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大学生自転車日本一周旅三十二日目:熊本城から鹿児島県いちき串木野市まで

本編

 熊本を出発し、鹿児島を目指す。ただし、鹿児島市までは距離的に厳しいものがあったから、この日は野宿をする予定であった。最低でも薩摩川内市へ、できればその先のいちき串木野市か日置市まで。基本的には海沿いだし大丈夫だろうと期待しつつも、熊本の南側からは山がちであるために最低限の心の準備を。

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 出発してまだ間もないころ、熊本市か宇土市か完全には覚えてないけど、「真面目になれない」っていう名前の店があった。真面目ってなろうとしてなるもんじゃないでしょ、と真面目に突っ込んだ真面目(19)。パン屋ってなぜか個性的な名前とか看板とかつけたがる。新潟の上越にも変なのあったなそういえば。この店がパン屋かどうかは分からないけどね。

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 八代まで南下し、歩道はあるが細い道を走っていると、路地の方から急に車が飛び出してきて、ちょうどタイミングがあっちゃったもんだから急ブレーキ。向こうもこっちを見ながら「あぶねー」って言ってた。いや、危ないのお前だからな。どう考えても。教習所で習っただろ、歩道に入る前は一時停止って。平日の昼間に田舎でチャリ漕いでる俺にも非はあるだろうけども。

 八代までは平地続きだったからまだましだったけど、そこからは山が多かった。山がちな地域に入っていくと、急に風が感じられた。それは、坂を登る瞬間に吹いてくる向かい風。もはや坂を登りたくない気持ちが強すぎて風が吹いていると錯覚しているんじゃと思うほど、嫌なタイミングでだけ風を感じる。ここでも押した。全然進まないと嫌気がさしてくる。

 芦北町に着くぐらいから、あれ?後輪の空気結構やばくねってなった。ここは田舎。パンクしたらクソだるいわけ。だけど近くに自転車屋が全然無い。頼む、もうちょっと持ってくれ。パンクする前に空気さえ入れられれば何とかなるから。ちなみに、芦北のコンビニで昼休憩してたら、アイコス吸ってる女も駐車場で休憩してきた。まあまあかわいいじゃねとか思ってたら彼氏か夫か知らんけどあとから車に来てそのまま一緒に乗り込んでいった。人生そんなもん。

 危険とは、認知しなければ危険ではないもの。だが、空気抜けを認知してしまった瞬間から逃げ腰になってしまった。しかも、芦北から水俣市に抜けるところで完全な山登りスタート。後輪の空気を言い訳に、ちょっと頑張った後すぐ押した。実際坂道だと後輪に体重がよりかかりそうだったから間違いではないと思うんやけどね。結構スパッと諦めてチョコチョコ押しながら、行けそうになったら漕ぐ。そんなことを繰り返した。

 空気も気にしながら芦北と水俣をつなぐ津奈木町を抜けて水俣市へ。水俣市は水俣病のイメージが強く、ゴリゴリに工業やってるんやろうな、多分臭いなとか思ってたけど全然そんなことなかった。もっと臭いところはこれまでにいっぱいあった。水俣市にあった自転車屋で空気入れを借りて準備万端。なんとか今回は持ってくれた。細いタイヤは空気圧にデリケートだからやってられんわ。

 水俣市を過ぎると県境を越えて鹿児島県出水市へ突入。ここからも基本的にはど田舎。なんか動物園みたいな臭いがするなって思ったら横が牛舎だった、なんてことも。だけどこの町で一番驚いたことは、なんとJKが登下校の際に原付乗ってる!!最初は見間違いだろうと思ったけど、同じ柄のスカートが何人か続いた時に確信に変わった。カルチャーショック。地元なんか同級生の男子ですら高校生のうちから原付乗ってる方がマイノリティだろうに。道を見れば乗るの納得はできるけど。田舎、雑草、アップダウン、歩道なし。男だからまだ何とか走れているけど、女だったらさすがにしんどそう。しかもこれを週5、6で繰り返さなきゃいけないからね。最初見た時はびっくりして笑いそうになったわ。

 続いて阿久根市へ。ここは海がきれいだった。海に浮かぶ岩に鳥居があって、理由や歴史はなんも分からんかったけど、きれいだからという理由だけで写真も摂っておいた。こういう有名じゃないところにあるきれいな景色に出会えることも旅の魅力。ヤシの木から覗く夕日もこれまた美しい。

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 そして薩摩川内市へ。薩摩川内までは海沿いだけど、ここも歩道無しが多かった。だから結構危なかった。海沿いのほうが山より危険だったりすんのよ。山は通行量がそもそも多くないし。何とか抜け、薩摩川内まであと一歩というところでコンビニ休憩軽く夜飯をつまむ。バイクだったけど、明らかに放浪者か旅人だろって感じの外国人がいた。確か車体に「moom saver」みたいなこと書いてた気がする。

 さて、薩摩川内市の中心部へ。実は、薩摩川内市には、早稲田大学の競走部の合宿に少しだけリレーメンバーで参加させてもらった時に、一度来たことがある。そう、わたくしがお金を忘れていったあの合宿。その合宿で宿泊させてもらった施設は山の方にありそうだったから巡礼は断念したが、300m坂ダッシュを行った学校は山の中ではなかった気がするから、そこへ行ってみることに。だけど、名前が一切思い浮かばない。記憶が正しければ、中学校だったような気はする。グラウンドやその周りの景色も少しぐらいなら覚えているが。

 というわけで、当たって砕けろ作戦。近くの中学校3,4校と高校1校を見に行った。上り坂を越えて。だが、300m以上の坂道があるということはその分高台にあるはず。だけど、どこ行ってもなんか違う。あの時の景色がどこにもない。結局見つからなかった。あと、自分が過去に引きずられてるおじさんみたいになってる気がしてすごく嫌だった。別にそういうわけじゃないけどそう見えるよな。

 日はもうとっくに落ちてんのに、学校探しで一時間以上時間を食ってしまったから、今度は急いで寝床探しへ。次の日は宮崎市に行きたかったから、もう少し鹿児島市に近付いておこうと思って、ここからさらに南のいちき串木野市へ。時間も時間だったから入ってすぐの公園を第一希望に。しかし、ここは寝れたもんじゃない。カラスが上で飛び回ってるし、ライトで明るいし。極めつけはベンチのそばの木にしめ縄がされてる。さすがにこんなところで気持ちを落ち着けて寝ることはできない。

 というわけで急遽寝床変更。海の真横まで行って、灯台のそばのスペースで寝ることにした。めちゃめちゃ波の音が聞こえる。次の日が土曜日だからか、釣りをしに来る車が多い。その車のヘッドライトや人が持ち歩く懐中電灯に何度も起こされながら夜を明かした。一回何人かで来た人が「外国人が、、、」っていう話をしていた。多分俺は外国人放浪者だと思われている。

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ルート

 この日は熊本市からいちき串木野市に至るまでずっと国道3号線を走った。

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