【アドバイザリーボード紹介】「リスクの神様」降臨! 白井 邦芳さん
※2024年2月の東証グロース市場において時価総額が最下位だった当社が下克上を目指す挑戦記です。ぜひフォローして下さい。
こんにちは。
株式会社地域新聞社(2164)のコーポレートコミュニケーション室の五十嵐(いからし)です。
地域新聞社では、今後の事業を確実に実行するために、各分野のスペシャリストによるアドバイザリーボードの組成を進めています。このたびアドバイザリーボードに、ゼウス・コンサルティング株式会社の代表取締役社長兼CEO 白井 邦芳さんが加わりました。今回は、上場会社を中心に3,100件以上のリスクマネジメントを手がけてきた白井さんのご経験と、コーポレートガバナンスを通してどのように当社の企業価値を上げていくのかをインタビュー形式でお届けします。
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白井 邦芳さんプロフィール
「リスクの神様」から見た地域新聞社
五十嵐:ドラマ「リスクの神様」(2015年 フジテレビ)は、白井さんがコンサルタントとして実際に指導した事件・事故を基にしたもので、危機管理監修も担当されたと伺いました。主に危機管理分野におけるこれまでのご経験をお聞かせいただけますか?
白井さん:大学卒業後、AIU保険会社(現AIG損害保険株式会社)に入社し、28年勤めました。1990年、日本に初めて会社役員賠償責任保険(D&O保険)が生まれようとしていた矢先、私はこの保険の危機管理対応に習熟するべく、ニューヨークAIG本社で毎日著名な弁護士グループと格闘していました。株主代表訴訟や証券訴訟等に多いクラスアクションなどに対する実効的な戦術を学ぶためです。専門分野だけを捉えても100を超えるカテゴリーに分かれる米国弁護士の特殊性は、日本における状況と異なます。企業が巨額訴訟に巻き込まれた場合は、2つ、3つのローファームで弁護団をつくり、各自の専門性を十分に発揮させるということも少なくありません。こうした戦術や危機管理のモデルを完成させ、帰国するとほどなく、商法(現在の会社法)の改正で株主代表訴訟の印紙代が8,200 円となり、言いがかり訴訟が急増していきます。一方、バブルがはじけた後は、日本経済は大きな下降線を描きながら、危機管理の分野においても裾野を拡げる事態が度々発生し、コンサルティングを付帯した保険は、企業を支援する全く新しいスキームとして提供されるようになります。私もその分野のパイオニアとして、新たなスキームの開発に尽力してきました。このいくつかは、セクシャル・ハラスメント、雇用差別、不当解雇を理由とする企業への提訴を対象にした雇用慣行賠償責任保険であり、グリコ・森永事件等に代表される悪意の異物混入等を対象とする生産物品質保険の開発という成果にもつながりました。また、企業リスクの専門家として企業を取り巻く保険リスクを分析し、各種の保険を開発支援してきた一方、企業の不祥事や企業防衛の立場から予防管理や危機管理対応にも着手してきました。
五十嵐:法人保険の草分け的存在にして第一人者なのですね。2000年にはAIU保険会社初代危機管理コンサルティング室長に就任されていますね。
白井さん:2000年に何があったかと言うと、雪印乳業の集団食中毒事件です。危機管理広報の姿勢が問われ、瞬く間にブランドは地に堕ち、株価も下落した事件でした。報道されてからの1カ月間、毎日新聞にコメントを出すことを依頼されたため、危機管理コンサルティング室を立ち上げて対応にあたりました。その後、事件の発端となった北海道の工場再開にあたって工場見学が実施されたのですが、初日に家族を連れて参加したんですよ。すると役員の方々が入り口で待っていらっしゃって、「私たちのような大失敗をした会社に来ていただいてありがとうございます。これから頑張っていきます」と、丁寧に一緒に回ってくれました。後日、「実は白井さんの記事を役員会でいつも読んでいました。あの時から売上を戻すのに10年かかりました。役員会は白井さんの言葉を忘れずに覚えています」というお電話もいただきまして。事件発覚直後の稚拙な危機管理態勢によって会社全体のガバナンスの問題が露呈したわけですが、さまざまな教訓を残した事案でもありましたね。
五十嵐:そのようなご経験を持ち、現在も約1,000社のクライアントを抱えていらっしゃる白井さんが、なぜ当社のアドバイザリーボードに就任してくださったのですか?
白井さん:細谷さんとは、以前細谷さんがいらっしゃった会社で専門家チームのリーダーを任せていただいてからのお付き合いです。弁護士、会計士、監査系に民間の調査機関系…細谷さんの見極めで集められたチームは素晴らしく、最高のメンバーをご紹介いただいたと思っています。そのご縁は今も全ての人と続いていて、いつか恩を返したいと思っていたところでした。ただ、私の役割は、社長の利害を守ることではなく、会社を損失から守ることです。なので、どんなに個人的に親しくても、最後は引導を渡すかもしれません。それを理解していただいた上で、細谷さんが本気で頑張りたいとおっしゃるなら、一緒に頑張りましょうというお話をしました。
五十嵐:白井さんの目から、地域新聞社はどのように見えていますか?
