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Bayerische Staatsoper 05.03.23 オペラの記録:バイエルン州立オペラ、《戦争と平和》プレミエ(3月5日、ナツィオナールテアター)


3月5日、バイエルン州立オペラの新制作、プロコフィエフ作曲《戦争と平和》の初日を観ました。

ちょうど70年前の3月5日、プロコフィエフとスターリンが亡くなりました。
この日にプレミエを迎えたわけです。

《戦争と平和》はトルストイの大作をオペラ化したものです。
オペラも大作で上演の機会はとても少ない。
世界一のオペラハウスであるミュンヘンでもこれまで上演されておらず、今回が初めての上演でした。

私はこれまで一つの制作を観ただけです。
2011年、ケルン・オペラの新シーズン開幕のプレミエ公演でした。
資料を見ると、演出はニコラス・ブリーガー、指揮はミヒャエル・ザンデルリングでした。歌手はアンドレイ役ヨハネス・マーティン・クレンツレ、ピエール役マティアス・クリンクなど、今のスター歌手を含め、29人のソリストが出ています。

周囲のオペラ関係者に訊くと、多くの人たちが上演に触れた機会が少なく、これまでケルンのこのプロダクションくらいしか観ていないことがわかりました。

プログラム。
まずこれは指揮者や演出チームの名前が出ています。

そして配役表。
登場人物の多いこと!
左ページだけでは足りず、右ページまで出ています。

そして17時に始まり、1回の休憩(約40分)を挟んで終了は21時10分頃と記載されています。上演時間は約3時間半ですが、これはカットされた部分もあるので、全曲上演よりも短くなっています。

《戦争と平和》というタイトルですが、実は『平和』と訳されている『MIR』には古ロシア語で「平和」、そして「(人間の)社会」という意味があるそうです。
指揮者ユロフスキの説明によると、トルストイは最初の版で「社会」を意図した、しかしプロコフィエフはそれに距離を置き、作品の第一部で「平和」に、第二部で「戦争」に重点を置くと、明確に分けたそうです。

さて、今回のカット部分です。
第一部「平和」の部分(第7場まで)はほとんどカットなしでしたが、「戦争」部分(第8場〜第13場)ではカットも多く、第10場は全てカットされました。

カットの方法については、ユロフスキの説明によると、「プロコフィエフは映画音楽を多く作曲しており、彼の作曲方法のおかげでカットが無理なくできた」そうです。

カーテンコール。


指揮台がいつもより高く、私の席からユロフスキの上半身がよく見えました(ユロフスキは長身です)。
ステージの奥行きが深く、コーラスが常にステージに載り、そしてバンダ(ステージ上の器楽奏者)もいるため、指揮台を高くしないと、見にくいのではないかと思いました(もちろんモニターもありますが)。
しかしこちらにとっては、指揮姿が見えるのはな幸運なことです!
一箇所、ピット内のオーケストラ、合唱、バンダが合わなくなりそうでハッとした瞬間がありましたが、その時も一瞬で持ち直す、そのリスク・マネージメントを支える音楽的運動神経には惚れ惚れするほどです。


指揮のユロフスキと演出のチェルニアコフが2人で出てきました。2人ともソ連生まれです。
ユロフスキが左胸につけているバッジは『ウクライナ支援』のバッジです。

チェルニアコフは現在バイロイトで上演されている《さまよえるオランダ人》の演出も手がけています。
ベルリン州立オペラでバレンボイムと共同作業をしてきたことも彼のキャリア形成に大きく影響しました。

ただ、私自身はそれ以前、たとえば、2008年ライン・ドイツ・オペラ(デュースブルク)で観た《ムツェンスク群のマクベス夫人》の演出がとても印象に残っています。
それから15年。
いまやスター・オペラ演出家になりました。


これはプログラムに挟まれたポスター。
中央の白シャツがアンドレイ、水玉のワンピースがナターシャ。
こんなに人がいても、誰かすぐわかりますよね。

ちなみにステージ中央部に掲げられたロシア語は「あけましておめでとう」なのだそうです。
発音は「ス・ノーヴィム・ゴーダム!」で「with New Year」。
頭に「私は祝います」という主語と動詞が省略されているそうです。
※ロシア語ができるY.A.さんに教わりました。ありがとう!

ユロフスキの音楽づくり、優秀なオーケストラと合唱、チェルニアコフの仕事、意味深いステージ美術、優秀なドラマトゥルギー、いや、すごい劇場体験でした。


さて、arte でこの公演を見ることができます。

しかし、できればやはり劇場で観ていただきたい。

大作ですが、原作を読んだ人も、映画を観たことのある人も多いと思います。
ただ、アメリカ映画のそれはオードリー・ヘップバーンのイメージがどうしても強すぎますが・・・それでも、おかげさまでストーリー自体は有名なので、筋についていくのにそう苦労しないで済み、演出の意味を考え、音楽に耳を澄ますことができるのではないかと思います。


以下は同オペラのホームページです。

https://www.staatsoper.de/stuecke/krieg-und-frieden


FOTO:©️Kishi

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