フリーランスへの支援を、大切にしたい理由
今、芸術文化活動を行うフリーランスの方の支援をするために色々動いています。なぜ、芸術文化活動を行うフリーランスの支援に力を入れたいのか。理由がいくつかあるので、ここで簡単に、一度整理しておきたいと思います。
①調査結果に基づいて
4月3日~10日にかけて1週間実施した、新型コロナウイルスによる芸術文化活動への影響に関するアンケート結果。それに答えてくださった方の約7割が、フリーランスでした(下記のページから結果をダウンロードできます)。困っている、と声を上げた人達の多くに、まず何とかしてこたえたい、という想いがあります。すべてに対して何でもできるわけではない中で、自分が何か少しでもできるとしたら、まずは今目の前にあるデータに基づいて、そして少しでもつながった人たちに向けて動いていきたい、という想いがあります。
②フリーランスへの支援は、行政等の大きな支援から漏れやすい構造となるから
芸術文化のフリーランスへの支援は、おそらく行政支援から漏れやすい構造となります。説明責任を問われる国や自治体のお金に関して考えれば、給付金申請等に対しては、○○の証明書が必要等、おのずと要件が厳しくなっていきます。これは行政が冷たいからではなく、法律や慣例の問題があります。緊急支援的に始まっていくことも、国民一律給付であれば説明責任が果たしやすいでしょうが、芸術文化のフリーランスだから、というところに行政が何らかの支援をすることは現状想定しづらいと思います。
また、業界団体等民間からの支援も始まると思いますが、分野横断で活躍するフリーランス、あるいは団体や組織に属していないフリーランスは、そういった支援から漏れてしまう可能性が高くなると考えられます。
だから小さくても、民間でやっていく必要があると考えています。小さくても、だんだんと大きな流れになるように、やっていきたいと思っています。
③フリーランスは、個人の選択だけでなく業界・構造の問題だから
芸術文化のフリーランスへの非難や否定は結構目にすることがあり、つらい気持ちになります。不思議と、「普段好き勝手やっているんだから、困っても自分の責任」のような、自己責任論を説く人も相当数います。
フリーランスというのは、個人の選択で夢を追いかけてなっている人も、もちろんいると思いますが、業界として、構造的にフリーランスにならざるを得ない人も多数いると思います。
雇用関係にあっても収入が少なく、フリーランスの仕事を探さざるをえなかったり、そもそも組織が少なく、各イベントごとの契約となっていたり。口約束で仕事をしている場合もある、というアンケートの結果もあり、一般的に言えばそれは大問題なのですが、個人の問題というよりも、そういう業界、構造があるからだと思うのです。
だから、個人の責任だから支援から漏れても仕方ないよね、というロジックは通らないし、あってはならないと思うのです。
④フリーランスは始まりだから
私は、フリーランス、個人でやっている人たちは、生態系の根幹を担う人たちだと思っています。今をときめく作家さんや、舞台監督なども、そもそもの始まりはフリーランスであった人がかなりいるはずです(というか今もフリーランスかも)。わかりやすく考えれば、J-popで活躍しているシンガーソングライターだって、街角のストリートミュージシャンから始まった方も多くいます。
フリーランスは、芸術文化の生態系の、始まりを担っています。そこには、未来の種があると思います。好きなことをやっているかもしれない、あるいはそれしかできないからやっている、という人もいるかもしれない。
でもそこには確実に新しい、美しい未来の種があると、そこからしか生まれないもの、未来の文化があるのだと思います。
⑤フリーランスを応援できれば私たちはもっと豊かになるから
小さいころ、好きなことをして生きていきたい、と思っていた人は多いのではないでしょうか。YoutubeのCMでも、「好きなことで、生きていく」といのがありましたよね。今の小学生のなりたい夢にも、Youtuberが3位に入っているそうです。
誰もが本当は、好きなことで生きていければ、好きなことで、喜びや苦しみを感じながら、それを軸に生きていければと、そんな風に考えているのではないでしょうか。
芸術文化活動を支える多くのフリーランスは、自分の活動が大切だと思い、自分に真正面から対峙して生きている方がほとんどだと思います。夢を持ち、社会への批判的な視点を持ち、本当に大切だと思うことに日々向かっている。そこには即物的なものはないのです。
先に述べた「普段好き勝手やっているんだから、困っても自分の責任」のような自己責任論は、フリーランスだけでなく、多くの人々の夢やまっすぐ生きていく姿勢、本来人が何のために生きているのかという問いを、根こそぎ否定してしまいかねないと、私は思います。
我慢して、頑張ってお金を稼いで生きていくことが美徳、という考えもありますが、好き勝手やっているかどうか、生きているかどうかは、他人が判断できることではないのです。
一人一人がまっすぐやりたいと、大切だと思っていることを、まっすぐ応援できるような世の中になれば、私たちはもっと豊かになれると思うのです。ミヒャエル・エンデの「モモ」の灰色の男たちを増やさず、一人一人が時間を大切に生きていくように、なれると思うのです。
私個人や、一民間企業として、できることは限られているけれど、一人一人がきちんと考え、仲間と共に議論し行動し、描きたい世界観を互いにしっかりと持っていれば、必ずより豊かな社会になると信じています。その一つに、芸術文化活動にかかわるフリーランスへの支援というのが、私にとって、今できること、やるべきこと、重要なことだと、考えています。