白井さん:私はバックグラウンドチェックのプロでもありますので、過去の情報も含めて全部調べましたが、すごく良い会社、興味深い会社だと思いました。やはり良いアセットを持っているのに、それを十分に可視化できてない、情報として外に出ていないというところがありますよね。PBR(株価純資産倍率)などの価値基準から見ても、現状の株価はあまりに安すぎます。これだけアセットがありながらもったいない。産業再生機構での経験からも言えることですが、自分たちの価値を分かったつもりになって守りに入ってしまい、本来の価値を発展させなかった会社は、何かのリスクにさらされると一瞬にして終わります。まさに新しい血が入ることが大事なので、それが細谷さんなんだろうなと。
五十嵐:おっしゃる通りです。それもトップが変わったので、よりドラスティックに変化している最中だと感じています。
白井さん:そうですね。戦略ディスクロージャーの専門家として既にアドバイザリーボードに就任している宮下さんは、私の同僚として一緒に仕事をしていたことがあります。彼は企業の非財務情報をどう可視化し、定量的に見るかをずっと研究していたので、実はもし先に私が細谷さんに呼ばれたら彼を推薦したいと思っていました。また、非常に良いアセットを持っている地域新聞社は、コストをかけずに新しいことをするという点で、なかなか面白い会社になると考えていて、それを効率よく進めるにはAIが必要だと思うのですが、AIの専門家である高柳さんも参画されたので、これはもう本当に盤石な選定をされているなと感じましたね。
一人一人が「会社を良くしよう」と思うことこそがリスク管理
五十嵐:当社でこれから具体的にやっていくことについて、現時点でのイメージなどがあれば教えていただけますか?
白井さん:現状の株式数で上場維持基準である時価総額40億円をクリアするなら、2026年8月までに株価を数倍にしなければいけないですよね。株価は、どのくらい将来の価値を想像できるかという「アップサイドポテンシャル」に左右されます 。
さらに企業には、アップサイドポテンシャルというプラスの部分に対して、「割引」と言われる「ダウンサイドリスク」も存在します。ダウンサイドリスクとは、不祥事とか、人材開発がうまくいっていないといったマイナス要因のことです。企業価値は、このプラスとマイナスを相殺して判断します。プラス要因を増幅させる戦術を実行していくのが細谷さんや宮下さんだとすれば、私の役割はダウンサイドリスクを軽減させることです。
不祥事を起こした会社の背景には、経営に対する不満や社員の満足度低下などがよくあります。これらを改善しようとする時にありがちなのは、360度調査をしてお互いを叩き合い、もっと悪化してしまうというケース。ですが、300社を分析した結果、実は以下のような要因があるということが分かったんです。
注)WLB=ワークライフバランス、EAP=従業員支援プログラム
ですから、ダウンサイドリスクを軽減するには、こうしたハザードを少しずつ改善し、全体的に従業員満足度を上げたり、経営に対する信頼を高めたりすることで、みんなが同じ方向を向けるようにしなければなりません。これを「エモーショナルリスクマネジメント」とか「エモーショナルコンプライアンス」と言います。「こういうことはやめましょう」と禁止するのではなくて、社員一人一人が会社を良くするために正しいことをやっていこう、誰からも素晴らしいと言われる会社になっていこうというふうに一丸となることが大切なのです。
あと1年9カ月でできるのか?
五十嵐:「人の役に立つ」という経営理念一つでそれぞれが自発的に考え、行動できる風土がある当社では、エモーショナルリスクマネジメントがマッチするように思います。ただ、目標管理はどのようにしていけば良いのでしょうか?
白井さん:まず、「ODSC」(Objectives:目的、Deliverables:成果物、Success Criteria:成功基準)を明確に定義する必要があります。いつまでにどんな成果物を作って、どのような形で発表していくかをガントチャートに落とし込み、各タイミングで確実に企業価値を上げ、株価を上げていくのです。上場維持基準クリアの期限まで、あと1年9カ月。あまり時間がありませんので、アドバイザリーボードと経営者、幹部の皆さん全員で、今の段階から全力で突っ走らないといけません。奇跡が起きたらどうにかなるでしょうなんてことをやっていたら無理なんですよ。だからアドバイザリーボードは地域新聞社をどうやって救うかを真剣に考えるべきだし、絶対に成功させるためには何をして、その成果がどのくらい株価に影響を与えるかも深く考えた上で、足りないと思えば他に何ができるかまでこの時期に考えておかないといけません。
五十嵐:スピード感が大事ですね。
白井さん:その通りです。まずは早急にリスク管理委員会を設置しましょう(※)。メンバーには法務・広報・経営戦略のキーパーソンを入れてください。そして、リスク改善に取り組みながら、ダウンサイドリスク減少とアップサイドポテンシャルの両面をしっかりと株主や投資家の皆さまにお伝えしていきましょう。「一流の企業広報」をお教えしますので、皆さん方もぜひ頑張っていただいて、本当にこの株を持っていて良かったと思える会社にしてください。
五十嵐:頑張ります! これからどうぞよろしくお願いいたします!
※インタビュー後すぐにリスク管理委員会を設置し、既に11月より取り組みを開始しております。
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