7 余命宣告
救急搬送後、待合室で待つ。
先生から静かな声で呼び出された。
「ご家族の皆さん、お話しがあります。」
母の状態の説明だ。
現実を突きつけられる瞬間が、遂に来てしまった。
先日検査したMRI検査の結果とともにゆっくりと説明が始まる。
「脳の白い影がガンです。脳へのガン転移が多く見られます。」
母の脳は真っ白だった。
ガンが目を圧迫していたことで視線がズレていたのかもしれない。
「予後1〜2ヶ月でしょう。
かなり進んでしまった状態なので1ヶ月程かもしれません。急変の可能性もあります。」
あぁ…これが、よくドラマで見る余命宣告というやつか。
私はすぐに飲み込むことはできなかった。
ピンポイントで放射線をするガンマナイフでは話にならないそうで、入院をして脳全体に照射する全脳照射を行うこととなった。
全脳照射を行なっても、治るわけではない。悪化をとどめるものでしかないのだ。
「入院中も、急変する可能性がありますが、心肺蘇生などは身体を傷つけるだけなので延命治療は行いません。」
ーーー
その後母と対面した。
救急搬送用のベッドに横になっていた。
顔を見た瞬間、
涙を流してしまった。堪えることを忘れてしまった。
「え〜なに〜!終わりみたいじゃない」
母は不安そうな顔で微笑んだ。
ごめんね、あのとき泣いてしまって。
不安にさせてしまったね。
あの時から母は2ヶ月半も生きた。
宣告よりもながく、精一杯、生ききっていた。
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