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◇歩いてみたいウォーキングコース◇【八王子】八王子は鉄道の町!鉄道を眺めながら街の歴史を概観する

私の住んでいるのは、八王子市、といっても、多摩ニュータウンの中の京王相模原線沿線であり、八王子駅周辺は電車ですぐに行けないので、あまり来ることはありませんでしたが、何回か街歩きをしているうちに、鉄道同士が重なり合う、とても不思議な場所を見つけて、それがとても楽しかったことから、コンパクトにこのエリアを回れるコースを考えてみましたのでご紹介したいと思います。

■1 まずは、コース全体をご紹介。

【集合】①京王線北野駅(北口ロータリの区画整理完成記念碑)
 → ②京王線・高尾線分岐高架橋 → ③京王日向踏切(面白い地名)
 → ④北野橋(昭和13年完成) → ⑤小野路街道踏切(古い街道)
 → ⑥六万坊(旧街道の古地名) → ⑦北野ガード(古いガード)
 → ⑧ポツンと残る廃線橋台 → ⑨山田川の廃線ガード群(圧巻です)
 → ⑩ルームズ大正堂 → ⑪ルームズ大正堂歩行者通路
 → ⑫八高線明神架道橋 → ⑬明北架道橋(中央線と八高線が分岐)
 → ⑭京王線北野9号踏切 → ⑮石曽根橋りょう(古いレンガ橋台)
 → ⑯横山架道橋(中央線と横浜線が分岐)
 → ⑰八王子機関区の古い建物跡 → ⑱八王子機関区跡(駐車場)
【解散】八王子駅南口 歩行距離:約4km

今回のウォーキングコースです。
北野駅から八王子駅まで約4kmを歩きます。

■①北野駅からスタート

ウォーキングは、京王線と京王高尾線の分岐駅である、北野駅からスタートです。

北野駅からスタートです。

北野駅付近は、1970年代に区画整理事業が進められた地区です。区画整理事業施行前は、水田の広がる地区だったとか。

今ではちょっと想像がつかない、水田で田植えをする像があります。

■②京王線と京王高尾線の分岐点

北野駅のすぐ西に国道16号が通り、その西で京王線と高尾線に分岐します。鉄道の街は、そういう分岐点のような場所がとても多いのが特徴です。しかも今回散策する範囲に、こういう分岐点が沢山出てきます。

国道16号を跨ぐ京王線と歩道橋。
ある意味これが北野駅の今の姿かも。
左:京王線、右:京王高尾線 への分岐。分岐部には保線基地があります。
分岐した先を高尾線沿いに歩きます。

■③京王日向踏切と七日市場という地名

京王線と高尾線の分岐点を高尾線沿いに進むと、ほどなくJR横浜線と交差します。実はJR横浜線と京王線は、少し北側で合流するような形になるので、このエリアは狭い範囲に京王線・高尾線・JR横浜線に囲まれた「デルタ地帯」です。

地上を走るJR横浜線と高架の京王高尾線の立体交差があります。
踏切の名前は、「京王日向踏切」です。
京王線との合流部に向かう横浜線電車。
ここの北側は少しのどかな雰囲気が残る地区です。

このあたりは、「京王日向」と呼ばれていたのでしょうか?「日向」とは、比較的陽の当たりやすい北側斜面で、この地区によく見られる地名です。戦前に大正天皇の多摩御陵へ参拝するために作られた高尾線の前身、京王御陵線と交差する位置に作られた踏切でしょうか。ちょっと不思議なネーミングです。

電柱のプレートには、「七日市場」の文字が。

横浜線の西側は、「七日市場」という地名です。こんなのどかな場所に本当に市場があったのでしょうか?と思えるようなスポットです。

今昔マップで昔の状況をチェック。
昔七日市場という地名だったエリア。のどかな農村風景が出現。
しかしこの地区もこれから激変の兆しが・・。

この場所、近い将来国道20号の「八王子南バイパス」が通過することが決まったエリアです。何だか工事が進んでいますが、これも道路工事に向けての用地買収なのかもしれませんね。

とはいえ、狭い路地の集落も健在だったりします。

■④戦前にできた北野橋

七日市場地区と北野地区を結ぶ新しい道として作られた、北野橋。今では野猿街道と呼ばれる、八王子の中心市街地から野猿峠を越え、由木方面に向かう主要街道の一部です。2つの鉄道を跨ぐ陸橋は、この地区の新しいシンボルであったことでしょう。

