超リアルなテレビ局の仕事について改めてまとめてみた
テレビ局の仕事はハードワークでブラック…という印象はまだまだ強いと思います。
しかし、皆さんはテレビ局の仕事をどれだけご存知でしょうか?
制作の「現場」と呼ばれる部門以外にも様々な部署があり、テレビのビジネスも多様化していることから、活躍のフィールドは多岐に渡ります。
本記事ではテレビ局のお仕事を部署別に徹底解説し、理解を深めてもらうことで、自身の強みを活かせる仕事を知るきっかけになれたらと思います!
テレビ局はブラックって本当?
確かにちょっと前までは制作は3日連続徹夜が当たり前、1ヶ月に1回家に帰れるかどうか…という過酷な環境であったことは間違いありません。
しかし、昨今の労働環境見直しを受け、どの部門でも休みをきちんと取らないといけないよう厳しく指導が入るようになってきました。また1日の労働時間の上限や労働日の間にもきちんとインターバルをとらないといけないです。これはどの局でも同じかと思います。
事実、有給休暇を取れていないと人事から注意されました。
また、最近だと女性だけでなく男性の育児休暇を取る風潮も強くなってきました。弊社(都内某キー局)も積極的に取得する男性が増えてきた体感です。(非常に良い傾向です)
家庭環境や親の介護という環境変化があった場合、積極的に休暇が取れたり現場部門から一時的に離れて無理のないスタイルで働くことができる…という形で、社員の希望が通りやすくなってきた印象です。
また副業もOKになったりと、多様化する労働スタイルに適合してきているという実感です。
特番の追い込みや大型スポーツイベントなど、どうしても忙しさが集中する時期があるのも事実ですが、終わればゆっくり休みが取れるという安心感があります。
また、ハラスメントについても取り締まりが厳しくなりました。
私の世代がハラスメントを目の当たりにしてきたギリギリ最後の世代かもしれません…笑
コロナ禍で飲み会が禁止になった影響で、以前みたいな激しい飲み会のような出来事は今後なくなると思います。
私はまったくお酒が飲めないのですが、「無理しなくていいよ!」って雰囲気なので正直ありがたいです。
ただ、本音で語ります。テレビの仕事で特に制作に関わりたいのであれば、テレビ局員か規模の大きい大手制作会社に限ります。正直、小規模の制作会社になるとまだまだ人を使い捨てるような厳しい労働環境のところもあります。
営業・編成の仕事について
テレビのビジネスモデルって?タイムCMとスポットCMについて解説
テレビのビジネスモデルの大部分はCM収入です。
CMにも売り物が大きく2種類あり、タイムCMとスポットCMの2つです。
ざっくりこれだけ覚えればOK!
タイムCM→番組を指定してCM枠を買う
スポットCM→期間や時間帯を指定して予算に応じて買う(番組指定不可)
「タイムCM」は特定の番組のCM枠を買う商品です。「この番組はご覧のスポンサーの提供でお送りします」というアナウンスを聞いたことがあると思いますが、まさにこれです。
タイムCMを買うことで、一定期間同じ商品を訴求できたり、特定の番組視聴者に対して継続的にPRすることができます。
「スポットCM」は番組内や番組の境目などのCM枠内で放送する商品です。タイムと比べて番組を指定できず、アナウンスも流れないので継続認知できないのがデメリットですが、様々な番組でCMが流れたり、限定的な予算でもCMを放送することができます。
どっちも重要ですが、テレビ局としては番組を認められ、セールス額も大きいタイムが売れると嬉しいですね。
営業のお仕事
テレビ局の主な収入である「タイム」「スポット」をスポンサーにセールスし、スポンサーの知名度や商品価値のUPとテレビ局の利益を追求する、双方にとってWINな関係を構築します。
間に入る広告会社(局担)と営業部はともに戦っていく兄弟のような関係になります。笑
一般的な事業会社の営業と比べてテレビ局っぽいな〜と思うのは、営業でも番組企画を提出し、制作の機会があること。
例えばスポンサーの課題が企業ブランド価値の向上だとしたら、番組とコラボしたリッチなCM(インフォマーシャル)を制作したり、PRイベントを実施したりします。
また、スポンサーにとって最適なソリューションが30分の番組だとしたら、営業部員が自分で企画書を書いて提出、プロデュースまで行うこともあります。
営業の仕事だから…といって、クリエイティブスキルが要らないというわけではないです!必ずセンスが活きる場面があります!
