堂を退社いたしました。
*  東京勤務、北京駐在を通じて本当に様々な経験を積ませていただき、素敵な出会いにも恵まれて充実した時間を過ごすことができました。
* 博報堂も、そこで働く仲間は今でも大好きです。(ここ大事)
* このまま、安定した環境で気心知れた方々と仕事をしていくことができればとも思いましたが、中国におけるテクノロジーの発展、ビジネスモデルの変革のスピードを目の当たりにして、たとえ同じマーケティングというフィールドで働き続けるにしてもこのままでは確実に競り負ける。
* そう感じて、一度、中国のど真ん中に飛び込むことを決意しました。

1-2. 世界8位、アジア首位のMBAコース@上海
* 中欧国际工商学院(CEIBS=シーブス)という、EUと中国政府が共同設立したビジネススクールでキャンパスは上海になります。
* 嘘か誠か、Financial Timesのランキングで世界8位、アジアでも1位の伸び盛りのスクールです。 (更新*2019年は5位になってました)

* ご参考までに、最近以下のような記事で紹介されていたので添付いたします。
* https://www.sbbit.jp/article/cont1/35345
* http://www.ceibs.edu/mba (HPはこちら)
* 中国の上場企業社長のうち、8%はここのMBAスクールの出身とのデータもあり、ネットワーキングが主な目的となります。

* 毎年1-2名しかいなかった日本バックグラウンドの学生ですが、昨今の「中国テックすごい」論の影響も手伝ってか今年は9人が入学しました。
* 同級生それぞれ確たる目的を持って中国に挑む頼もしい方々ばかりです。
* 私自身も駐在期間の2年半、中国の良いところもそうでないところも、冷静に観察してきました。
* その中でやはり、強大で、複雑で、時に厄介で、でも魅力的な隣国と上手く付き合っていく術を学ぶために、一度会社の枠を超えて挑むことにしました。

2. 留学動機について

2-1. 矛になる
* 広告業界、元気ないです。どんどん若手が辞めています。成長できる場所と感じられない職場になっているのかもしれません。
* 今回、退社しますが需給が折り合えばいずれ戻って、もっと楽しく、もっと刺激的な仕事ができる場所にできたらと思います。
* とはいえ、SNS/リテールのプラットフォーマー、ITコンサルに市場を奪われる中、我々も領土を広げないと勝てない、特に、テクノロジー*マーケティングの領域において武器を持たないと勝てないと痛感します。
* そんな環境下、会社/業界の中にいようが外にいようが、既存の領域を突き抜ける「矛」になる志を持つことが大切です。
* では、自身のキャリアを振り返った時に、どの領域を拡張することができるかと考えた時に、New RetailとMartechの「実践」が最も進んでいる中国に学ぶことが必要だと考えました。
* 事実、北京での駐在2年強の間に、アド・テクノロジー領域で中国の新興企業のサービスを日系のお得意先の事業課題向けにカスタマイズして提供するということを実践してきました。
* でも、まだまだ圧倒的に足りない。やはり中国のど真ん中に飛び込んで彼らの圈子(インナーサークル)の中に入り込んで学ばなければ、エグゼキューションにも結びつかないと痛感しました。
* 会社の中で実現ができないのであれば、外に出る(矛になる)というのが一つの決意です。
* *誤解のないように申し添えておきますが、会社からはパートタイムでの進学を勧められましたが、私自身が業務との両立が難しいと考え、辞めることにしました。博報堂は従業員思いの、超・良い会社です。*ここも大事(笑)

2-2. 勝てる場所で勝つ
* 「勝てる場所で勝つ」北京で出会った、とある会社の経営者の言葉です。競争相手の多い市場よりも自身が一番、価値発揮できる場所で戦おうと決めました。
* 私自身は、もともと純ドメです。入社当時は英語も中国語もまともに話せませんでした。
* 色んな方にチャンスを頂戴して、グローバル業務に携わることになりました。
* その中で痛感するのは「アジア市場の大切さ」
* 特に、コミュニケーションを生業にする者として、通底する価値観のあるアジアの国々とのつながりを深めることが一つの筋道だと感じています。おそらく(僕のバックグラウンドでは)欧米だと文化や教養のスタンダードが違いすぎるので、勝てない。だから中国であり、アジアという考え方です。(そのアジアも甘くはないですが)

