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音楽と再会する

大昔にふと耳にして、それからずっと長い期間忘れられない音楽がいくつかある。
一つ目は中学3年生の時、友人に録画してもらったスペースシャワーTVのビデオを見ていたときに、たまたま流れていたMVのこと。

その時の私はとにかく音楽が好きで、それも邦楽のロキノン系。CSが観れる友人に頼んでBUMPOFCHIKIENのインタビューを録画してもらった。

録画してもらったビデオを学校で受け取り、家に帰って早速再生してみたところ、目当てのBUMPのインタビューはすぐには始まらず、見知らぬ洋楽のMVが流れ始めた。
どうやら番組の一つのコーナーで、MVの内容を深く解説するという企画らしかった。

そのMVは海外のクラブが舞台になっていて、そのクラブにいる客はみんなドラッグでキメキメで、音楽と映像に合わせて、AからZまでのドラッグを紹介していくという内容。
中3の私にとっては、ドラッグってこんなに種類があって症状も違うということにまず驚く。

MCの男の人が、MVを一時停止しながら解説をしていくのだけど、その解説を聞いてると、DJの前に群がってアイドル視をする日本人女性が風刺的に描かれていたり、ドラッグを混ぜて使用するときの名称を教えてくれたりと、パッと見ているだけでは理解できない深い内容がわかって、めちゃくちゃ興味深いのだった。
私はBUMPのインタビューそっちのけで、そのMVを夢中で見ていた。

それから10年くらい時が過ぎて、25歳の頃。私は映画や音楽に関するドラッグカルチャーが好きで、その話を夢中で友人にしていたところ、どうして私はこんなにもドラッグカルチャーが好きなのだろうとふと疑問に思った。

一人でいる時に原因を探ってみる。ドラッグカルチャー好きになったきっかけをまじまじと考えてみる。すると、わかったのだった。
まず、小学生低学年の頃、キャスパーという可愛いおばけの映画が死ぬほど好きだったということ。

その日本語吹き替え版のビデオを擦り切れるほど見ていたのだけど、その中で「誰だ?麻薬の密売人?」と姿の見えぬお化けに話しかけるシーンがあるのだ。そこで私は疑問。まやくのみつばいにん?なんじゃそりゃ。

母親に「まやくのみつばいにんってなに」と聞いてみた。

すると母は、麻薬っていうのは摂取すると頭がおかしくなってどんどん気が狂い、病気になっていくものだと教えてくれて、密売人というのはそれを警察に見つからないように秘密で売る人のこと。

私の頭の中は、まだまだ謎。

「どうしてそんな頭がおかしくなるものを摂取する人がいるの?」と聞いた。母は、なんでだろうね、と言った。
きっとそこからドラッグが気になり始めたのだ。私の無意識下に、麻薬ってなんなの、という思いが埋め込まれた。

それからの、中学3年生の時の、このMVとの出会いである。強烈に惹かれた。なんなの、麻薬って。

で、25歳の頃、友人とドラッグカルチャーについて語る私は思ったのである。あのMVは、なんだったのだろう?
気になる。流石に曲名だとかアーティスト名だとかまでは覚えていない。うーむ。私はネットの掲示板で聞いてみることにした。

2005年頃でA-Zまでのアルファベットのドラッグを紹介する洋楽のMVって何ですか。

すると、答えはすぐに返ってきた。

soulwaxのE-talkingです。

丁寧にYouTubeのURLまで貼られている。
ま、まじか。流石にこんな情報でわかる人なんていないと思っていたよ。ありがとうございますと猛烈に感謝しながら、URLを開いた。
これだ!!!10年ぶりの再会だけれど、完全にこれである。今聴いても、曲もMVもかっこよく、テンションがぶち上がる。まさかの再会である。


他にも私にはこういった再会エピソードがあって、つい最近のことなのだけど、小学生の時に欲しかったCDのことが今になっても忘れられないでいた。
小学校3年生の頃、CDTVだかなんだかの民放の音楽番組を見ていたときにCMで流れていた曲である。
女の人が「〇〇〇〇言うてんねん♪ 〇〇〇〇〇〇ねん♪」というような感じでゆるく大阪弁でラップしている曲。

その曲に惹かれて、母にこの曲のCDを買いたいと言った。と言っても曲名もアーティストもわからない。
インターネットも当時はなかったので、頼れるものは何もなく、私と母はCD店に飛び込んだ。

そして店員に言う、「なんとかかんとか言うてんねん♪なんとかかんとかなんとかねん♪って、大阪弁で女の人が歌ってる曲なんですけど、知らない? なんとかかんとか言うてんねん♪って曲」

しかしレジにいた二人の店員は、「知らない」

なんで知らないの!?めっちゃTVでCMやってるんですけど!と不思議に思いながら、諦めたのだった。

「…知らないんだね」と母と落胆する。

それから二十年経った今、やっと再会したのであった、その曲に。
大人になってからもその曲のことを思い出したタイミングでよく「大阪弁 ラッパー 女性」とか調べていたのだけど、求めているあの曲がヒットしたことはなかった。
それでもめげずに、先日も検索していた。すると、なんと出てきたのだ、あの曲が。
それはlaugh&peaceというアーティストの「ちょっときいてな」という曲だった。リリース年も1999年なので、確かにこれである。

やっぱりこちらも今聴いてもとにかくかっこよく、何十年も待って探した甲斐があった!と心に喜びが満ちました。


どちらに関しても昔の自分の感性で選んだものだから、今聴いたらダサいのかも…と不安に思っていたけれど、どちらも大人になった現在再会しても最高だった。時代が経っても色褪せない魅力がある曲だからこそ、ずっと頭の中から消えないのかもしれない。

何回も会いたくなって頭の中から忘れられないものって、自分にとって意味のあるものなのだと思う。会いたいと思ったら、音楽でも人でも物でも、再会できるように努力をしてでも、もう一度会いたいと思う。再会したら世界の色が変わっていくような新鮮な感覚。

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