右から「北野橋」と書かれた親柱。イチョウも東京都の紋章でしょうか。
八王子の南の玄関の風格漂う橋です。
昭和30年代の航空写真。北西に向かうのが野猿街道。
デルタ状の線路があるのが特徴的ですね。

■⑤小野路街道踏切

北野橋の少し北にある踏切は、野猿街道の旧道に当たる道です。

平行する京王線と横浜線を越える旧道の踏切。
左の京王線の踏切は、北野6号踏切。後ろに見えるのが北野橋。
1~5号の踏切は、高架化されて既に解消されています。
横浜線の踏切は、「小野路街道踏切」という名前です。

この踏切は、「小野路街道踏切」です。小野路とは、多摩丘陵の中央、町田市小野路地区を指します。当時はここが多摩丘陵の結節点として栄えていたのでこの街道名がついています。小野路と言う場所も、多摩ニュータウン近くでとても面白い場所です。

■⑥六万坊という場所

小野路街道の古い街道沿いには、石仏などが残ります。とても趣のある散策が楽しめます。そしてこの近くの地名は、「六万坊」です。バス停や交差点の名前に残ります。

石仏が残る旧小野路街道。
六万坊バス停。歴史ある名前を刻む停留所です。

このあたりについては、10か月前にも訪れており、その時の訪問記録も参考になります。「六万坊」とは、六万部の経文と刀剣を収めたお堂が近くにあったことが由来の地名なのだとか。地域に歴史あり、ですね。

■⑦北野ガード(横浜線のこれまた古い架道橋)

六万坊から少し台地を下ると、水路に架かる橋の跡が。
やはり八王子は湧水の豊富な街なのですね。
台地の下へ。横浜線は少し登り坂で、築堤上になります。
その片隅に、ちょっと窮屈な架道橋。これが「北野ガード」です。
横浜線は、1980年代に複線化されたので、古い橋と新しい橋が並びます。
手前が新しく、奥が古い橋のようです。
すぐ隣には京王線の踏切。そしてこのガードの下には暗渠も交差しているようです。
とても小さな橋が、京王線に架かっています。

■⑧ポツンとある廃線橋台

そして、京王線沿いに少し八王子駅方向に歩くと、見えてくるのが・・、

おや、線路の左の住宅との間に何やらありますよ・・・。
出ました!!廃線橋台です。後ろの民家の屋根の形と
何だかシンクロしてます(笑)。
これが橋台だとすると、ちょっと低い気もしますが・・。
恐らく、昔は京王線の線路が一部下がっていたのでしょうかね?

この廃線橋台、昔は横浜線の線路から分岐し、北野駅の東の工場につながる引き込み線の跡だったようです。周辺は区画整理が完了し、痕跡が全くなくなりましたが、ここだけ残存しているというものです。

今昔マップで戦前の地図を見たところ。確かに京王線の上を越える引き込み線の姿が。

■⑨山田川沿いが・・何だかすごい!

街中に突如現れた廃線橋台。これだけではありませんよ・・。ここからがちょっとすごいです。それは近くを流れる山田川沿いにあります。山田川沿いに、歩道が付いているのですが、そこがなかなかな景色です。

山田川を渡る中央線
直上に中央線の巨大なPC桁が架かります。まだここは序の口(笑)。
出ました!巨大な橋が架かりますが、なんと、直上の橋はもう廃線になっています。
信号の跡が見えます。
こういう橋が何と5つも連続して出現します。
ちゃんと昭和50年代に国鉄が建造したことを示す銘板もあります。

実はここは、昭和50年代に八王子貨物駅として整備された場所です。当時の地図には、ちゃんと貨物駅が残っています。

今昔マップで見る、八王子貨物駅があった頃。右の川の上にたくさん
線路と橋が架かった貨物駅が見えます。

■⑩廃線跡が、何と・・・!!

