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他者と働く──「わかりあえなさ」から始める組織論

著者: 宇田川元一

要約

#「分かり合えない」を解消する他者との関わり方

働いていると常に何かしらの問題にぶつかりますが、世の中で起きている問題は大きく2種類に分けられます。
技術的問題と適応課題です。
技術的問題とは知識や技術で解決できる問題、適応課題とは1人では解決できない問題です。
本書では、適応課題、つまり他者との関わりの中で生じる複雑な問題を解決する方法を紹介しています。

#4つの適応課題

適応課題には4つの型が存在します。
1つ目はギャップ型。価値観と行動にギャップが生じることで起きる課題です。例えば、顧客の課題解決をしたいのに目先の利益の数字を追っている状態などが当てはまります。
2つ目は対立型。互いの意見が対立し起きる課題です。それぞれの理論や正義がぶつかっている状態。
3つ目は抑圧型。言いづらいことを言わないが故に起こる課題です。相手が怖い、相手のメンツを潰したくないなどが理由でこのような状況に陥ってしまいます。
4つ目は回避型。本質的な原因を解決しようとせず、小手先で対応しようとすることで起こる課題です。本質から目を背けているので、問題がぶり返します。

#ナラティブ(解釈の枠組み)とは

そもそも、なぜ適応課題は生じてしまうのでしょうか。
それは、人それぞれが持っているナラティブ、つまり価値観が違うからです。

例えば日本は年功序列で年上を敬う文化がありますが、アメリカは年齢は関係なく実力がある者をリスペクトする文化があります。
この2つの文化は対極ですが、どちらかが正しく、どちらかが誤りという訳ではありません。
しかし、互いの価値観の違いに気づかずにいると、両者が同じ問題を解決しようと取り組んでいても、すれ違いが生じてしまいます。

#解決方法4つのステップ

適応課題を解決するためには、新しい関係を築く必要があります。
そのために取り組むべき4つのステップを紹介します。
ステップ1:溝、つまり両者の価値観の違いに気づく。
ステップ2:溝の向こう側を眺める。相手をよく観察し自分の視点から離れる。
ステップ3:かける橋の設計。相手の価値観を解釈する。
ステップ4:橋を実際にかける。行動に起こす。

学び

同じ問題を解決したいと両者が思っている時でも、それぞれの価値観の違いを見過ごしたままでいると一生すれ違ってしまうと理解できました。
例えばクライアントと人手不足という課題を解決したいと思っていても、お互いの価値観を理解しなければ、本質的な解決は難しいと気づきました。
また、お互いに目の前の人手不足を解消するという行動に納得している状態であれば、より違いの価値観の違いを見過ごしやすく、半年後振り返った時に、小手先の解決しかできていなかったと気づき問題をぶり返してしまう可能性があると思いました。
これからは顧客目線という広義で終わらせずに、違いに価値観の違いがあるという前提のもと会話できるように気をつけたいです。

感想

この本を読んで、改めて他者とは価値観が違うものだと認識できました。
仕事をしていると徐々にお客様や上司とのコミュニケーションに慣れてきて、価値観や向いている方向が同じように感じていました。
まさにこの本で解説されていた相手とのナラティブの違いに気づかず、本質的な解決ができない状態に陥りそうな段階だったのです。
このタイミングで本書を読み、自分が危ない状況であることに気づけて良かったです。
また、この本では価値観の違いに対する対処法が解説されていましたが、個人的には初めから価値観の違いに気づき戦略を立てて目線を完璧に揃えるのは難しいと思うので、努力はしつつも打ち合わせ回数や関わっていく年月の長さの中で構築していくものなのかなとも感じました。
本書は今まで読んできたビジネス本にも書かれていたような基礎的なことが丁寧に解説されているため、改めて自分に染み込ませることができる良い機会になりました。
キャリアが長くなるほど顧客だけでなく社内外で関わる人が増えていくと思うので、人それぞれ価値観がある、ナラティブがあると心得ておきたいです。

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