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何故、山手の宿で『海の幸』?・・・『地域おこし』に無関心な女将との遭遇。

 或る山手の『地域おこし』に頭を巡らしていた。宿もそこそこ点在する地域だが、先ずは、各宿の公式サイトのサーフィンである。

 「ん?」、どのサイトの料理を見ても、『海の幸』が並んでいる。車海老は焼き加減が汚く、マグロは黒ずんでいる。何故に、鯛のあら炊きなのか。自宅でも作れる程度のものだ。とても、食欲をそそる料理がない。

 海辺のリゾートへ足を運べば、勿論、旬鮮な『海の幸』が頭に浮かび、マグロ、鯛、伊勢海老、ヒラメ、ウニ、カニなどを、思う存分食べたくなる。

 ところが、山手の宿へ足を運び、そこで、新鮮味のない『海の幸』が卓に並ぶと、首を傾げてしまうのである。「何故?」と言いたくなってしまう。

 山手に住む人たちは、日頃から山菜や川魚、川ガニなどには食傷気味で、『海の幸』を食したいのかも知れないが、それは、他所から訪れるお客のニーズを考えてのメニューなのか、疑わしくなってしまう。

 山手であれば、山菜や木の実、虹鱒、鰻などの川魚、そして極上の牛や豚、鳥などの肉があれば、最高だ。山菜や木の実を使った『薬膳』も作れ、郷土料理をブラッシュアップすれば、大変な名物に化ける可能性もある。

▼筆者がいつも気になる『森の弁当 やまだ屋』(鹿児島県)

 そこで、或る山手にある宿の女将と会うことにした。初手から、何となく違和感を持ちながらも、1ヶ月半の間に三度ほどお会いして、後は、SNSにて情報交換を行なった。

 結論から申し上げれば、『熱量不足』としか言いようがなかった。『地域おこし』への情熱がなく、行政や観光協会に与えられる提案と予算ありきで対応するので十分であると言い放ったのである。

 「ちょっと、待て!」、予算ありきと言うのは『税金』を使うのだから、その大切な我々の『税金』を当然のように貰って、与えられた課題を捌くので十分であるという見解となる。

 筆者の心に中に、『激昂』の火がついた。全国津々浦々、観光業界へは国なり基礎自治体なりの『助成金』や『補助金』は相当な額になるが、それが、当然であり、やっつけ仕事で受けているのならば、『本末顛倒』としか言わざるを得ない。

 更に、その女将曰く「行政や観光協会のお世話になり宿をしているので」と。いやいや、宿を利用するお客様ありきで、その宿は潤っているのではないか。客を差し置いて、行政と観光協会を上位にするなんぞ、けしからん。

 この低民度には、正直、交わす言葉も無くしてしまい、期待も希望も失せてしまった。『地域おこし』を牽引するのが女将たちの頼もしい姿であると、ずっと思っていたので、この心無い言葉に何度も自分の耳を疑った。

 そこで「地域おこしの狼煙を上げませんか!?」と聞く。すると、「個人的にも宿的にも、狼煙を上げることは考えていません。」と返事がくる。

 特に、その女将には『観光立県熊本』のハートが無いらしい。だったら、『地域おこし』を名目とした『助成金』や『補助金』を申請する資格がないのではと、詰問したくもなってしまう。

 コロナ禍と雖も、現在、全国は『コロナ後』へ舵を切り、人流が動き出している。少しでも地方の経済が動くようにと。

 この女将とのキャッチボールは、時間の無駄だ。結局は、地域の行政、観光協会、商工会、そして宿。それらが、うまい具合に『助成金』や『補助金』を使うようなプロジェクト中心の思考となり、県内外からのお客に対して、全く『心の篭ったおもてなし』なんぞ考えていないことになる。

 地域によっては、女将会の会長が旗を振り、『助成金』や『補助金』をフルに活用し、『地域おこし』を真剣に取り組み、東奔西走しているところもある。実際、その女将会の会長を存じ上げており、その活動たるや実に見事なものである。

 また、随分前の話だが、テレビのニュースを観ていると、青森の『ねぶた祭』に秋田の女将軍団が宣伝活動をやっていた。その狙いは、青森の『ねぶた祭り』が終わったら、次は秋田の『竿燈祭り』だと、強力に宣伝することにある。

 青森側からすれば秋田側を『厚顔無恥』と揶揄する人もいるかも知れないが、この『性根逞しさ』は、『助成金』や『補助金』の無駄遣いであるとは思えない。その『熱量』が火傷するほどに伝わってくる。

 日本の各地のリゾートホテルを見ると、そこが海であろうが山であろうが、和洋中の料理を楽しむことができる。しかし、そのグルメレベルを高く維持するには、相当な資金力が必要だ。尚且つ、腕の立つ料理人の存在も不可欠となる。

 よって、田舎の宿であれば、都市部の『会席料理』ではなく、『優しい郷土料理』、『おばあちゃんの健康長寿料理』などが、若い人にはもの珍しく、『和食文化』の原点に触れることで、逆にインパクトがありはしないかと思うばかり。

 昔々、阿蘇方面に産山村という小さな村があった。そこで見つけたのが、家族が営む小さな『民宿』。当時、ランチでも結構高めの料金設定だったが、その地の郷土料理をブラッシュアップして、特に、三十種類ほどの漬物が目の前に出された時は、腰を抜かした。

 今、どのようになっているか分からないが、その土地の食材を十分に活かしたものなので、当時、土日や祝日は予約が取れないほど、県内外から観光客が押し寄せていた。

 話は元に戻し、『熱量のない女将』の話だが、筆者の心も砕け散ってしまった。県内外から家族連れが楽しみに旅行で立ち寄る、地方の宿。そこで、お客のニーズも考えず、料理にも拘ることが無ければ、その地には魅力のない宿ばかりが点在し、衰退して行くに違いない。

 実際、この十数年間に、その地の宿は廃業するところが多く、今では二、三軒の宿以外は、公式サイトの料理など粗末なものばかりである。いや、粗末と言うよりも、コスパもセンスも悪い料理となっている。

 何とか『地域おこし』の心を注ぎたいが、この『熱量のない女将』では、既に遅しと結論づけてしまったのである。何とも、情けなや。

 『暖簾に腕押し』とは、こういうことを言う。

▼山手のお寺さん『霊巌寺』普茶料理

福岡県黒木町 霊巌寺の普茶料理
(女将が他界され、今では食すことができなくなった。)
当時の料金は一人前5000円

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