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■鉄ドボ in KYOTO■①:阪急電車の一線級土木遺産と、それを渡る通りのお話

私の生まれ故郷は、京都市の西の端の部分です。最寄り駅は、阪急京都線。子供の頃から何気なく乗っていた路線で、この沿線は知り尽くしたと勝手に思っていましたが、いざ改めて街歩きをしてみると・・・

うわ!!すごいわ!!何これ!!

という発見の連続です。今回も、そんな発見をしに、元々よく知っている沿線を歩いてきました。

■西院駅からスタート

街歩きのスタートは、阪急西院駅。ここを歩くのは、実は2回目。最近記事にしていました。(前回の記事はこちら)

今回は、この時行けていない、西院駅から西南を目指して歩きます。

阪急西院駅。昔ながらの3300系が運んでくれました。
西院駅の西の端で、線路は左(南方向)にカーブしています。
地上に向かう階段。何となくゴージャスな感じ。
西院駅。西大路四条交差点の南西隅にあります。
南西にカーブしているので、実は・・、
駅の南西側に、阪急が経営する自転車置場が。
この真下には、何があるかはおわかりですよね。

■阪急京都線のゴージャスな坑口

線状に続く自転車置場をしばらく進むと、
やがて、こんな場所が現れます。

あれ、何だかおしゃれなろうそくのような装飾の柱が。少し奥に行って振り返ってみると、こんな構造物が現れます。

阪急京都線の地下線の坑口!
柱の装飾に、鷲の装飾に、立派な扁額があります。

この地下線、実は、大阪市営地下鉄御堂筋線より古く、「関西初の地下鉄道」であり、「日本で初めてパンタグラフで集電する電車が地下線に入った路線」なのです。「日本最初の地下鉄」は、東京地下鐡道(東京メトロ銀座線)の上野・浅草間です。

扁額は、1931年に開通したこの路線の社長である、京阪電気鉄道の太田光凞氏が揮毫したもので、

「天人併其功」

と書かれています。あれ、阪急なのになぜ京阪電鉄?と思う方もいるかもしれませんが、実は阪急京都線は、もともと「新京阪線」と呼ばれる、京阪電車のバイパス線として建設され、京阪電鉄の線路でした。戦時中の統制で阪急と京阪が合併し、戦後再び分割された際に、新京阪は京阪ではなく阪急に属することになりました。

関西初の地下鉄道を作り、すごい扁額と、柱と鷲のゴージャスな装飾がついた坑口。当時の建設した人たちの思いが伝わってくる気がします。

この区間、土木学会の「選奨土木遺産」にも選定された場所です。この坑口を見ると納得、という感じがしますが、ひょっとしたらあまり知られていないかもしれません。

■すっごく細い踏切

もう少し西へ、西京極駅に向けて歩いていきます。

住宅街の真ん中を今も快走する阪急の線路。
構造物はほぼ昭和初期から変わっていません。
架線を支える鋼材も、昭和3年11月の文字があります。
いくつか立体交差する跨線橋があります。
京都の碁盤の目の街路を斜めに横断する線路。

阪急京都線の線路が地上に上がった場所に、変わった踏切があります。実はこの地に行きたかったのは、電車の中からこの踏切がチラっと見えていて、どんな場所かが知りたくなったのがきっかけです(笑)。

地上部分には、変電所があります。
そして、その踏切が見えてきました。
うわ、車はとても通れない踏切!
なんと、こんなに狭い!
しかも、地下線路の擁壁を切り欠いているようにも見えます。
中道踏切道、という名前の踏切。
遮断機が下りた姿も、なんだかかわいい(笑)。
この道の両側には、斜め方向に広い道が。高辻通です。
Googleマップさんで見た、この踏切。
大きな通りに突如この幅の踏切が出現!

この踏切、人が1人歩ける幅(恐らく60cmくらい)しかありません。実際、渡った時に人とすれ違えず、待ってもらって渡りました。恐らくこんな踏切になった理由は、地下線に入る擁壁を切り欠いているので、切り欠きを最小限にしないといけなかったから、と勝手に推察しました。そういう意味では、なかなか激アツな鉄道土木スポットかと思います。

■ドライバー泣かせの踏切

京都の人は、通りの名前を、わらべ歌で覚えているので、高辻通は四条通(阪急が地下を走っている大通り)の少し南にあることは知っています。四条から五条までは、

「しあやぶったかまつまんごじょう」

という歌になっていて、

し(四:四条通)、あや(綾:綾小路通)、ぶっ(仏:仏光寺通)、たか(高:高辻通)、まつ(松:松原通)、まん(万:万寿寺通)、ごじょう(五条通)というような通りが、暗記出来ている人が多いです。ということで、先ほどの中道踏切は、高辻通を分断していて、その北の綾小路、仏光寺は、実は地下線の上に架かるいくつかの橋がその機能を補っていました。

では、つぎは、松原通。その松原通は、こんな横断の仕方をします。

こちらはちゃんと車の通れる、「松原通踏切道」。

何がドライバー泣かせかというと・・、

「角度に注意」の標示があります。
松原通と、交差する西小路通が交差する箇所にある踏切。
あらゆる方向に車が行き交うので、ドライバー泣かせです。

京都の街路の碁盤の目を突っ切る形に走る鉄道。横断するのは一苦労、ということです。

■万寿寺通、五条通はどんな風に交差?

では、続いて万寿寺通ですね。このあたりからは、阪急電車は、築堤区間となり、周辺より高いところを走ります。なので、万寿寺通の交差は、ご想像の通り・・、

今度は線路が上を越えていきます。

線路が上を越えるのですが、隣の通りは平面交差なので・・、

2.4mの高さ制限という、ちょっと厳しい条件での交差です。
西院架道橋という名前です。踏切とは違い、通り名は入らないのですね。

実は、この交差部分から、鉄道マニアにはちょっと注目のスポットがあります。それについては、次回取り上げます。

線路の西側に、謎の1線分のスペースが・・。

そして、五条通は、大通り。国道9号でもあり、京都の西側の大動脈の通りです。

五条通を横断する阪急電車。五条通はさすがに大通なので、
しっかりとしたアンダーパスが昔からあります。
こんな感じの跨線橋。

五条通の阪急電車のガード、実はテレビでご覧になる方もいるかも知れません。毎年冬に繰り広げられる、

全国高校駅伝
全国都道府県対抗女子駅伝

こちらのレースのスタート・ゴールがこの近くの西京極陸上競技場で、アンカーが最後に駆け抜けるガード。

そんなドラマの舞台にもなっているガードです。歩道はこんな感じ。

トンネルみたいな歩道。車道は、車高を稼ぐために、
少し掘り下げてあるのですね。

今回はここまで。次回は、西京極駅付近のことと、先ほどちらっと述べた、線路の西側にある、不思議な1線分の線路についてご紹介したいと思います。

■終わりに

阪急西院駅からスタートした、鉄分高めの街歩き。阪急電車の地下線は、あまり知られていないかもしれませんが、関西で最初の地下鉄道。坑口はなかなか激アツなスポットです。その近くを交差する道路も、なかなか不思議な形で交差しています。そんな場所を歩くのは、とても楽しい経験でした。

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