八王子貨物駅の廃線跡を眺めながら歩いてきました。上は荒地になっているのかな、と気になるところですが・・、

左の擁壁も、貨物駅の跡地のもの。きちんと銘板もありますが・・、
上の写真の少し左を向いたアングルが、これなんです。
あれ、エレベータもあります。登ってみましょう。
現れるのは、何と大型ショッピングセンター。
側部の黄色い柵は、貨物駅当時のままの感じです。

貨物駅の跡地には、今はルームズ大正堂という大型家具店と、ケーズデンキが入居したお店があります。

このお店、屋上からも景色がなかなか素晴らしいです。

お店の形は、東に行くほど狭くなる形状。
昔の貨物ヤードの形が容易に想像できます。
屋上から垣間見える、中央線の電車。
中央線のすぐ隣にオイルターミナルへの現役引き込み線があり、
すぐ隣は保線基地です。現役の線路もあるのです。

■⑪廃線跡が、何と!(続き)

貨物駅を使ったお店、アプローチルートがとてもすごいのです。お買い物ついでに眺めるのもとても楽しい場所です。

何と、この店のアプローチルート、廃線橋梁を流用しています!!
山田川に架かる橋を通ってくる形です。
お店の片隅には、山田川を渡る橋の残骸が見える場所も。
廃墟の手前には、花の売場。
この日常と非日常のコントラストが、何とも言えずすごい。
歩いて渡れる、廃線橋梁。渡った先が、普通のお店、です。

■⑫八高線明神架道橋

八王子貨物駅の西の端にあるのが、八高線の線路です。国道16号と国道20号を結ぶ道路との交点に、明神架道橋が架かっています。

明神架道橋は、戦前にできた八高線の中でも、比較的新しい架道橋のようです。

■⑬明北架道橋(八高線と中央線の交点部)

八高線沿いに少し歩くと、明北ガードが見えてきます。ここは、中央線と八高線が分岐する場所に近いところです。2つの線路が分岐した間は、八王子貨物駅があるので、一般人は入れないスペースです。

八高線のガードの先に、中央線のガードが。
その間の道からは、八王子貨物駅の中にアクセスできます。

■⑭京王線北野第9号踏切

明北ガードのすぐ横に、踏切があります。中央線・八高線の線路と立体交差するすぐ脇です。中央線の線路の場所だけ、京王線の線路が少し低くなっていることがよくわかります。

中央線との交差部が近くに見えます。ここだけ少し線路が低いように見えます。

■⑮石曽根橋りょう

そして、京王線の踏切を渡り、中央線の線路沿いを歩いていたら出現するのは、何と・・・、

かなり年季の入った、レンガ造りの立派な橋台が出現するのです!!
中央線の橋は、とても古そうなレンガ造り。
八王子駅にほど近い場所とは思えない、不思議な橋が並ぶスポット。

この架道橋、中央線、八高線に加え、引き込み線の線路、機関区の入換線(今は使われていない様子)もあり、とても多彩です。

■⑯横山架道橋

この橋は、八王子駅にほど近い場所にありますが、横浜線と中央線の分岐点のほど近くになります。機関区の線路なども横切っているので、大掛かりな架道橋です。

手前が中央線と八高線、奥が横浜線の線路。
耐震補強がされていない部分の上の線路は、使われていない様子です。
左:横浜線、右:中央線のT字路。
こんなところ車で走れるのか?と不安になりますが、
渋滞の抜け道として結構使うことがある道です。

■⑰八王子機関区の建物跡

さあ、いよいよウォーキングもラストです。八王子駅前には、かつて機関区があり、沢山の機関車やターンテーブルもありましたが、今は廃止されています。昔の活気あった頃の写真を見つけました。


機関区があった広い敷地。
従業員通用口の跡には、戦前の金杯が飾られていました。
この建物も、今では廃墟のようになっています。

■⑱八王子駅南口付近

機関区の跡地の一部は、駐車場になっており、線路があった頃を想像することができます。

ここに沢山の機関車が走っていたのでしょうか。
横浜線の線路との境界の壁。なぜか一部レンガの壁があります。
実は結構古い間仕切りなのかもしれませんね。


駐車場の隣は、レールがまだ敷かれている一角が。
南口の駅は、再開発がどんどん進んでいます。

■終わりに

北野駅から八王子まで約4kmのウォーキングですが、あまりにマニアックなコースを歩くことができます。JRの中央線、八高線、横浜線と、京王線、高尾線に加え、貨物駅や機関区、引き込み線の跡もあり、それらが輻輳するエリア。鉄道が好きな方だけでなく、なぜこうなったのかを謎解きながら歩くのはとても楽しいと思いますので、是非お楽しみください。

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