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【レポート】KREVA CLASS-新しいラップの教室-を見て泣いた話

公演から少し時間が経ってしまったが、「KREVA CLASS-新しいラップの教室-」に行ってきたのでレポートしたいと思う。横浜、大阪、東京と各都市回っており、僕は6月1日の東京昼公演に行きました。この演劇を見るのために福岡から遠征です。

ヒップホップアーティストのKREVAと脚本家・演出家の小林賢太郎がタッグを組んで行われたこの「KREVA CLASS-新しいラップの教室-」

謎が多く分かっていたのは「授業型エンターテインメント」ということだけ。脚本は小林賢太郎さん、出演はKREVAに加え、東京2020開会式のピクトグラムパフォーマンスで注目を浴び、世界で大活躍中のパントマイムデュオGABEZ、そしてKREVAのバックDJを務める実力派MPC+DJプレイヤーの熊井吾郎も参加。

蓋を開けてみると、KREVAが元々行ってきたヒップホップのエデュテインメント(こちらで解説しています)の要素に、小林賢太郎さんのコントや言葉遊びが組み合わされたもの。クスッと笑えながらも、中身はメッセージ性に溢れ、公演から数日経った今でも時折この演劇で表現されていたことを考えてしまうぐらい。良すぎてこの日リアルで見た後に、配信も購入しました。
KREVAファン目線でどう感じたのか書いていこうと思う。


導入のコント

熊井吾郎がKREVAのビートライブ(これも良かった!)で迎えてくれて暗転後コントへ。KREVAに荷物が届き、透明な学校から授業をして欲しいと依頼があって授業をするという流れ。

この授業を受ける場合は「好きな食べ物を叫べ 」と振られてKREVAが「カジキマグロ〜」って叫んでいた。全くの予想外。好きな食べ物という問いで初めて聞いた回答かもしれない。
脚本は小林賢太郎さんが作っているけど、KREVAがライブのMCでやってる時も同じノリなので影響を感じた。

一時限目:ラップについてざっくり

一時限目は「ラップについてざっくり」主に韻の踏み方についての授業。
これはKREVAがライブやテレビでよくやっている内容だが、そこに小林賢太郎さんの要素が組み合わさって分かりやすさと面白さが増していた。

授業ではバークレー(くれば→ばくれ?シースー的な?)というバクの生徒との掛け合いも面白かった。中身は小林賢太郎さん。

コント:日本ラップサービス

電気保安協会の人に扮したKREVAが、家のラップ指数を測って足りないところは自身がラップするというコント。

玄関やキッチンにあるものをワードに使って韻を踏みながらラップ。一時限目を踏まえて、家にあるものでも韻踏ながらラップできる、ということを実践していた。

ラストにはラップ指数を下げるお化けが出てきて、これをラップをして退治。
これは基準を出す理由になったラップの上っ面をなぞっただけのポップなダサいラップや、ずっとYOとかイェーとかラップをバカにしていた人が仮想敵で、自分は最前線で戦ってきたよと伝えてるのかなと感じた。

また、家庭のラップ指数が低いところにラップをしていくというコントを通じて、KREVAがラップに馴染みがない一般層にもラップ浸透させてきたよということも言いたいのかなと思った。

二時限目:ターンテーブル

二時限目は「ターンテーブル」機材の説明とDJがやっているMIXについての授業。

熊井吾郎が実践しながら、KREVAが機材についての説明。Mixをカレーとカツカレーに例えて説明していのがとても分かりやすかった。これでMixを分からない人はいないのではないかと思った。
またここではパフォーマーのGABEZが、BPMの変化をパントマイムで表現していたのも面白かった。

コント:過去が欲しいロボット

個人的にハイライトだったコント「過去が欲しいロボット」

KREVAが過去を思い出したいが、思い出せないロボットになってコントをするというもの。過去を思い出すために色んな人に聞いたり、勝手に輝かしい過去を作ってしまおうとしたりする。

しかし、そんなことをしても過去は分からなかった。なぜならこのロボットは、昨日作ったロボットで過去などなかったというのだ。

でも、そんな過去がないロボットにもできることがある。後から新しい機能をつけることはできるというのだ。博士から「雨を降ったら傘をさす」という機能をつけてもらって、今までできなかった雨を凌ぐという機能がついた。これで雨に濡れて錆びることもない。

このコントはKREVAの哲学が前面に出ているなと思った。「変えられるのは未来だけ」でも歌っているように、KREVAの基本的な哲学は過去に執着せず、今を全力で生きて未来を変えて行くということ。この哲学をコントで暗に表していた。

