見出し画像

大学生自転車日本一周旅二十五日目:海部郡美波町から高松駅まで

本編

 午前4時、降雨開始。30分もたたないうちに雨が強まっていった。土砂降りとまでは行かないが、小雨でもない。しっかりと雨が降っていた。雨音もそこそこ大きい。完全にこいつに起こされた。だが、比較的ぐっすりと眠れたからいいことにしよう。太陽はまだ布団にくるまっている(こっちは寝袋にも包まらずに寝たんだぞ!)ものの、街灯のおかげであたりは少し明るい。すぐそばにあったファミマで朝飯を取り繕ってくる。分かってはいたけど、やはり雨の日は道のりを想像しただけで嫌気がさす。だけど、一日中この道の駅にはいられないから、飯を腹に入れて少しゆっくりしたら出発。もしかしたら6時前だったかもしれない。

 明け方の車通りが少ないうちに峠越え。標高自体は170m。低く聞こえるが、標高の低い海側から実際に登ってみると案外しんどい。意地でも押さずに登り切ってやろうと思っていたから、必死に登る。朝一ということもあって何とか漕ぎ切れた。時間にも余裕があったから、じっくりと、変に力むことなく走破できた。いい一日の始まりだ。

 峠を越えると阿南市に抜けていくのだが、まあ田舎。ただ、これまでずっと通ってきた海沿いと山のダブルコンボループからやっと脱し、ついに平地を手に入れた。この四国で、漕ぎやすい道路に久しぶりに来たのだ。道自体も広い。そのままの勢いで徳島市目指してgo!。と威勢よく進んでいたものの、まもなく雨は強雨へと変わっていった。結局、最初は快晴だった四国でも雨が降る。ってか何でこんなに雨率高いんだろうね。

 徳島に近づけば近づくほど雨は強まった。隣を同じく自転車で走っているおっさんに、俺が水たまりもお構いなしに走っていたからか「気を付けろよ」と声を掛けられたりもした。高松に近づけば近づくほど雨は止むはずと信じて(雨雲レーダーはそう語っていた)、徳島へと急ぐ。

 無事到着するころには雨のピークは過ぎ去ってはいそうだったが、不安定な天気だから安心はできない。ぱぱっと県庁で写真撮影をすまし、鳴門市を目指す。少し遠回りにはなるが、鳴門市のほうから海沿いを回った方が、徳島市から讃岐山脈の端を突っ切るよりも楽だろうと思ったのだ。

画像1

 ただし、出発直前、徳島駅前で、天気が天気だしこんな日こそ渦潮見に行ったら面白いんじゃね、という考えが頭をよぎった。せっかく鳴門市に行くんだし。調べてみると、渦潮を見ることのできる橋があるらしい。そのサイトでは、この日の満潮は9時30分ごろと書いてある。現在時刻8時30分。鳴門市の中心部までは約15㎞で1時間かからないぐらい。時間もドンピシャだしラッキーじゃん!と思って、鳴門海峡まで行くことが急遽決定した。その場でチケットも取って(オンライン決済あざす)、急いで満潮に間に合うように漕ぎだした。

 およそ一時間後、予定通りには鳴門市の中心部へ来ることが出来た。しかし、そこに鳴門海峡はない。よくよく見てみると、鳴門海峡まではさらに一時間弱かかる模様。はい、計画性が無いからそういうことになるんです。凡ミス。だけどせっかく来たし、気持ちが完全に見るモードに入っていたから、見に行く。潮が引いてしまうから急がなきゃ。

 というわけで漕ぎだしたが、何と、渦潮を見るためには橋を渡って別の島に行かなきゃならないらしい。田舎からど田舎に行くわけだ。しかも、そのための橋は結構な傾斜なのにもかかわらず、道幅は狭く歩道もない。日曜ということもあって車は普通に通っているし、いくらしんどくても降りられない。降りようもんなら間髪入れずにクラクションがやってくる。ここはもう意地で登り切るしかない。てか選択肢は登り切る一択なのよ。

 決死の覚悟で登り切り、橋を降りた少し先のトンネルで歩行者通路へ避難。あー、死ななくてよかった。もうここまでで、心身共にすり減らして疲れ切っているわけだけど、まだ10㎞ぐらい残っている。雨だし、海沿いだから風は強い。でも潮は待ってはくれない。渦潮というご褒美がきれいかどうかは、ここからの頑張り次第。早く着ければそれだけ大きな渦を巻いているはず。必死に漕ぎまくる。アメニモマケズ、カゼニモマケズ。