2-3. 学びの価値が増している
* 月並みですが、リンダ・グラットンの「LIFE SHIFT」の中にあるように、我々の世代は生涯ほぼ現役であることを迫られるでしょう。
* あと40年以上働くと仮定すると、既存の知恵の価値が逓減していく中、学びの価値が上がっていると感じます。
* この年齢でフルタイムで勉強すること、ネットワーク構築に専心することにどれだけ価値があるかと心配して、疑念を呈してくださる先輩方がいたのも事実です。
* とはいえ今までのキャリアを振り返ってみて、プラニンングシステム開発にしろ、統計にしろ、プロマネにしろ、キャリアの要点で都度学んできたことを確実に成果に結びつけてきたという自負があります。
* また、テクノロジーやビジネスモデル、という点では自分よりも若い人から学ぶ機会が一層増えていると感じます。
* その点、今回も1年強の学びの期間を無駄にせず過ごして、証明するしかないと感じています。

*スクールから奨学金を頂戴しました!


**3. 補足、雑感 **

3-1. 現代版・遣唐使*
* 古来、遣唐使よろしく中国から学ぶのが当たり前だったと思います。最近北京の国家博物館に行く機会がありましたが、歴史観が表れていて興味深かったです。館内に中国の歴史を展示しているのですが、古来〜近代までの3,000年と、近代の150年が全く別の展示場所で、でも同程度の展示スペースが割かれているのです。
* つまり、中国にとっては近代の150年が異常であるという認識を示します。常に超大国としてアジア・ユーラシア大陸に君臨し続けた中国が、(彼らの認識では)たまたま近代にこけたのは、屈辱の歴史であり、今に至るまでの発展は「再建」の道程であるという歴史観です。
* 思い起こせば、近代に至るまで、日本は中国から、先進的な文化を学び、持ち帰ってきたという側面があると考えます。それが、近代の急激な自国の発展に伴い、素直に学び合うという姿勢が薄れてしまっているのかもしれません。(少なくとも着任前の僕はそうでした)
* 昨今の「中国すごい」論は、150年超の時間を経て「常態」に戻ったということなのかもしれません。とはいえ、中国に内在する問題は深刻ですし、経済状況もバブルであることは論を待たないと思います。加えて、日本企業がどこまで市場に食い込めるかどうか、という問題もあります。
* それでも、学ぶべきものはある、それを誰かがやらないといけないのなら、自分がどこまで出来るか試してみたい、という考えます。
* 少しでも持ち帰られるものがあるように、それも日本にアジャストして、より良いものにできるような力が養えればと考えています。帰国の折に船が難破したら、骨は拾ってやってください。

3-2. アメリカ移民だった曽祖父
* 話題はそれますが、家族の話です。
* うちの母方の家は、静岡県でホテルを経営していました。
* もう10年以上前に閉めてしまったのですが、その100年弱の「始末記」を知人の記者の方にお願いして一冊の本にしました。
* その時、初めて知った事実なのですが、曽祖父は1910年代に、メキシコからアメリカ/ロサンゼルスへ密入国して缶詰工場を開業した過去がありました。その最中に祖父が生まれて、安定した生活を送っていましたが、1920年代に日本に帰国し、アメリカ移住時代に築いた僅かな財産でホテルを開業したということです。
* その当時の日本の経済状況や、政府が積極的に海外移住を後押ししていたという事情もありますが、親族に斯様なリスクテイカーがいた、という事実は大変刺激になりました。
* そんなこともあり、昨年10月にロサンゼルスの日系移民博物館を訪ねましたが、展示の一つひとつが実証する100年前の日本人のたくましさに圧倒され、我が身を振り返る大きなきっかけになりました。