三時限目:サンプラー


KREVAの真骨頂でもあるサンプラーのパート。サンプラーのパッドに言葉を入れて様々な組み合わせで鳴らしていて、機材の特性も説明しながら言葉遊びをしていた。言葉の組み合わせでクスッと笑ったり、サンプラーって面白いなとなったり捉え方は様々だったと思う。

この日まで小林賢太郎さんのことはあまり知らなくて、いくつか予習して行った中でもこのコントに近かった。言葉遊びの側面が小林賢太郎さんの色が出ていると思った。

コント:サッカー部を辞める高校生

舞台は変わり、河川敷で音楽を聞いているサッカー部に入っている高校生。目標が見つかってサッカーを辞めるというのだ。

この高校生はKREVA本人。過去の自分に対して「Revoltioin」をラップする。過去の自分にラップするという構図なのでこの曲のリリックが心に刺さる。

何を捨て何を重視
間違えたく無い 優先順位
チャンス来たなら動きな
瞬時に
そのために いつだってしときな準備

後はいかにそれをどう楽しめるか

目に入るがっかりな真実
それよりもやっぱり自分をじる誰にだって平等な一日
この手で自らひろげる陣地

後はいかにそれをどう楽しめるか

その後映像が流れ、KREVAの高校時代の写真が映り、手に持っているのは「DJ兼ラッパーとしてHIP HOP界に君臨してみせます」という目標。実際にKREVAはこれを叶えており、今なお君臨し続けている。

学生時代に誰でも一度は目標は掲げると思うが、それを心に決めて努力して実現できることがどれだけ凄いことか。これは後に気付くのだが、次の四時限目の伏線にもなってくる。

また、この目標を掲げたのは恐らく1993年〜94年頃。この頃は日本では全くヒップホップが浸透していない時期。ヒップホップってなんだそれとか、黒人文化であるヒップホップを日本人がやるなんてだと色々言われただろう。様々な選択肢ある中で「本当にやりたいこと」であるヒップホップに焦点を定め目標をし、実現していることを心の底から尊敬する。

四時限目:実践ライブ

最後に実践ということでKREVAのライブ。このライブのセットリストがこの舞台の伏線回収にもなっていた。

セトリ
1.ストロングスタイル
2.イッサイガッサイ
3.アグレッシ部
4.Expert

ストロングスタイルの「そうなんないって誰が言える?」やアグレッシ部の「目をそらさない先長い未来」、Expertの「どうしてもしてみたい事に素直になればいい」などリリックがブッ刺さる。ここまでKREVAの人生を見ているからだ。説得力が違う。

そして「俺は小学校中学校高校大学と通ってきたけど、音楽の学校にもラップの学校にも通ったことありません」
先人たちが生み出してきた文化を教科書に、自分だけの目には見えない学校「透明な学校」に通うことでKREVAという科目のExpertになることが出来ました」

と語り

最後に「(全年齢をあげて)いけるなら絶対いっとけ」と全員の背中を押して終演。

アグレッシ部の音源ではリリース当時のリスナー層の「17 18 19」を挙げていたが、全年齢をあげているのにグッときた。当時から聴いているファンも歳を重ねたし、僕の前には子供と来ている人もいた。世代を越えてKREVAの音楽を響かせたい、リスナーの背中を押したい、そのためにKREVA CLASSを開校したんだと思った。

まとめ

冒頭を思い出して欲しいが、授業を依頼された透明な学校からだった。実はこの舞台のサブタイトルは「Invisible School(透明な学校)

この透明な学校とは、本来の学校とは別に自分でやりたいことをやる学校のことだった。何も教えてくれないが、自分が心底やりたいを学べる学校。KREVAは自分のやりたいことを実現させることが大切で、みんなも自分のExpertになれというのが伝えたかったのだ。

その教科書にKREVA自身がなれれば嬉しいと語り、この演劇ではヒップホップの構造と自身の半生についてコントで分かりやすく伝えいたんだと思った。この舞台がきっかけにラップや新しいことを始めることもいるだろう。

また、KREVAが本来の学校も疎かにするなと言っていたのも良かった。この本来の学校というのは現実のことで、勉強、部活、仕事、子育てなど人によって様々だと思う。やらなければいけないこともやりつつ、透明な学校も見つける。何歳になってもやりたいことも諦めるなというメッセージにグッときて少し泣いた。

最後にこの度の独立して社名を「KOUJOSHIN」にしたと発表。向上心が強いKREVAらしい社名。これからもKREVAの新しい挑戦を楽しみにしつつ、僕も本来の学校も透明な学校も頑張ろうと思った。

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【おまけ】会場の写真

ZORNからのお花
亀田誠治さんからのお花
KICKの二人
SUMMITからのお花
三浦大知からのお花

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