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#10 ロシア・モスクワ編 「最悪と最高の味」

※2015年5月23日に書いたブログを転載しています。




5月20日



朝の4時モスクワの駅に到着。






まだ朝焼けが残っている。奇麗だ。



地下鉄でホテルの最寄りの駅まで行かなければいけない。



またまたまその辺の人に聞きまくる。

今回はかなり苦労したが何とかかんとか駅に到着、と思ったが一駅間違えたみたいだ。



二人で話し合った結果、節約の為歩く事に。



これがまた相当にきつかった。

砂利道で道は悪くスムーズにバックが転がらない、ギターケースが肩に食い込む。



ホテルの正確な場所がわからない為行ったり来たりを繰り返しながらも何とか到着し、荷物を預けた。



到着した頃にはかなり疲弊しきっていたが、まずは腹が減っていたのでケバブ!





そのままどの辺りでバスキングが出来そうか二人で観光も兼ねて少しお散歩。



大体目ぼしい場所を見付け一度ホテルのロビーに戻ってギターを取り、ミツが先にバスキングに向かった。



俺はそのまま少しフロントに留まりブログ書いたりした後、自分の場所へ向かった。



場所に向かうと何故かミツがいて、顔は何故か涙ぐんでいるように見えた。



「どないしたん?」



話を聞いた所、ホテルが隣接している広場でやろうと用意している時にスーツ姿の警備員らしき巨体のロシア人に急に突き飛ばされここでやるな!!と物凄い剣幕で怒られたらしい。それこそ殴られる!と思った見たいだ。



気持ちが萎えホテルに戻ろうと思ったが一度ここにやって来たとのこと。



義充は歌う気力をかなり削がれていた。



とりあえず一緒に歌おうと言う事になり俺はギターを出したがミツは横で憔悴している。



「歌える?」と俺が聞く。

「無理かも」とミツが言う。



俺も話を聞いて暗い気持ちになっていた。



そんな暗い二人にお金を入れてくれる訳がない。



俺はもう一曲歌ったがやっぱりダメだ。気持ちが乗らない。



通る人全員がさげずんだ目で見ているように感じてしまう。



俺はミツにホテルに戻ろうと声をかけた。



ミツは歌えそうな場所を探してくると言い歩いて行った。



俺ももう少し続けようとギターを構えたが聞いていたスーツ姿の警備員らしき男が歩いて来た。



俺はやばっ!と思ってギターをなおし別の場所を探す事に。



朝に相当歩いたせいで体が痛い。

中々人通りがない。



一つ地下鉄のような所でやろうと思ったが工事のおじさんが見てくるので、ジェスチャーでギターやっていいですか?と聞くと個室のような所から偉いさんが出てきてシッシとされた。



腹立つわホンマ。



あーなんかもうこんな気持ちで歌っても楽しまれへんわ。

無理に歌っても何もええ事ないやろ。



12時に待ち合わせしてたホテルのロビーに戻るとミツが待っていた。



ミツも出来る場所を探した見たいだが別の場所でもギターを構えると絡まれ、怒られ気持ちは更に萎えてしまっていた。



それでも俺が初めに歌った場所で数曲は歌って来たとのこと。



ミツの意地を感じて俺は少し安心した。



それでも頭を抱え、「帰りたい…。」を連呼するミツ。



俺はその丸く小さくなった背中を見て悲しくて虚しい気持ちになった。

気持ちが同調してしまい辛かった。



ホテルにチェックインし部屋に入った。



ミツはベッドに倒れるように横になり顔にはタオルを被している。



「泣いてる?」とは聞けなかった。



海外に出てからはっきり行って楽しいことより辛いことの方が圧倒的に多い。



崩れそうな気持ちを立て直しは崩れ、立て直しは崩れ、そんな状態に今回の一件は俺らに追い討ちを掛けたように思う。



二人は完全に心が崩れてしまった。



だけど、どこか二人ともこのままでええの?と自分に聞かれていたような気がする。



するとその時、





オカンからLINEが来ていた。



おかん  「頑張ってる?」

俺  「もう帰りたいわ。」

おかん 「有り難みがわかった?」

俺 「しんどい事が多すぎる。」


おかん 「頑張りや。乗り越えたら良いこともあるよ。あんまりしんどかったらいつでも帰っておいで。」

俺 「わかった。あんまり肩肘張らんと頑張るわ。」


おかん 「そうやで。好きな事やってるんやから、好きでやってるんやから、帰るのはいつでも帰れるとおもってゆっくりいきーや。」



涙が出た。



起き上がったミツにLINEを見せるとミツも泣いている。



あー大事な事忘れてた!俺ら好きな事やってるんやでなー!誰かに言われた訳でもなく自分でやりたいって思ってやってるんや!



おかんが言ってくれた言葉が胸に刺さる。俺らは帰る所がある。いつでも帰りを待ってくれてる人がおる。



怒られたり、あしらわれたり、色々あるけどそんなん笑い飛ばせるようにならななー!



ホンマにしんどい時は帰ったらええんやから!



二人でもう一度歌いに行く事に。

楽しむ!それしかもう頭には無かった。



ミツが一発目を歌う。



さっきまでとは完全に違いお互い吹っ切れていた。





今この瞬間を楽しむ!歌う事を楽しむ!



二人で交互に歌い歌っていない時は踊ったりギターでリズムを取ったり。



するとお金が入る!どんどん入る!

笑顔で頑張れよ!と声をかけてくれる!

楽しい!楽しい!





楽しめた!よっしゃ!!やったったぞ!!



お金を稼げた事は嬉しかった。

だけどそれよりも、もっともっと大事な物を取り戻したような気がした。





そして俺らは勝利の美酒に酔った。





誰に勝った?



自分にです。


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