3-3. EstablishmentとStartupを結びつけるプロマネ機能こそ代理店の価値
* 「それで、お前は結局何をやりたいねん」という声が聞こえて来そうなので、補足させていただくと、
* 「マーケティング革新の支援」これに尽きます。
* 先に述べたようにMartech / New Retailの「実践」という意味では中国が世界の先端を走っています。北京勤務時代に担当させていただいた、あるお得意先では、既にECでの売上比率が6割〜7割に迫る勢いで従来の事業/マーケティング戦略を大幅に見直さざるを得ない状況に直面していました。
* 当然ながら、日本と中国では大きくメディアやリテールを取り巻く環境が異なるのは承知していますが、近い将来、必ず日本が後を追うことになると考えています。。
* 領域としては、EC、Mobile Paymentの普及は勿論、New Retail戦略で盛んに言及されるOMO(Online Merges Offline)や、信用経済(芝麻信用による与信コストの劇的低下とシェアエコノミーの一層の普及)といった中国発の「実践」事例を学ぶことになると予感しています。
* 既にその萌芽は現れておりメルカリでは「メルペイ」採用の方は全員、上海/イスラエル/シリコンバレーのいずれかに研修に赴くそうです。
* 一部の先進的な取り組みを除いて、まだまだ保守的な日本企業(エスタブリッシュメント)の中でも、必死に事業改革を進め、市場を開拓しようと足掻いている、志ある方をサポートする役割が担えればと考えています。
* 具体的にはプロマネ(プロセス・マネジメント)という機能に尽きると思います。エスタブリッシュメントとスタートアップを繋いで、新しい知恵を実践に落とすということです。ラジオにしろ、テレビにしろ、ネットにせよ、常に新しいことを紹介してきたわけで。
* 広告会社の生きる道は、ここにあると思います。これだけ数多くのお得意先に入り込み、その課題をしっかり見定めて、先方の組織間、キーマン間の調整を行い、エグゼキューションに至るまでプロジェクトを完遂するプロ集団、これが代理店です。(敢えて、中の人が嫌いそうな代理店という言葉を使います)
* こんな凄い組織、他に見当たりません。メディアのコミッション収入が激減する中、対価の請求が上手くできないことが大きな問題ではありますが。
* そんなわけで、私自身は広告代理店、という仕事にはまだまだチャンスがあると思います。まだまだ一般の生活者や事業者にとっては抵抗感がある、革新的な技術や取り組みや、もしくはそれらを推進する国内外の新興企業の目利きを行い、お得意先の課題解決に生かす、そんな仕事ができれば素敵だと思っています。

** 簡単にいうと、遣唐使や初期の日系移民のように、見知らぬの土地に行って学ぶべきものを見定めて、持って帰ってきて自分の土地に合ったものにこさえる、ということです。**

* なんとかまとまりましたかね?笑

つらつらと書きましたが、

根っこの性格は怠けがちで、気分屋なので、早速優秀な中国人に囲まれて落ちこぼれかけています。
仕事に活かせるレベルのネットワークが築けるように自身の価値を上げないといけません。
皆様からの叱咤激励を頂戴しながら、しっかりと学び取ってきたいと思います。

今週末にはアリババのCMOがキャンパスに来ますし、卒業生を見渡せば、TencentやBaiduなどの見知った企業から、ブロックチェーンやニューリテールを支える新興企業まで様々です。

スクールの提供するキャリア・ディベロプメント・プログラムでは、メンターが付くのですが、希望通りにTencentのソーシャルメディア管轄Vice General Managerの方とマッチングしました。

圧倒的に魅力的な環境で学ばせてもらっているので、この経験を、志と悩みを同じくする方々に届けられるよう今後、拙筆ながら適宜情報発信してまいりたいと思います。
応援してくださると、筆にも力が入ると思います。 

今回とは違って適度な長さの文章に止めるよう肝に銘じます。
では、宜しくお願いします。


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