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外来種は悪者か?【自然の”今”①】

代表のhiroが自然の”今”をつづるコーナーです。

第1回は”外来種は悪者か?”。

”外来種”という問題を、hiroなりに考えてみました。


すべては、小さな生命社名誉顧問・かめきちから始まります。

かめきちとの出会い

私がかめきちと出会ったのは、2016年初夏のことでした。

私は祖父と、山でカメを探していました。池や草むらをくまなく探しましたが、カメが泳いでるのか、ぽちゃん!と水音が聞こえるだけで、姿を見ることはできず。

全く収穫(カメ)のなかった私と祖父は、がっかりしながら、ぼちぼち帰ろうと思っていました。

その時です。

「カメいるかー」

え?カメ!?

祖父の知り合いのおばちゃんが、こちらにむかって放った声でした。おばちゃんの手には、手のひらサイズの赤ちゃんのカメが。

私はめっちゃ喜びました。しかし、おばちゃんは少し高い、丘のようなところにいます。カメをどうやって渡してくれるのでしょうか。

なんと、おばちゃんは赤ちゃんカメをこちらにむかって放り投げました。

私はすかさず虫取り網でカメをキャッチ!

・・・これが私とかめきちの壮絶な出会いです。


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かくして私とかめきちはいっしょに暮らし始めました。「魚肉ソーセージをやったらいい」という祖父の言葉を信じてそのとおりにしていたら、でっぷりと太ってしまったときは困りましたが...。あと、指をエサ(ソーセージか?)と勘違いして噛みつくのはやめてほしい。

ちなみに、エサはカメ用のものに変えましたのでご心配なく(^^;

”絶滅危惧種”から”外来種”にされたクサガメ

ここからは、クサガメの”今”を書いていきます。

かめきちの仲間であるクサガメは、古くから生息する日本のカメとして、愛されてきました。また、絶滅が危ぶまれる絶滅危惧種として守られていました。

しかし、2010年の研究で、江戸時代に日本に入ってきた外来種であることが分かったのです...。


外来種とは、そのまま読むと”外から来た種類”ですが、彼らは来たくて来たわけではなく、人間によって別の場所に連れてこられた生き物です。

ペット用として連れてこられたり、食用として運び込まれたり、あるいは船などに偶然乗っかってきたりなど、理由はさまざまです。

その生き物たちが、捨てられたり、逃げ出したりして野生化し、外来種と呼ばれるようになります。

在来種(もとからそこにいる生き物)を食べたり、生息地を奪ったりして、生態系を破壊してしまう問題が生まれています。在来種と交雑し、純粋な在来種の遺伝子がなくなってしまうという問題も。また、人間に危害を加えたり、農作物を食べてしまったり、病原体(菌、ウイルスなど)を運び込んだりといった問題もあります。


私がかめきちと出会ったとき、2010年にクサガメが外来種だということが分かってから6年でしたが、多くの人が在来種だと考えており、外来種かどうかの情報もあやふやでした。

2013年発行の図鑑ですら、絶滅危惧種であり在来種だと書かれていたのです。

私自身、かめきちが、”絶滅危惧種”であり、”在来種”だと思っていました。「絶滅危惧種だから、大事に飼わないと。」と感じたのを覚えています。

それが、です。ここたった10年で、「クサガメは外来種だ!」という情報がネット・テレビなどで拡散され、クサガメは、絶滅危惧種から外来種へと一気に”格下げ”、駆除対象になったのです。

また、日本固有種(日本にしかいない種)のニホンイシガメとの交雑個体・うんきゅうは、”幻のカメ”とちやほやされていましたが、クサガメが外来種だということが分かると、外来種問題の象徴として駆除されることになりました。

つまり、「古くからいる日本のカメ、イシガメとクサガメを守ろう!」だったのが、10年ほどで一気に「イシガメに忍び寄る影!外来種クサガメを駆除しよう!」になってしまったのです。

私はショックを受けました。

いかに情報があやふやで、いい加減であるかということ。人間の勝手な都合で勝手に外来種にされてしまうこと。そして、「凶悪外来種」といった単語を使い、人々をあおるように、外来種の問題を過剰なまでに拡散していくネットやテレビの恐ろしさ。

外来種は悪くない。かめきちは悪くない。

外来種は、来たくもないのに人間によって連れてこられた、むしろ被害者なのです。

外来種は、生きるために在来種を食べ、生きるために生息地を奪っているのです。人間に危害を加えるのも、自分の身を守るためでしょう。病原体をもっていることは、生き物として仕方のないことです。

生きるために一生懸命がんばっているのに、ネットやテレビなどでは「在来種を食い荒らす凶悪なやつ」「凶暴」「生態系を破壊する外来種」などと、外来種は悪者呼ばわりされています。

でも真の悪者は、外来種を勝手に連れてきて、勝手に悪者呼ばわりする、むしろ人間でしょう。

決して私は、外来種を駆除するなと言っているのではありません。十分慎重に、じっくり研究し、外来種が生態系に悪影響を及ぼすかどうかよく考えてほしい。外来種が本当は悪者ではない、被害者なんだと分かったうえでの、やむを得ない駆除は、仕方のないことかと思います。

いちばんいけないことは、むやみやたらと、過激な言葉で外来種を悪者に仕立て上げることです。私はこういった、外来種をはじめ生き物を食い物にする商売を、「生物ポルノ(注1)」と呼んでいます。これだけは絶対に避けなければなりません。


私が言いたいのは、外来種にも、命があるということです。


私たちは、外来種のことを、しっかりと考えて未来へつないでゆかなければならないでしょう。


最後にかめきち、ひとことお願いします!

「がいらいしゅとかそういうのよりも、ご飯くれカメ。」

え?あ、はい。そうっすよね!

・・・というわけで、最後まで読んでくださりありがとうカメ!

それではまた。(^^)/

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注1・・・「感動ポルノ」という言葉があります。意図を持った感動場面で感情を煽ることです。主に障がい者が障がいを持っているというだけで「感動をもらった」と言われる場面を表しています。

私にとって外来種を過剰に悪者に仕立て上げ、在来種を正義のように語ることは、感動ポルノを想起させるため、このことを「生物ポルノ」と呼んでいます。


参考文献

池の水ぜんぶ”は”抜くな!外来種はみんなワルモノなのか(つり人社)

「池の水」抜くのは誰のため?暴走する生き物愛(新潮新書)

ビバリウムガイドno.82 2018年秋号(エムピージェー)

講談社の動く図鑑MOVE は虫類・両生類(講談社)


参考webサイト


最後まで読んでくれてありがとうございます(*^▽^*) うれしいです♪ また読みにきてくださいね(^^/