見出し画像

❀花待つ兎❀ Un Lapin attendant des Fleurs アン ラパン アトンドン デ フルール

♢♢テーマイメージ♢♢
冬空の朝日に輝く真白い雪野原。
澄んだ青空に小鳥の歌声が響き始める。

軽やかな目覚めのコーラスに誘われて
1羽の子ウサギが姿を見せる。
ひんやり冷たい空気に
ほっぺとお鼻をピンクに染めながら、
きらきら光る雪の上を駆け出した。

ぽすんぽすん、耳を揺らし足跡を残して、
目指す先は陽だまりに佇む梅の木々。
咲いたかな?咲いたかな?
新雪をかぶった蕾は膨らんでいるけれど、
寒さも手伝ってまだ花は開かない。

花が開けば、新しい季節の始まりだ。
花が咲いたら皆に会いに行こう。
皆で花を見て楽しもう。
それから、それから──。

待つ時間もまた、楽しいね。

新年の干支である兎と、水引で作った梅の花をテーマにした作品です。

実は水引の由来はとても古いようで諸説ありますが、7世紀の飛鳥時代に遡るそうです。
当時は、現代より更に大変な危険を伴う航海を経て遣隋使が往復していました。当時の遣隋使だった小野妹子が帰還した際に携えられた答礼品に紅白の麻紐が結ばれていたそうです。これは航海の安全を祈願する意味があった、また朝廷への貢物を示す意味があったなどとされています。

あるいは、より時代がくだった14世紀の室町時代における明との貿易において、輸出用品を判別するために掛けられた紅白の縄を、日本側が贈答用品に結ばれる習慣だと勘違いしたという説もあるようです。

水引で形作った梅の花は、寒さ厳しい冬の時期に咲くため、古くから雪と合わせて色んな歌に詠まれているそうです。
例えば万葉集に以下のような作者不明の歌もあり、この作品のイメージにも折り込みました。

原文:雪寒三 咲者不開 梅花 縦比来者 然而毛有金
──雪(ゆき)寒(さむ)み、咲(さ)きには咲(さ)かぬ、梅(うめ)の花、よしこのころは、かくてもあるがね──

万葉集 第10巻 2329番歌

「雪が寒いので、なかなか梅の花が咲かないで居るが、それでもよい、このごろはそんなものなのだ」というような意味になるそうです。
雪と花という繊細さのあるモチーフを詠みつつ、何とも大らかな心地になれる歌ですね。(⁠◕⁠ᴗ⁠◕⁠✿⁠)

梅の花の他にもう一つ作品に用いた、干支の卯の動物でもある兎は、様々な理由で縁起物とされています。

例えば飛び跳ねる様子から「飛翔」の意味や、足の速さや似ている漢字から「災難回避」、月に由来する伝承から「ツキ(運)が上がる」、多産であることや因幡の白兎などの神話から「長寿繁栄」の意味などがあり、西洋でも東洋でも縁起物とされています。

梅にも多くの良い謂れがあるので、とても縁起の良い組合せの作品になりました。(⁠◍⁠•⁠ᴗ⁠•⁠◍⁠)⁠✧⁠*⁠。

※minne の掲載はこちら

※Creema の掲載はこちら