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月が綺麗ですね

 明治期夏目漱石が英語教師をしていた頃、生徒が「I love you」を「我君を愛す」と訳しているのを聞いて、
「日本人はそんな風に直接的に愛を伝えない。「月が綺麗ですね。」とでも訳しておきなさい。」
と言ったのが最初とされる。漱石のどの本に出ているのかネットで調べてみると、漱石が直接言った言葉で本にはないとのこと。

 一説にはこの言葉、昭和30年代にヒットした菅原都々子の「月がとっても青いから」と混じりあったという説もあり、はっきりした出典が分からない都市伝説でもある。

 更に調べると、夏目漱石の英文科の教え子でもあった中勘助の代表作「銀の匙」の一節に漱石起源説をうかがわせるものがあるというので、青空文庫で検索してみた。

 その後半の第21節の問題部分を引用してみると、

「私はあたふたとして
 「月が………」
 といひかけたたが、あいにくそのとき姉様は気 
 をきかせてむかふへ行きかけてたのではつとし
 て耳まで赤くなつた。」

 とある。この時点で中勘助が「月が…」の意味を知っていた可能性は想像出来る。とすると、その出どころは彼の師である漱石の可能性もあるかもしれない。

 ところでこの言葉、今告白に使ったとしても、相手が意味を知らなければ意味がない。でもちょっと奥ゆかしい表現だなとは思う。

 「月が綺麗ですね」
これに対する最上の返しは
 「月はずっと綺麗でしたよ」
らしいのだが、今更おじさんには使えませんね。

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