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七歩先の情景と日常を

中心街から二歩三歩、いや七歩ほど外れた街に妙な落ち着きを感じて、喫茶店で注文した淹れたてのコーヒーの熱気に揺さぶられていた。

一仕事を終えてオフモードにシフトしたサラリーマンが駅から放たれる様子を、いかにもホームタウンのような面持ちで眺めつつカフェで一息ついていると、その地域の色が見えてくる気がするから、テラス席の見通しが良い席を選ぶ。

小休憩なのか夕食なのか分類しづらい午後5時に、一口大にカットしたアップルパイの端切れをフォークで口に運びながら、日が暮れて暗くなる瞬間を捉えるために目を光らせる。

少し早めに仕事を終えたのか、スーツ姿の男性が隣の席に座った。アイスコーヒーにミルクを落としてストローで混ぜて一口。
「ふぅ」と、わかりやすくスイッチが切り替わったと同時に、ビジネスバッグからパソコンを取り出した。仕事の続きか、はたまたプライベートの楽しみか、真横からは見えることはなかった。

仕事、気休め、課題、お休み、ママ友との会話、女子会、食事、リモート、趣味、読書。

決して互いに干渉せずともなんとなく監視しながら、カフェの中に人は集まる。空間に何かしらの目的を持って入ってくる。停滞時間はそれぞれで、アナログ時計は壁にかけられていなかった。
激戦が繰り広げられていると噂の17時台のスーパーマーケットに向かうための戦闘準備をここで済ませた主婦も、先ほどまでモンブランをゆっくり食べていた。

情景であり、何ら変わらない日常の一部に無闇に介入せずに知ってみたくなったのなら、意欲的に最前席を取ってみる。
誰に評価されるでもない意気込みは、自分で「優」の評定に近づけていく。

自分を甘やかしてご褒美に使わせていただきます。