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Bayerisches Staatsorchester 09.10.23 コンサートの記録:キリル・ペトレンコ指揮バイエルン州立管 (10月9日、ミュンヘン、ナツィオナールテアター)

10月9日、キリル・ペトレンコ指揮バイエルン州立管のコンサートを聴きました(ミュンヘン、ナツィオナールテアター)。
バイエルン州立管はバイエルン州立オペラ専属のオーケストラです。

ペトレンコは現在、ベルリン・フィルの芸術監督ですが、2013年〜20年までバイエルン州立オペラの音楽総監督でした。

国際的なオペラ専門誌『オーパンヴェルト』は毎秋、その年鑑でその直前のシーズンの成果を批評家や専門家、ジャーナリスト約50人にアンケートをとります。

今年の年鑑2023年でも22/23シーズンの成果が発表されましたが、バイエルン州立管は〈最優秀オーケストラ〉に選ばれました。
これまで同管は〈最優秀〉に11回選ばれています。つまり、08/09シーズン、11/12シーズン、そして13/14シーズン以降はコロナのロックダウンだった20/21シーズンを除いて9年連続です。

と言うことは、『今、オペラを観るなら、ミュンヘンで』と言うことです。
演出や歌手はその時の出来、不出来がかなりありますが、オーケストラは安定しています。

また同年鑑の〈最優秀指揮者〉には今年もキリル・ペトレンコが選ばれました。
ペトレンコはこれまで〈最優秀指揮者〉に7回選ばれています。

私がペトレンコの名前を目にしたのは2001年、マイニンゲンでのワーグナー《ニーベルングの指環》四夜連続公演でした。
その後、2002年から07年まで音楽総監督を務めたベルリン・コーミッシェ・オーパーでの数々のオペラやオペレッタ(!)指揮が素晴らしく、日本の音楽関係者に薦めたのですが、当時は誰も耳を貸そうとしませんでした・・・。

そういえば、サイモン・ラトルがベルリン・フィルの芸術監督を辞めると発表した後、ある日本の音楽雑誌が「後任候補を5人挙げるアンケート」を日本人の評論家(20人ほどだったと思います)に依頼したことがあります。私も頼まれました。
そこで「キリル・ペトレンコ」の名前を挙げたのは、私一人だったと記憶しています(違っていたらごめんなさい)。それほど日本では知られていないんだ、と逆にびっくりしました。


さて、バイエルン州立管は今年創立500年を迎えました。→

この500年記念行事の一つに、存命中の歴代音楽総監督を招いてのコンサートがあります。キリル・ペトレンコももちろんそのうちの一人です。

今シーズン最初のアカデミー・コンサート、ペトレンコ指揮のコンサートのプログラムはマーラー作曲《交響曲第8番》〈千人の交響曲〉。ただし、この副題〈千人の交響曲〉については、世界初演のプロモーターのアイディアであり、マーラー自身は受け入れていませんでした。

そして、マーラーは作品を妻アルマに献呈しています。

この作品の規模は音楽史上最大級であり、今回もオーケストラ、8人のソロ歌手、合唱団、少年合唱団、バンダなど約350人の演奏によるものでした。

プログラム。

この作品の世界初演は1910年9月12日、場所はミュンヘンの現ドイツ交通博物館でした。オーケストラは現在のミュンヘン・フィル、指揮はマーラーでした。

初演は大成功、多くの音楽関係者、文化人、政財界の重鎮たちも駆けつけ、文化・社会的大事件でした。

それから113年経た今年のコンサートのチケットは売り切れ、聴衆はスタンディング・オーヴェーションで讃えました。

ただ、ナツィオナールテアターはオペラ劇場であり、シンフォニーを聴くには音響的には厳しい。私の席は1階後方右だったので、覚悟はしていました。
しかし、ペトレンコの、いつもの細部へのこだわりと、一方でスケールの大きな音楽作りにはすぐ魅了され、音響が気にならなくなるほど音楽に没頭しました。

ところで、私が初めてこの作品をライブで聴いたのは1991年11月、東京サントリー・ホールでした。
WDR響(当時はケルン放送響)がガリー・ベルティーニ指揮でマーラーの交響曲全曲チクルスの来日公演を行っていたのですが、その一環でした。

冒頭、オルガンが響きわたる直後に合唱がフォルティッシモで「Veni, veni, creator spiritus!」と歌い出す。そこで圧倒されてしまったことを昨日のことのように思い出します。

その時のライブ・レコーディングのCDです。

これでもわかるように、合唱団は、ケルン放送合唱団、プラハ・フィル合唱団、シュトゥットガルト放送合唱団そして東京児童合唱団。
歌手にはソプラノのユリア・ヴァラディ(ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ夫人)もいます。
あとで聞いた話ですが、ソリストも8人いると、色々揉めたりするのですが、その折に、みんなを宥め、まとめるのはヴァラディだったそうです。

当時、日本経済もバブルがはじけた直後とはいえ、まだ勢いがありました。スポンサーもついたと聞いています。
とはいえ、当時でも「マーラー・チクルス」を外来オーケストラと合唱団で行う、これほどの大きなプロジェクトは簡単ではなかったと思います。

当時の関係者に尊敬と感謝を捧げたいと思います。

そして、日本でもまたこのような素晴らしいコンサートができることを祈っています。

やはりコンサートはライブで聴きたいものです!

FOTO:©︎Kishi

下の写真はバイエルン州立管(オペラ)から提供の写真です。
© Wilfried Hösl

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代表:来住 千保美(Chihomi Kishi)
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