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はじめての彼女は天然で天真爛漫な人だった

これは僕の初めての彼女の思い出。
彼女は時々突拍子もないことを言い出して、僕を困らせた。天然で天真爛漫。そんな言葉がピッタリだ。例えを言えばキリがない、毎日がそんな感じだ。でも僕には初めての彼女だった。だから女子ってこんなもんかな、くらいにしか思わなかった。

彼女に出会った日のことは忘れられない。
その日は朝からの雨で、学校帰りの道はしっとりと濡れていた。曇り空から細やかな雨粒が落ちてくるのを、彼女は傘も差さずに見上げていた。
雲の隙間から陽がさして、彼女の顔を照らした。雨に濡れた横顔が輝いて美しかった。綺麗だと思った。気づいたら近くに歩み寄っていて、一緒に空を見上げていた。二人してもうすぐ上がりそうな雨に濡れていた。

彼女は横にいた僕に気づくと、
「濡れちゃうよ。」
そう言った。
「うん、でも良いんだ。なんか気持ち良いね。」
僕の頭は何も考えてなくて、陽ざしの光に吸い込まれそうだった。
「うん、気持ちいい」
僕は彼女の言葉を聞いて我に返った。もう一度彼女の横顔を見て、キレイだと思った。僕は一瞬で恋に落ちた。

それから一緒に帰って、たくさん話をして、すぐに仲良くなった。同じ体験を共有したからなのか、僕らは何でも話してた。少しして、この日のことを彼女と話した。横顔が綺麗で、好きになったって正直に言ったら、彼女は恥ずかしそうにして頬にキスしてくれた。顔を見合わせて、二人してうつむいて、そしてもう一度キスした。彼女への告白はこの時だけだったけど、何度かキスするうちに心が近づいていくような感覚があって嬉しかった。

それからの彼女は不思議全開モードで、何て返事をしたら良いのか分からないこともあった。宇宙人なのかもって思ったこともあった。でも笑顔が無邪気すぎて、何だかどうでも良いことのように思ってた。ただ当たり前のように毎日が過ぎるから、僕には彼女がいることの価値も意味も分からなかった。

高校を卒業して、親の転勤もあって僕は上京することになった。僕は地元に帰る理由が見つけにくくなった。最初はマメに連絡を取り合った。でも時間が経つうちに、都会の刺激と距離の遠さから自然と心が離れてしまった。

時々彼女のことを思い出すたび、後悔と切ない想いに胸が苦しくなる。

(イラスト ふうちゃんさん)


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