現代フランス料理の魅力とは？後編

パリの観光名所

初めてパリを観光で訪れる人の多くはパリを象徴するエッフェル塔や、凱旋門を訪れるように、はじめからパリのアラブ人街やアジア人街などの移民街を観光の目的で訪れる人はよっぽどの理由がない限りいないと思います。

しかしパリ市内の大部分はそういった移民地区によるものであることを皆さんは御存知であるだろうか？

我々日本人のイメージするおしゃれなシャンゼリゼ通りや、歴史を感じさせるルーブル美術館に豪華絢爛なオペラ座などはパリ市内のほんの一部分なのです。

それは現代フランス料理にも全く同じ事が言えます。

古典フランス料理はフランス料理の時代を作り、伝統に根ざす技術や知識が後代の料理文化に与えた影響が測り知れないません。

【学ぶべき教養の対象】または、【コレクションの対象】となって国や歴史を愛する多くの人々に産業的にささえられています。

だから今の時代もこうして存在することができるのです。

そんな中で現代フランス料理というのは、まずフランスには多くの移民の人たちが移り住んでフランスを支えているフランス国民であることを知る必要があります。

彼らの生活習慣、食文化は時間をかけて自然とフランス文化に溶け込んで来ました。

（もちろん島国の日本と異なり、国同士が国境で繋がって行き来がしやすい面も見逃せませんが）

だから現代のフランス料理を堪能するということは、世界の食材や調理法に巡り会う機会が必然的に増えてきます。

北アフリカのクスクス、ケバブにベトナムのネム、中国のウォックにイタリアのピザ、南米のセビーチェに日本の寿司や天ぷらだって。

これらの要素は今では現代フランス料理の中で味わえることは必然的で、
なるべきしてなった姿だと私は強く感じています。

そう、今を生きる人たちの生活に根ざす料理こそ現代の料理であり、現代フランス料理といえます。

まさしくそれは、私が見たパリのメトロの車内での光景そのものだったのです。

だからフランスのレストランで食べる料理には、きっと日本人に馴染み深い和出汁の香り、醤油ベースの甘じょっぱいソース、山葵やみょうがの素晴らしい香りや柚子の美しい酸味と出会うことは消して不思議な事ではありません。

ソースにカレーの香りを感じるスパイスや、東南アジアや南米で使われるハーブを魚や肉の調理に惜しみなく使うことだって。

バターやクリームを使ってなくてもフランス料理。

逆に醤油やわさびがあってもそれは現代のフランス料理なのだと、私はパリのメトロでの車内の光景から感じとった瞬間だったのです。

勇気を持って試みる

なんでも自由に食材を使って調理できるのが現代フランス料理だと耳にすることもあります。

それでも古典的な調理法、郷土に根ざす伝統料理やフランスの食材に触れて人々の歴史や暮らしを少しでも理解しようとする心とフランス料理に敬意あってのものだと私は信じています。

共存してパリでの生活に溶け込もうとする人と、
彼らを受け入れようとする人々あってのフランス社会は、現代フランス料理と照らし合わせて見て取れます。

日本人の私もそんなフランス社会、現代フランス料理の一部であるように、私が世界中の食材に触れて作る料理は、私自身が心から魅力を感じるあらゆる調理法から表現されていくのです。

料理には物語があります。

料理の知名度に関わらず、どこの国にも、いつの時代にも。

もちろんその料理を作る料理人一人ひとりにだって,これから先、何年、何十年と物語は続いていくことでしょう。

日本人の私がフランス料理に憧れて自分で勝手に始めたフランスでの物語。

この物語の中では、沢山のレシピに触れて気づかされる笑顔の大切さや、出会った人たちの優しさに溢れています。

そして私が誰かに与えた笑顔と優しさはきっとまた新しい活力となって、私の新しいレシピを生み出す力になると信じています。

誰に頼まれたわけでもなく、誰かに期待されているわけでもありません。

でも私が勇気を持って果敢に進んでいく未来には意味があります。

私が進む道にはきっと誰かの勇気に変わるヒントと新しい時代の生き方の知恵があると毎日本気で信じています。

何故かって？

だってこうして目の前に私の言葉が既に届いているから。。。

Chef ichi

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