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コンサート:WDR響メンバーによる室内楽(5月26日、ケルン・フンクハウス)

5月26日、ケルンのフンクハウスでWDR響メンバーによる室内楽のコンサートを聴きました。

WDR響はドイツ西部の大放送局WDRが持っているオーケストラです。
シンフォニー・コンサートはケルン・フィルハルモニーで行いますが、室内楽など小編成のものは放送局の建物のひとつフンクハウスで行います。

ラジオ放送もあります(7月2日、20時4分から)。

プログラム。

素晴らしいプログラムですが、難しい作品が揃っています。

ギデオン・クラインは『テレージエンシュタットの音楽家』の一人です。
クラインはテレージエンシュタットからアウシュヴィッツ、フュルステングルーべに移送されました。解放の直前に25歳で命を落としています。
生き延びた姉エリシュカがギデオンの作品をまとめ、出版し、1994年には『ギデオン・クライン財団』を設立しました。

この《弦楽三重奏》は彼の最後の作品です。
前日の夜、エッセンでアルバン・ベルク作曲《ヴォツェック》プレミエを観たこともあり、クラインがベルクから受けた影響を思いました。

演奏順は作曲年代を遡ります。
バルトークの《弦楽四重奏曲第3番》が終わって。

シューベルト《弦楽五重奏曲》は死の2か月前に作曲されました。
チェロが2と珍しい編成です。長大な曲です。
私はいつも《交響曲第8番〈グレイト〉》との共通点を思います。
大好きな曲です。

ところで、5月6日、映画《Sterben》(マティアス・グラーズナー監督)を観ました。
ちなみにこの映画は今年のベルリン映画祭で、銀熊賞と最優秀脚本賞を受賞、ドイツ映画賞では主演女優賞、助演男優賞、長編映画賞、映画音楽賞を受賞しています。

日本では未公開のようなので、邦題が不明ですが、直接訳すと、『死ぬこと』、『死』という意味です(私は『死ぬということ』と言いたい)。

主人公トム(ラルス・アイディンガー)は指揮者で、友人の作曲家の作品の世界初演のリハーサルをするシーンがあります。
そこではリハーサルに満足しない作曲家がオーケストラのメンバーに英語で作品を説明するのですが、セリフでは「Sterben」を「Dying」といっていたので、邦題では《ダイイング》が良いかもしれませんね。

この映画の中で、作曲家はクリスマスに自殺します。
自殺する前にトムを自宅に呼び、延々と語ります。
その時、作曲家がかけたレコードから流れる曲がこのシューベルト《弦楽五重奏》の第二楽章でした。

この映画《パーフェクト・デイズ》の監督ヴィム・ヴェンダースも絶賛していました。

私は《パーフェクト・デイズ》との共通点においても、とても面白く観ました。
私が思うには《パーフェクト・デイズ》は『死』が反映されており、それを通して「生」が描かれる、そんな感想を持ったからです。
そして、18世紀末から続くドイツ文学史上の重要テーマ『影』も脈々と流れており、ヴェンダースのドイツ文学への造詣も思ったのです。
機会があれば、とりあげたいと思います(みなさん、ご興味ありますか?)。

コンサートが終わると良いお天気。
中央駅に向かう途中、ケルンの大聖堂もくっきりと聳え立っていました。

FOTO:(c)Kishi

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