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大学生自転車日本一周旅十日目:秋田駅から山形県鶴岡駅へ

本編

 穏やかな心。それがこの日のテーマ。前日は一日を通して散々だったので、今日は幸せに終わりたい。そう願いを込めて出発。

 秋田市からは新潟県の上越市に向かうまで基本的に日本海に沿って行く予定で、内陸地に比べて標高は低く山登りもないはずだったので、やっと楽ができると思ってウキウキしていた。天気もやっと晴れ。仙台に行った日以来のいい天気。やはり、人生の幸不幸にも波はあって、マイナスの後はプラスなんだなんて思いながら海沿いを出発。

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 実際は海沿いとはいっても上り下りは多く、決して楽なコースではなかった。海のそばまで行くと向かい風を受けてスピードを維持するのも大変だった。だが、山越えは無く精神的にも落ち着いていたので、右手の海と左手の山を視界に入れながら気持ち良く漕いでいた。途中で「日本縦断旅」をしている人もいたりと、ここではすべてが穏やかに流れていた。因みにその人は北海道から沖縄まで行くらしい。北海道と沖縄を省いた似非日本一周家からしたら、尊敬に値する。ただし、抜かした時には携帯をいじくって立ち止まっていたから、終わる見通しが立っているのかは知らないけど。

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 由利本荘市に抜けていくほどに自然をすごく感じられ、前日白神山地の景色を全く楽しめなかったのも相まって、すごくいい場所だなと思っていた。アクセスは良くないだろうけど、居心地のいい場所だった。景色もきれいだった。

 海沿いのアップダウン道が終わって、市街地に入る。その勢いそのままにインターネットで評判だった「松韻」というラーメン屋に入店。通っていた国道沿いに店を構えていたというのも地味にポイントが高い。少し場所が分かりにくく一度通り過ぎてしまったけれど、12時ごろには入店することができた。

 店内ではすごくいい香りが漂っており、店内に「当店では素材の風味を最大限に生かすため化学調味料は一切使用しておりません」という張り紙もされているところにも、店主のこだわりもうかがえた。カウンター席しかなく、店主の動きが結構見える。いりこのような魚で取っただしを器にそそぐときに店内に充満する香りは、素朴でまっすぐであるがゆえに確実に心をとらえて、ますます一杯を楽しみにさせた。ついに提供されたラーメンは期待を裏切ることなく、高い評価にも納得の満足感で心の中も満たされながら店を後にした。

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 ここからは午後の部、鶴岡市を目指すことに。さて、突然だが、ラーメンと言えばどこの都道府県が思い浮かぶか。個人的には出身地ということもあって、福岡県の豚骨ラーメンが思い浮かぶ。福岡ではないにしても、伝統があって有名なラーメンが食べられる地域が思い浮かぶだろう。しかし、県民一人当たりのラーメン消費量が一番多いのは、福岡でもどこでもなく、山形県らしい。この旅で山形県を訪れた際に初めて知ったが、県の西側はラーメンが盛んらしい。というわけで、夜ご飯は酒田市か鶴岡市でラーメンを食べることにした。そして、それをモチベーションに自転車を漕ぐ。今日はラーメン日和だ、なんて言いながら。

 ただし、道のりは決して甘いものではなく、上りなのに歩道がないなんて場所もざらであった。だけど、昨日とは違って全く焦りがなかったので、安全に最大限留意しつつ着実に漕ぎ進めていった。そして、山形県に再突入し酒田市を通って鶴岡市へ。

 ここまでの雨続きで濡れて重たくなった服がバッグに溜まっていたから、洗濯をして乾かし軽くしたいと思っていた。だが、行こうと思っていたコインランドリーがコロナで休業していた。なんて不運だ。諦めてラーメン屋へ向かうことに。

 入店したのは「千石や」。時間帯が早かった影響もあってお客さんは俺以外に一人しかいなかったが、おすすめと言われた醤油ラーメンを注文し実食。昼に訪れた松韻も醤油のラーメンではあったが、それとはまた違った美味しさで俺にぶつかってきた。ラーメンデイは大満足でフィナーレへと入っていく。

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 この日は初めてアパホテルに泊まることにしていた。昨日まで散々で今日はゆっくり泊まりたかったから許してくれい。このころは完全に野宿という選択肢が消えていた。雨続きだったのもあるし、なんせしんどすぎた。毎日が最高のしんどさを更新してくるという地獄のような一週間だった。その点この日は幸せすぎた。

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 これまでのホテルに比べると少々値段は上がるが、格別に高いわけでもなく4000円で予約が取れた。部屋が余っていたのか、チェックインするときにダブルの部屋を用意しておいたと言われた。入室してみると広い部屋にめちゃめちゃ大きなテレビが。ビデオ視聴も無料どころか、映画やバラエティなども大画面で見ることができる(何ならアダルトも)。タオル等ももちろん二人分で、汚い体にはちょうど良かった。ホテル自体も新しいのかきれいで、過ごしやすかった。エレベーターや部屋では、社長の著書などをゴリゴリに押し出しまくっていて、ちょっとうっとうしさはあったけど。

 実際にどれだけ的を射たことを発信しているのかは正直知らないが、なんかそれをゴリゴリ前面に出されると何か危ない宗教臭がしちゃう。まあホテルとしては満足だったからいいんけど。後、ほとんどVODを見ることはなかったけど、あれもがっつり活用しますっていう人にとっては、もっと安いがこれといった特徴のないビジネスホテルよりもむしろコスパがいいんだろうね。

 この日は、とにかく前日の反省を生かして穏やかに進んだ一日であった。そのおかげか、天気も良かったし、おいしいラーメンを二回も食べられたし、景色はよかったし、ホテルでゆっくりできたし。大満足。ちなみに鶴岡駅の駐輪場の看守さんはとても元気のいい人で、停めに来る学生も明るく挨拶をしている珍しい駐輪場だった。

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 てか、山形駅だけじゃなくて、山形自体が駐輪場の料金システムが面倒くさいんだね。日付越えたかどうかで料金が変わってくる。夜から次の日の朝までで二日間の料金持っていかれるのは納得できない。結局100円だったからいいんだけど(もっとだるい駐輪場も今後であったから、山形はまだマシだった)。

ルート

 秋田県庁から国道7号線に行き、鶴岡市まで南下する。鶴岡駅付近で国道112号線に乗り換え(直進のまま)この日はゴールイン。

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