音楽の話:バイエルン州立オペラ(ミュンヘン)、22/23シーズンの上演予定発表、ウクライナ侵攻の影響、ステージ製作場所の見学

5月5日、バイエルン州立オペラ(ミュンヘン)が22/23シーズンの上演予定を発表しました。

上演予定は以下のサイトで見ることができます。

https://www.staatsoper.de

同劇場専属のオーケストラ、バイエルン州立管(Bayerisches Staatsorchester)の歴史は1523年に遡ります。
つまり来年は設立500年です。これを記念して22/23シーズンと23/24シーズンには特別な催しが計画されています。


写真は22/23シーズン上演予定発表時、左から

同劇場支配人:セルジュ・ドルニィ
バイエルン州学問・芸術大臣:マルクス・ブルーメ
同バレエ・ダイレクター:ローラン・イレール
同劇場音楽総監督:ウラディミール・ユロフスキ

ブルーメ大臣は昨日のゲルトナープラッツ劇場の発表に続いて連日の出席です。

©️Wilfried.Hoesl

4月4日、同劇場バレエ・ダイレクターのイーゴリ・ゼレンスキーが突然辞任しました。
ゼレンスキーは2016年からバイエルン州立オペラのダイレクターを務めていました。ウクライナ侵攻後、プーチン大統領と距離を置くことを求められていました。
ゼレンスキーはこれについてはコメントをせず、『家庭の事情』により辞任しました。

イレールはフランス出身、長きにわたってパリ・オペラ・バレエの花形でした。
ゼレンスキーの後を受けてモスクワ・バレエの芸術監督を務めていましたが、ウクライナ侵攻に反対しモスクワの同職を辞任していました。
今回は再びゼレンスキーの後任としてミュンヘンに着任します。

音楽総監督ユロフスキはロシア出身。
ウクライナ侵攻直後から抗議を続けています。
この写真でもウクライナと連帯のブルーと黄色のバッジをつけています。
ユロフスキは、バイエルン州立オペラで「プーチン大統領の援助を受けていないロシア出身音楽家を支援し、共同作業を続ける」、「ロシア出身の作曲家の作品を取り上げる」ことを言明していました。


さて、バイエルン州立オペラの舞台装置製作所の見学をしました。
同オペラはミュンヘン郊外に大規模な製作所を持っています。1983年に購入したそうです。

現在、100作品を400個のコンテナに入れてこの郊外の倉庫に保管しているそうです。
しかし今、さらに500個のコンテナを保有できる倉庫を建築中です。

ちなみに劇場内には間近に上演される4作品を保管しています。

では1作品にどれだけのコンテナが必要かというと、平均して7個。
しかしこれまで上演されていた《ワルキューレ》には22個のコンテナを必要としていたそうです。ただ、この《ニーベルンゲンの指環》はもう上演しないため、「スペースが随分と空くんですよ」ということでした。

秘密を含むため、内部の写真はありません。


劇場の舞台裏や舞台装置製作所の見学は、とても興味深いものです。

劇場は一般向けのバックステージ・ツアー、そして上演についてはドラマトゥルクによる説明会などを積極的に行っています。
機会があれば是非参加をお勧めします。


ところで、同オペラの大スポンサーの一つにBMWがあります。

もう25年にわたってスポンサリングをしています。

写真は劇場前に並んだBMWのiX。最新の最高級電気自動車です。
価格は8万ユーロくらいから。

©️Kishi
©️Kishi

ドイツの劇場予算に占める割合は公的支援が大部分です。
加えて、大中小企業、そして個人の寄付金で支えられています。
ドイツのオペラ劇場の中で、全予算を入場料金でカバーする率の最も高いバイエルン州立オペラですら、その割合は25%ほどです。他は10%くらいです。

そして政治家はもちろん、スポンサーは決して芸術面などの内容に口を出さない。

芸術や表現の自由を守る姿勢は徹底しています。

憲法で定められた表現の自由を守るのは、まず政治家や役人、つまり公僕の大きな義務です。






この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?