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5 久しぶりの帰省

「お母さん、このままじゃ危ないと思う。」

母親をそばで見ていた姉からの連絡だった。ストレートに伝えてくれる姉に私は救われた。 

母に連絡をしても、
「大丈夫、お仕事頑張って!」
「こっちのことは気にしないで!」

心配をかけないようになのか、詳細を伝えられなかった。
【私も家族なのに】【頼って欲しいのに】


抗がん剤治療中だった母は1ヶ月の間で急に歩けなくなってしまったという。

杖をついてなんとか歩く。
その一週間後には
歩行器。
次の週には
立ち上がることもできなくなった。

急いで帰省し久しぶりに会った母。 

腕は細く顔の肉は痩けていた
髪は抗がん剤治療で無くなり
そして、車椅子だった。

介護経験もない父が一人で
移乗、排泄介助など全てを行ってたという。

ベッドの脇に簡易トイレ。
移動は車椅子。
全く力の入らない下半身。

実家にはもう、元気な母は居なかった。

最後に母の料理を食べたのはいつだったか。
最後に母と買い物に行ったのはいつだったか。
最後に母とドライブをしたのはいつだったか。

もう随分前だ。随分昔に最後は終わってしまっていた。「最後」に気づくのは難しい。

ああ、なぜ私はもっと早く帰らなかったのか。

同時にこれからは母のために尽くさねばならないと思った。

母のために、自身のためにも。



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