 ついに、渦潮がみられるという「渦の道」に到着。ただし、最後に45mぐらいの坂登りという試練が!ここは押しながらもなんとか乗り越える。駐車場についたと思ったら、ここからさらに歩かされるらしい。登ったり下ったり、疲れた足では歩くのでさえしんどい。昨日の恋人の聖地で写真を撮るために上った階段が頭にちらつく。何であんなことしたんやろ。

 エントランスに着いてチケットを見せ、いざ入館。てくてく400mぐらい歩き、渦潮が真下に見えるポジションに到着。だが、あれ?これが渦潮?多少の海水がぶつかり合ってるだけ。嘘やろ!?季節の問題もあるやろうけど、しょぼい、、、。やってらんねー!このために頑張ってきたのに。軽いバーンアウト。完全脱力タイム。

画像2

 30分くらいこの日のホテルを探しながら休憩したら、讃岐うどんでも食べに行こうと重い腰を上げた。徳島市からここに来るまでにとても急いだから、トイレ休憩も軽食も何も取っていない。だけど何とかなるでしょ。これから通る道沿いのコンビニを探す。約2時間後!?チャリで2時間何とコンビニが道中にございません。聞いたことある?ここから30㎞ぐらいコンビニがないんだってよ。これだから無計画はダメなんだよ。もちろん鳴門市街に戻ればコンビニぐらいはあるんだけど、それじゃ遠回りになっちゃう。これは我慢だ。俺の忍耐力との戦い。というわけで、勝手に悲劇の主人公グランプリの開幕。

 まず、その渦の道から香川県に入るまでがしんどい。島から島へ。しかも山道。めちゃ登り。ずっと押し続けた。歩道もなければ道も狭かったけど、この日の体力は渦の道までで使い果たしていたから。登り終わったら下りで一気に加速。何とかペースを戻して海沿いを走りながらコンビニを探す。目んたまを¥じゃなくコンビニ各社のマークに換えて。何とかコンビニまでたどり着くと、ゆっくりしまくってやった。うどんは諦めたの?っていうぐらいゆっくり。

 そのコンビニは東かがわ市の引田というところにあって、さぬき市までそこそこ近づいてきていたから、時刻は昼をとっくに過ぎていたけど、うどんに焦点を定めて再スタートを切った。調べてみたところ、通る予定の国道11号線沿いに有名なお店があることが判明。これはめちゃラッキー。急いでそこへ向かう。

 ただし、そこまでに二つ小さい峠があり、その突破だけが難点。体力はもう残っていなかったから、峠はどちらもを押し歩いて越える。その先にはうどん屋が待ってくれている。時刻は15時を回るぐらいに到着。お客さんはまだ全然いるみたいで、突撃。職人さんの威勢のいい「いらっしゃいませ」の挨拶とともに暖かく迎え入れられ、うどんを注文しよう。でも、カード使えるか聞いとかないと。案内してくれた店員さんに恐る恐る聞いてみた。「使えないんですよ、、、。」うーーーわ。詰んだ。200円で食べられるものなんてありません。なんとか言い訳してそそくさと店を出ていく。あの威勢のいい「いらっしゃいませ」の残音がまあ切ない。メンタル的にも萎え。まあ、うどんは高い食べ物じゃないから使えなくても何ら不思議ではないけど。完全に拗ねてしまったコウキ君は(完全自業自得)近くのマックで月見バーガーを初めて食べながら、「これほぼエグチやん」って一人毒づいておりましたとさ。

画像4

 下がったテンションのまま高松まで無気力に流れるように進み、この日の行程を終了。高松駅の駐輪場は地下にあった。うわ、これ有料じゃね、でも四国やしお金かからんやろ。自転車を歓迎している四国の県の駐輪場が、まさかお金を取るわけがない。

画像3

 翌日、しっかりとお金を払いました。

ルート

 海部郡美波町から徳島市まで国道55号線。徳島市からは国道11号線に乗った後、国道28号線を走って鳴門市へ。さらに県道11号線で橋を渡って鳴門海峡の近くまで行った。その後、県道183号線を通って国道11号線に合流し香川県に突入すると、そのまま高松市まで行った。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?