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【選挙ウォッチャー】 新潟市長選2018・分析レポート。

かつてないほど白熱した選挙になりましたので、10月の締めくくりは新潟市長選の模様をお届けさせていただこうと思います。10月28日に新潟市長選が行われたのですが、現職のネトウヨ市長・篠田昭さんが引退を表明したため、新人4名による熾烈な争いとなりました。政令指定都市の選挙ということもあり、政治家として出世を目指す者たちにとっては一つのゴール。それぞれに人生が掛かっているので、絶対に負けられない戦いとなりました。

飯野 晋  45 元新潟市北区長
小柳 聡  31 元新潟市議
吉田 孝志 56 元新潟市議
中原 八一 59 元参議院議員

中原八一さんは篠田昭さんの後継となっており、自民・公明党推薦。小柳聡さんは立憲民主党や共産党が推している野党共闘の候補。吉田孝志さんは4年前の市長選で惜しくも敗れてのリベンジマッチ。飯野晋さんは元経済産業省の官僚なのに柏崎刈羽原発の再稼働には明確に反対しており、福祉に力を入れるべきだという優しいパパという雰囲気の男性でした。はっきり言って、中原八一さん以外は市民目線の政治を訴えており、中原八一さんだけが唯一、「国とのパイプ」と言っていた人物です。ネット上では小柳聡さんを応援する声が多かったのですが、どうして負けてしまったのかは、とてもシンプルな理由です。ただ単に吉田孝志さんや飯野晋さんが良い候補だったからです。かなりネット選挙にも力を入れていたのに敗れたため、ネット選挙は意味がないというような話も出回っていますが、意味がなかったのではなく、ライバル候補が強く、その中では善戦した方だと思います。他の候補がどれだけ魅力的だったのかをお伝えしたいと思います。


■ 争点の一つとなった「BRT問題」

新潟ではバス高速輸送システム「BRT(バス・ラピッド・トランジット)」が一つの争点になっています。BRTは南米を中心に普及しており、簡単に言うと、路面電車などの代わりに連結したバスを走らせ、人を大量に輸送しようというものです。バスを2台走らせるよりも連結したバスを1台走らせた方が運転手は一人で済むので人件費が削減でき、一度に大量の輸送が可能なので、何台ものバスを走らせるよりエコです。ところが、南米で受け入れられているシステムが日本にもフィットするかどうかは極めて微妙です。新潟駅周辺の道路は比較的広いものの、1本入った瞬間に道が狭くなるため、超大型のBRTが走れる道は限られています。また、BRT専用のレーンが用意されているわけではないので、路面電車のように渋滞を避けて走れるわけでもありません。また、今まで2台のバスが走っていたところを1台にするということは、それだけ次のバスが来るまでの間隔が開くということになり、バスの利便性は悪くなります。バスが便利になると聞かされて導入されたはずなのに、実際には不便になっていることも多く、「なぜこのエリアをバスで走ってくれないんだ」という不満も多くなり、このBRTには新潟市民の過半数が反対しています。

確かに、時代には逆行しています。これから人口が少なくなろうとしているのに、バスを小型化して小回りの利く状態にしようというのではなく、バスを大型化して大通りしか走れないようにしているのですから、こんなに頭の悪い話はありません。しかも、連結したバスは新潟駅前を走っているわけですが、それだけたくさんの人が利用しているのかと言ったら、そういうわけでもありません。新潟駅を拠点にいろいろな路線のバスが走っているため、実はBRTが走っている場所は普通にたくさんのバスが行き交っており、BRTのバスに乗る必要性がそこまでにないのです。それよりはバスの本数を増やしたり、スマホと連動するような新システムを構築し、市民の利便性を高めていくようなやり方をしていった方がよっぽど効率的だろうと思うのです。しかし、BRTを廃止して利便性を高めようという候補はすべて落ち、もっとBRTに力を入れていこうという「国とのパイプ」と言い出す市長が誕生してしまったので、ぶっちゃけた話、新潟はこれからの4年間で状況はさらに悪くなるのではないかと思います。


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