編成のお仕事
いわゆるテレビ局の司令塔的役割です。番組を成功に導くために、視聴率や視聴者の動向を徹底分析し、制作部門にフィードバックします。個の番組単位から全日単位まで、テレビ局のタイムテーブル全てをデザインする重要なポジションです。
また、新番組の企画募集や策定まで行い、若手の制作者を育てたりするのも編成の仕事だったりします。クリエイティブな視点と会社の利益の視点、双方が求められることが多いです。
制作や営業経験者は一度編成のキャリアを挟むのが多い印象ですね。
また、視聴率の詳細な分析や競合調査を行うマーケティング部や、番組をより魅力的にPRする宣伝部も編成と隣接した組織にある印象が強いですね。
現場部門(制作・報道・スポーツ)について
テレビ局の現場において大切な認識
現場部門は直接的にモノづくりに関わるので会社にとっても就活生にとっても花形ですが、
テレビ局の現場部門において大切なことは、番組の利益が会社の利益にどう結びつくか?というプロデューサー目線です。
番組だけを作ればいいや…ということではなく、目の前の成果が視聴者、スポンサー、会社の「三方良し」になっているか、という認識がテレビ局員には求められます。
けど、迷ったときは視聴者ファーストだとも教わりました。
就活生が考えるべき具体的なアクションとしては、やりたい番組を企画するだけでなく、どのようなスポンサーを獲得して、配信やイベント、事業などの二次展開に応用し、どうやって視聴者をファン化してビジネスに巻き込んでいくか…まで踏み込んで考えてもらえると、「おおっ」って思います。
制作のお仕事
局にもよりますが、制作局と呼ばれる部門は「バラエティ」「情報」「ドラマ」を扱うことが多いです。
バラエティ制作においてはPT帯(19:00〜23:00)の番組をテレビ局が手掛けることが多いです。
情報番組は昼〜夕方帯、ドラマはGH(19:00〜22:00)から深夜帯まで様々ですね。
一般的に、制作局ではAD→D→総合演出orプロデューサーの畑を歩んでいきます。
プロデューサーは番組を成立させるために出演者やスタッフ、予算を決め、社内外を徹底的に調整しますし、総合演出はよりよいものに仕上げるためのジャッジを下すポジションになっていきます。
自身の興味関心をどうアウトプットして世に伝えていくか?タフですが非常に面白い仕事です。
報道のお仕事
政治・経済・社会それぞれのテーマで取材し、ニュースとして伝えていく義務があります。
情報が即時性なのに対し、長い時間かけて取材するドキュメンタリー部門もあります。
報道は局によってカラーが異なり、TBSであれば政府や捜査当局の発表に依らない、独自の課題を取材する「情報調査ユニット」や、テレビ東京の場合「ワールドビジネスサテライト」など、経済分野に特化した報道スタイルが存在します。
選挙特番はある意味「お祭り」のような雰囲気ですね。局が一丸となって取材力を競い合う一大イベントです。
スポーツのお仕事
様々なスポーツの取材、ニュース制作、オリンピックや世界大会など特番の制作を担当します。
スポーツ中継ではディレクターや技術班と綿密なコミュニケーションをとりながら、視聴者が最も熱狂するカットや瞬間を最大化できるよう細部まで詰めていく姿は職人的です。
なんといっても、歴史的瞬間に立ち会えるのはこの上ない喜びですよね。
現場の熱狂やスポーツの素晴らしさを伝える一方で、まだ一般的には認知度の低いマイナースポーツや新たなブームに目を向けるのもテレビ局員の使命です。
日本テレビの箱根駅伝が作り上げてきた歴史の重みはすごいと思いますし、テレビ東京が初期から追い続けてきた卓球の秘蔵映像なんか出てくると、着眼点の良さを感じます。
スポーツが純粋に好きで、それに関わる人々に惚れ込むことができる人が向いているな〜と思います。
配信・ライツビジネス・アニメ・イベント事業について
テレビ局第2の収益の柱を知っておこう
テレビ局の収益源はテレビCMと伝えましたが、視聴率に依拠するビジネスモデルは限界を迎えているのも事実です。
テレビ局としては、CM収入に頼らない新しい収益の柱を構築しなければなりません。
テレビ局がもつ圧倒的なコンテンツ力とアーカイブ性、これを放送以外の部分で展開していく必要性に気付いたのはつい最近の話です。(いわゆる放送外収入)
多くは配信セールス、ライツビジネス、イベント事業などが挙げられます。
配信ビジネスの仕事
今やテレビ局と配信社は切っても切れない関係性です。
「もう一度見たい方はTVer、過去の放送回を見たい方はHuluで!」という告知は絶対に入りますよね。
TVer(無料)にも広告は入りますが、テレビ局としては定額課金制の配信サービス(SVOD)への誘導によって利益を最大化できます。
配信サービスの利益最大化としては、単に配信するだけではなく、ドラマスピンオフのような配信オリジナル作品の提供だったり、全話独占配信などの施策を行うことで新規会員登録者数の増加、作品の視聴回数UPによる継続契約を狙うなど、メリットは様々です。
深夜ドラマに顕著ですが、最近は配信ありきで企画を考えることもあります。ある程度ファンのついた漫画原作や、不倫を扱ったテーマなどはウケやすいんですね。
テレビ局として制作側と配信社側の調整、あるいはテレビの二次使用における権利処理(著作権法に触れないかチェック)など業務は多岐に渡ります。
今後テレビ局を受ける人にとって、番組を作りたい!だけでなく、番組を作ったその先の展望を語れる人が重宝されることは間違いありません。
ライツビジネスの仕事
ライツビジネスとは、テレビ局が保有する番組・コンテンツの権利を売買するビジネスです。
例えば配信で展開する際にも、どのような権利問題をクリアしないといけないのか?という知識がプロデューサー、ディレクターに問われ、ライツの重要性は高まっています。
先の配信ビジネスによる展開だけでなく、番組派生のキャラクターのグッズ化であったり、番組のフォーマットを海外に販売したり、無限の可能性を秘める分野です。
アニメの仕事
テレビ局として、企画立ち上げからアニメを放送しどうビジネスにもっていくか?というのをデザインするスキルが求められます。
多くは「製作委員会」に参加し、委員会の収入の一部を出資比率に応じて受け取るというビジネスモデルです。
アニメの制作自体は制作会社中心で行われますが、資金調達から関係各社との交渉、予算管理から放送チェックまでデスクワークも非常に多いです。
決して放送だけに囚われることはなく、舞台化やイベント化の提案なども放送局としては積極的に推進していきます。
近年はフジテレビ「鬼滅の刃」テレビ東京「SPY×FAMILY」のように、23時台からオンエアする傾向もあり、アニメが動かすインパクトの大きさを感じます。
イベント事業のお仕事
テレビ番組から生まれたイベント、例えばテレビ朝日「キョコロヒー」の公開トークイベントや、テレビ東京「ゴッドタン」マジ歌ライブのような番組発の企画から、フィギュアスケートのようなスポーツと連動したイベントまで、多くのジャンルを手掛けることになります。
また、テレビ局が主催・出資する舞台や展示会の運営〜制作も行ったり、「お台場冒険王」のような局をあげたイベントを主催することも。
テレビ局が主催なので、強みは自分で告知を制作して放映まで出来るところ。ものによっては30分や60分の特集番組をプロデュースすることもあります。
オンラインやオフラインの両面から企画立案できるセンスが求められる時代になっていますが、イベント事業の魅力はお客さんの反応がリアルに返ってくるところ。普段見えない視聴者の顔が見られる、貴重な仕事だったりします。
アナウンサーの仕事
筆者はアナウンサーではないので、あまり詳しく語りません…
この記事を読んでくださるアナウンサー志望の就活生に伝えておきたいのは、ものすごく「準備」に時間をかけるところ。
アナウンサーは番組を進行したり、ニュースを伝えるだけでなく、制作スタッフの一員だと考えているのが普通です。
インタビューを行う機会があったとして、その人の経歴や生い立ち、世に出ている記事や著書などくまなくチェックする「準備」のものすごく時間をかけています。
準備に時間をかけているからこそ、淀みなく進行したり、不測の事態に陥っても冷静に対処できるのだと思います。
技術のお仕事
これも技術職採用ではないので多くは語ることができません…
しかし、今後の展望をイメージしておくと、放送技術だけに留まらない領域が求められているということ。
VRやARなどxRと呼ばれる分野をどう放送と融合させるか考えたり、AIを放送局はどう活用していくかなどのビジネスセンスも求められてくると思います。
データサイエンスの分野から新規技術開発の分野まで、学生時代に培ってきた学習分野すべてが活かされてくる環境になっていくと予想します。
さいごに
今回はテレビ局のお仕事について書きました。
働いている実感からして、毎日楽しいし、ここ数年で本当に働きやすくなった!というのが実感です。出社とリモートワークを柔軟に選択することができて、無理なく働ける環境となり非常に助かっています。
筆者も部署異動を経験していますが、異動するとまったく違う会社に来たような気分で、そういう環境を楽しめる方には向いていると思います。
また、テレビ局は制作じゃないと嫌だ!という学生さんも、テレビの仕事を幅広く知ることで、より強みを活かせそうな分野を見つけたり、よりテレビ局に興味を持ってもらえれば幸いです。
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